6月も中旬を迎え、本格的な梅雨の季節がやってきました。

雨音を聞きながら自宅で過ごす時間が増えると、自然と将来の家計について思いを巡らせることもあるでしょう。

日々の生活費を見直す中で、「自分の家庭の貯蓄や借入額は、他の同世代の家庭と比べてどうなのだろうか」という疑問が頭をよぎる方は少なくないはずです。

とはいえ、貯蓄や負債といったデリケートなお金の話題は、親しい友人や家族にさえ打ち明けにくいものです。

そこで本記事では、2026年5月に総務省統計局が発表した最新の家計調査報告を基に、勤労者世帯を中心とした貯蓄と負債の現状を整理していきます。

ご自身の家計の立ち位置を客観的に把握し、今後の資産計画を考えるための一助としてご活用ください。

1. 二人以上世帯の貯蓄額は平均いくら?まずは全体の状況を把握

総務省統計局は2026年5月19日に、「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2025年(令和7年)平均結果―(二人以上の世帯)」を公開しました。

はじめに、二人以上世帯全体の貯蓄と負債がどのくらいの水準にあるのかを見ていきましょう。

1.1 【全体像】二人以上世帯における貯蓄と負債の金額

貯蓄現在高の内訳

  • 貯蓄現在高:2059万円
  • 貯蓄を保有している世帯の中央値:1264万円
  • 貯蓄が「0」の世帯も含めた場合の中央値(参考値):1167万円

負債額の内訳

  • 負債現在高:675万円
  • 負債を保有している世帯の平均値:1802万円
  • 負債を保有している世帯の中央値:1511万円

平均値だけを見ると金額が大きいと感じるかもしれませんが、中央値との乖離から、貯蓄や負債の額は世帯によって大きく異なることがうかがえます。

続いて、対象を「勤労者世帯」に絞って、より詳しく見ていきましょう。

2. 勤労者世帯に限定して見る、貯蓄と負債の実態

ここでは、二人以上世帯の中から、世帯主が就労している「勤労者世帯」に限定したデータを確認していきます。

2.1 【勤労者世帯】二人以上世帯の貯蓄と負債の金額

貯蓄額の内訳

  • 貯蓄現在高:1717万円
  • 貯蓄を保有している世帯の中央値:1015万円
  • 貯蓄が「0」の世帯も含めた場合の中央値(参考値):964万円

負債額の内訳

  • 負債現在高:1034万円
  • 負債を保有している世帯の平均値:1928万円
  • 負債を保有している世帯の中央値:1735万円

二人以上世帯全体と比較すると、勤労者世帯の平均貯蓄額は約340万円少なく、中央値は1015万円です。

世帯主の平均年齢は、勤労者世帯が50.7歳であるのに対し、全体平均は60.1歳と約9歳の開きがあります。

この年齢の違いが、貯蓄額の差に影響していると推測されます。

さらに、勤労者世帯では住宅ローンといった負債を抱えている場合が多く、老後資金の準備が本格化するのはこれからという家庭も多いと考えられます。

ちなみに、勤労者世帯の平均年間収入は824万円で、貯蓄から負債を引いた「純貯蓄額」の平均は683万円という結果でした。

2.2 【勤労者世帯】貯蓄の種類ごとの構成比率

貯蓄現在高1717万円の内訳

金融機関:1675万円(97.6%)

  • 通貨性預貯金:641万円(37.3%)
  • 定期性預貯金:343万円(20.0%)
  • 生命保険など:321万円(18.7%)
  • 有価証券:370万円(21.5%)

金融機関以外:41万円(2.4%)

貯蓄の内訳を見ると、最も割合が高いのは通貨性預貯金で、次いで有価証券となっています。

依然として預貯金が貯蓄の中心であることに変わりはありませんが、特に有価証券は前年比で25.4%と大幅に増加しており、資産運用を始める世帯が増加している傾向が見て取れます。

3. 年齢階級別で比較する二人以上世帯の貯蓄と負債の変動

ここからは、二人以上世帯全体を対象に、年齢階級別の貯蓄と負債がどのように推移するのかを見ていきます。

3.1 二人以上世帯全体における年齢別の貯蓄現在高

全体平均:2059万円

  • 40歳未満:994万円
  • 40~49歳:1381万円
  • 50~59歳:1756万円
  • 60~69歳:2843万円
  • 70歳以上:2471万円

 

貯蓄額は40歳代で1000万円を上回り、60歳代で最も高くなる傾向にあります。

次に、負債額の推移を確認してみましょう。

3.2 二人以上世帯全体における年齢別の負債現在高

全体平均:675万円

  • 40歳未満:1882万円
  • 40~49歳:1483万円
  • 50~59歳:743万円
  • 60~69歳:234万円
  • 70歳以上:81万円

負債額は40歳代まで高い水準で推移し、その後は年齢が上がるにつれて大幅に減少していきます。

平均的なデータから見ると、純貯蓄額がプラスになるのは50歳代以降ということがわかります。

もちろん、各世帯で家計の状況は異なりますが、このような公的なデータを参考に自身の現在地を客観的に知ることが、将来を見据えた家計管理のスタートラインといえるでしょう。

