5. 75歳以上の医療費はいくらかかる?実際の支出とその偏りについて
一方で、老後の医療費を考えるときに、「夫婦で同じように医療費がかかる」と想定していると、実態と異なってしまうことがあります。
実際には、医療費は世帯のなかで偏って発生することが多く、夫婦のどちらか一方に集中する傾向が見られます。
このような“非対称性”を考慮しておくことが、より現実に即した資金計画を立てるうえで重要になります。
5.1 医療費は「世帯平均」では見えない個人の負担
統計データでは夫婦世帯の平均医療費が示されることも多いですが、その金額が夫婦それぞれに均等にかかるわけではないのです。
実際には、健康状態や過去の病歴、生活習慣の違いなどから、医療費は個人ごとに大きく異なります。
その結果、世帯全体で見れば平均的な金額に収まっていても、内訳を見るとどちらか一方に負担が偏るという構造になりがちです。
5.2 医療費が夫婦の一方に集中した場合の家計へのインパクト
医療費が夫婦のどちらか一方に集中すると、家計への影響は平均的な場合よりも大きく感じられるでしょう。
例えば、継続して通院したり薬を服用したりする必要がある場合、その費用は毎月固定でかかります。
厚生労働省が公表する「国民医療費の概況」によると、通院(外来)や薬局で支払う薬代も、医療費の大きな割合を占めていることがわかります。
医療費の内訳は、以下のような構成になっています。
- ・入院医療費:37.1%
- ・入院外(外来・通院)医療費:34.7%
- ・薬局調剤医療費(薬代):17.6%
これらは世帯単位ではなく個人にかかる費用ですが、パートナーが健康であっても、世帯としては「常に医療費が発生し続ける状態」となり、生活費全体に占める医療費の割合が高くなりがちです。
また、入院や手術などが重なると、一時的に支出が急増する可能性もあり、家計の余裕を圧迫する一因となります。
5.3 医療費の偏りが将来の介護リスクに与える影響
さらに重要な点として、この医療費の偏りが、将来の介護費用の発生と結びつきやすいことが挙げられます。
慢性的な病気や身体機能の低下が続くと、そのまま要介護状態へと移行するケースも珍しくありません。
つまり、医療費が多くかかっている方が、将来的に介護費用の中心となる可能性が高いといえるでしょう。
この点を考慮すると、医療費を単体で見るのではなく、「将来の介護費用の始まり」として捉える視点も大切です。
5.4 「夫婦二人でリスク分散」という考え方の見直しが必要な理由
老後資金を計画する際、「夫婦二人ならリスクは分散できる」と考えがちですが、医療費については必ずしもそうはいえません。
むしろ、どちらか一方に負担が集中することで、結果として世帯全体の支出が長期にわたって増えるという状況も考えられます。
ですから、資金計画を立てる際は、単純な平均額で考えるのではなく、「どちらか一方に負担が偏る可能性」を前提にすることが、より現実に合った備えにつながります。
