厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」によると、日本の平均寿命は男性が81.09年、女性が87.13年でした。男女差は6.03年で、前年から0.01年縮小しています。

平均寿命が男女ともに80歳代に延び、60歳でリタイアしてもその後20〜30年の人生が続く時代になりました。長く生きるからこそ、貯蓄や働き方など、老後のお金との向き合い方が気になる方もいるでしょう。

では、ひとりで暮らす60歳代の方は、どれほどの貯蓄を持っているのでしょうか。今回はおひとりさま(単身世帯)60歳代の平均貯蓄額と中央値を確認したうえで、PGF生命の調査をもとに「60歳以降も働きたい理由」と、これからの備え方をみていきましょう。

1. 【60歳代おひとりさま】平均貯蓄額・中央値はいくら?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、おひとりさま60歳代の金融資産保有額は次のとおりです。

※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。

1.1 60歳代(単身世帯)の貯蓄額(平均・中央値)

おひとりさま60歳代の貯蓄額1/1

おひとりさま60歳代の貯蓄額

出所J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

  • 平均:1,364万円
  • 中央値:300万円

平均と中央値の差は約4.5倍にひらいています。一部の世帯が平均を大きく押し上げていることがうかがえます。

分布をみると、おひとりさま60歳代のうち金融資産を持たない「貯蓄ゼロ」の世帯が30.4%。つまり約3世帯に1世帯にのぼります。一方で「2,000万円以上」ある世帯も21.1%(2,000〜3,000万円が5.5%、3,000万円以上が15.6%)と、およそ5世帯に1世帯。二極化の傾向がうかがえます。

2. 60歳以降も働きたい理由は?

PGF生命が2026年3〜4月に実施した「2026年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」によると、2026年に60歳を迎える方が60歳以降も働きたい理由は、次のとおりです(複数回答/PGF生命調べ)。

2.1 60歳以降も働きたい理由

  • 働かないと生活費が不足するから:53.9%
  • 健康を維持したいから:42.1%
  • 人と関わりを持ちたいから:32.0%
  • 趣味やレジャーのためのお金が必要だから:30.6%

もっとも多いのは「働かないと生活費が不足するから」で、半数を超えています。これは公的年金だけでは生活費に不足が出ると感じている方が多いことを意味します。

一方で、健康維持や人とのつながり、趣味への支出など、お金以外の動機を挙げる方もそれぞれ3〜4割。働くことが収入だけでなく、生活のリズムや心身の健康をも支えていることがうかがえます。

3. おひとりさまの60歳代、これからどう備える?

貯蓄の状況と「働きたい理由」をふまえ、これからの老後の備え方を2つの方向からみていきましょう。

3.1 健康を維持しながら長く働く

60歳以降も働きたい理由のうち、「健康を維持したいから」が4割を超え、「人と関わりを持ちたい」も3割超に達しています。働くことには、収入を補う以外にも、生活のリズムを保ち、社会とのつながりをもつ意味もあります。

無理のない範囲で働ける期間が少しでも長くなれば、その分、貯蓄を取り崩すペースを抑えることができます。健康診断を定期的に受けたり、毎日の生活習慣を整えたりすることは、結果として家計の備えにもつながるといえそうです。

3.2 「貯蓄+投資」で老後資金を整える

これからの備えとしては、預貯金にくわえて、新NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇のある制度を活用するのも選択肢の一つです。長く生きる前提に立てば、預貯金だけだと物価上昇で実質的な価値が目減りする可能性も意識したいところ。

ただし、投資には元本割れのリスクがあります。日常的に使うお金とは分けて、生活防衛資金を確保したうえで、無理のない金額から始めるのが基本でしょう。商品選びや投資方法などによりリスクも異なりますので、ご自身の家計や考え方に合うものを慎重に検討したいところです。

4. まとめにかえて

今回みてきたとおり、おひとりさま60歳代の貯蓄は平均1,364万円・中央値300万円。「貯蓄ゼロ」が約3割、「2,000万円以上」が約2割と、世帯ごとに差が大きい状況です。

平均寿命が男女とも80歳代に延び、60歳以降の20〜30年をどう過ごすかは大きなテーマ。働くこと、健康を保つこと、家計や投資を整えること――それぞれの選び方は、ひとりずつ違ってよいはずです。まずは家計や貯蓄を一度たしかめ、今後について考えてみましょう。

参考資料

宮野 茉莉子