4. 同年代でも貯蓄額に差が生まれるのはなぜか

同じ年齢層であっても、貯蓄や負債の金額には大きな差が見られます。

その主な要因は、それぞれの世帯が持つ背景や条件が異なることにあります。

4.1 家計に影響をおよぼす家族構成や住まいの形態

子どもの数や教育ステージによって、教育費の負担は大きく変動します。

また、住まいが持ち家か賃貸かによっても、住宅ローンの有無や家賃などの住居費に違いが出てきます。

これらの要素は、たとえ同年代であっても、月々の支出の内訳に大きな影響を与えます。

4.2 資産形成のペースを左右する共働きと片働きの違い

共働き世帯は収入が高くなる傾向がある一方で、片働き世帯は育児や介護といった事情から収入が限定されることもあります。

その結果、貯蓄に充てられる金額や資産を形成していくスピードに差が生じやすくなるのです。

4.3 平均値との比較は必ずしも努力の指標ではない

このように、貯蓄額の違いは、個人の節約意識や家計管理能力だけで決まるわけではありません。

平均値はあくまで一つの目安であり、平均との間に差があったとしても、それが必ずしも努力不足を意味するわけではないのです。

ご自身のライフステージや家族の状況を考慮しながら、データをどのように解釈するかが大切です。

5. 貯蓄から負債を引いた「純貯蓄額」で見る年代別の実情

ここでは、貯蓄総額から負債総額を差し引いた「純貯蓄額」に焦点を当てて見ていきます。

これは、家計の財務状況をより実態に近く示す「実質的な貯蓄額」ともいえる指標です。

全体平均:1384万円

  • 40歳未満:▲888万円
  • 40~49歳:▲102万円
  • 50~59歳:1013万円
  • 60~69歳:2609万円
  • 70歳以上:2390万円

データを確認すると、40歳未満の純貯蓄額が▲888万円と、最も大きなマイナスを記録しています。

この年代は住宅購入に伴うローン契約や、結婚、子育てといった支出が増加するライフイベントが重なることが多く、家計への負担が急増する時期と考えられます。

40歳代でも純貯蓄額は▲102万円とマイナスが継続し、50歳代でようやくプラスに転じるのが平均的な姿です。

50歳代は収入が最も高くなる世帯が多い反面、教育費の負担がピークを迎え、住宅ローンの返済も続くため、資産が思うように増えないという状況も珍しくありません。

家計の状況が大きく好転するのは60歳代からです。

住宅ローンを完済したり、子どもが独立したりすることで固定費が減少し、家計にゆとりが生まれることで、純貯蓄額は大幅に増加します。

このように、世帯の貯蓄状況は年齢だけで一概に決まるのではなく、その時々のライフイベントと密接に関連していることがわかります。

住宅の購入、子どもの教育、そして老後への準備など、お金との関わり方は人生を通じて変化し続けます。

ご自身の現在のライフステージと平均的なデータを比較することで、今後の家計設計のヒントが得られるかもしれません。

6. まとめ:平均値だけでは把握できない貯蓄額の差が生まれる背景

貯蓄を増やしていくためには、まずご自身の家計の現状を正確に理解することがスタート地点となります。

しかし、日々の節約努力だけで家計を大幅に改善することが難しいケースもあります。

そのような場合は、転職や副業、資産運用といった、ご自身に適した方法で収入源を増やすことを検討するのも一つの有効な手段です。

働き方が多様化している現代において、定年後も収入を得られるようなスキルや経験、人脈、そして何よりも健康を保つことは、長期的な視点での資産計画において大きな力となるでしょう。

単にお金を「貯める・増やす」という観点だけでなく、人生100年時代を心豊かに過ごすための基盤を築くという視点から、家計や働き方を見直すことが、今後さらに大切になっていくと考えられます。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

7.1 【ご参考】貯蓄の定義について

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]における貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行、その他の金融機関(普通銀行など)への預貯金を指します。

また、生命保険や積立型損害保険の掛金(払込総額)、株式、債券、投資信託、金銭信託といった有価証券(株式・投資信託は時価、債券・貸付信託・金銭信託は額面)も含まれます。

これら金融機関への貯蓄に加えて、社内預金や勤務先の共済組合など、金融機関以外への貯蓄も合計したものをいいます。

7.2 【ご参考】年間収入の定義について

総務省統計局の「家計調査」でいう「年間収入」とは、世帯全体における過去1年間の税込み収入のことです。

具体的には、以下の1から6までの収入を合計した金額を指します。

1. 勤め先からの収入(月々の給与、賞与など)
2. 事業による年間の利益(原材料費、人件費、その他経費を差し引いた額)
3. 内職による年間の収入(材料費などを差し引いた額)
4. 公的年金・恩給、農林漁業からの収入(経費を差し引いた額)
5. その他の年間収入(預貯金の利子、仕送り、家賃収入など)
6. 現物消費の見積額