梅雨の時期は外出の機会が減り、自宅で家計簿を見返したり、毎月の支出を確認したりする時間が増えるという方もいるのではないでしょうか。

近年は食品や日用品、光熱費などの値上がりが続いており、年金を主な収入源として暮らす高齢者世帯にとって、家計管理の重要性が一段と高まっています。

老後の生活設計を考えるなかで、公的年金だけで生活できるのか、万が一収入が不足した場合にはどのような公的支援があるのか気になる方も少なくありません。

そうした支援制度の一つが生活保護制度です。

生活保護は生活に困窮した人の最低限度の生活を保障する制度ですが、実際にどのような世帯が利用しているのか、どのような支援を受けられるのかについては詳しく知らない方もいるでしょう。

本記事では、生活保護受給世帯の構成や高齢単身世帯の家計状況を確認するとともに、生活保護制度の支給内容について解説します。

1. 生活保護受給世帯の半数超は「高齢者世帯」という結果に

厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和8年3月分概数)」によると、2026年3月時点の生活保護受給者数は約198万人(198万808人)となっています。

また、前年同月と比べると、被保護実人員数や世帯数はともに減少しています。申請件数や開始世帯数は増加に転じている点に注意が必要です。

  • 保護の申請件数:2万3636件 前年同月比1,201件増加(5.4%増)
  • 保護開始世帯数:2万711世帯 前年同月比371世帯増加(1.8%増)

世帯構成の内訳は以下のとおりです。

【世帯類型別世帯数及び割合(保護停止中を含まない)】

  • 高齢者世帯:55.3%
    • 単身世帯:51.7%
    • 二人以上世帯:3.6%
  • 高齢者以外世帯(高齢者世帯を除く世帯):44.7%
    • 母子世帯:3.4%
    • 障害者・傷病者世帯:25.4%
    • その他の世帯:15.8%

なかでも目立つのが、単身高齢者世帯が全体の51.7%を占めている点です。

この結果からは、生活保護制度が年金収入だけでは生活が難しい高齢単身者を支える役割を果たしていることがうかがえます。

また、障害者・傷病者世帯も25.4%を占めており、前年同月と比べると世帯数が3,600世帯(0.9%)増加しています。

2. 生活保護受給世帯で単身高齢者が多い背景

生活保護受給世帯のうち、単身高齢者世帯が大きな割合を占めている背景には、高齢期の家計構造が関係しています。

厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している世帯のうち、総所得の100%を公的年金・恩給が占める世帯は43.4%でした。

裏を返せば、半数を超える世帯は就労収入や財産所得など、年金以外の収入も組み合わせながら生活していることになります。

しかし、高齢になると就労による収入を確保しにくくなる傾向があります。

また、配偶者との死別や未婚などによって一人暮らしとなる人も少なくありません。

単身世帯では住居費や光熱費などを一人で負担する必要があり、複数人世帯のように生活費を分担することができません。

さらに、生活費を補うために貯蓄を取り崩したり、年齢とともに医療費や介護費の負担が増えたりするケースもあります。

このように、高齢者の単身世帯は収入を増やしにくい一方で、一定の支出が継続的に発生しやすい特徴があります。

その結果、生活保護受給世帯に占める単身高齢者の割合が高くなっていると考えられます。

では、年金を主な収入源とする65歳以上の単身無職世帯の家計は、実際にどのような状況なのでしょうか。

3. 高齢単身世帯の家計は「毎月赤字」

総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の家計状況は以下のとおりです。

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

【65歳以上 単身無職世帯】

  • 実収入:13万1456円
  • 可処分所得(手取り収入):11万8465円
  • 消費支出:14万8445円
  • 毎月の赤字額:2万9980円

平均的な高齢単身世帯では、毎月およそ3万円の赤字が発生している計算になります。

多くの高齢者が年金収入を中心に生活している一方で、それだけでは支出を賄いきれないケースも少なくないことが分かります。

加えて、この家計収支には医療費や介護費、葬儀費用などの突発的な支出は含まれていません。

こうした事情を考えると、生活保護受給世帯の半数以上が単身高齢者世帯であることも理解できるでしょう。

4. 生活保護の「生活扶助」はいくら支給される?

生活保護は定額給付ではなく、世帯ごとの収入や生活状況に応じて必要額が支給される制度です。

制度は次の8つの扶助で構成されています。

  • 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱水費等)
  • 住宅扶助:アパート等の家賃等 定められた範囲内で実費を支給
  • 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費等
  • 医療扶助:医療サービスの費用。費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)
  • 介護扶助:介護サービスの費用。費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし)
  • 出産扶助:出産費用。定められた範囲内で実費を支給
  • 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用(高等学校等に就学するための費用を含む。)定められた範囲内で実費(高等学校等に就学するための費用の一部は定められた基準額)を支給
  • 葬祭扶助:葬祭費用。定められた範囲内で実費を支給

なかでも生活費の中心となるのが「生活扶助」です。

生活扶助額は、地域や世帯人数、年齢構成などによって異なります。

世帯構成:東京都区部等/地方郡部等

  • 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
  • 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万6450円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
  • 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円

これらに加えて、住宅扶助など必要な扶助が上乗せされます。

上記から、生活保護の支給水準は、居住地域や世帯構成によって異なり、それぞれの状況に応じた最低生活費が設定されていることが分かります。

5. 高齢者の生活実態と生活保護制度を理解しておこう

本記事では、生活保護受給世帯の構成や高齢単身世帯の家計状況、さらに生活保護制度の支給内容について解説しました。

生活保護受給世帯の内訳を見ると、高齢者世帯が54.9%を占め、そのうち単身高齢者世帯だけで51.3%に達しています。

その背景には、高齢単身世帯の家計が毎月約3万円の赤字となっている現状や、公的年金を主な収入源として暮らす世帯が多いことがあります。

生活保護は、こうした状況に置かれた人の最低限度の生活を支えるために設けられており、生活扶助をはじめ住宅扶助や医療扶助など複数の制度によって構成されています。

制度の実態を知ることで、高齢期の生活設計や将来への備えについて考えるきっかけになるでしょう。

参考資料

鶴田 綾