もし「公的年金だけで毎月の暮らしを支えるのは少し心もとない」と感じているなら、年金受給者の暮らしを下支えする「年金生活者支援給付金」という制度が、家計の助けになる可能性があります。
2019年に創設されたこの給付金は、所得や課税状況など一定の要件を満たした基礎年金受給者であれば、公的年金にプラスして「老齢」「障害」「遺族」3種類のいずれかを受け取れる仕組みです。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月時点の平均給付月額は、老齢年金生活者支援給付金が「4146円」、障害年金生活者支援給付金が「5727円」、遺族年金生活者支援給付金が「5228円」となっており、年金本体に上乗せされる支援として家計に直接届くお金です。
この記事では、「年金生活者支援給付金」の3種類別の支給要件と給付金額別の件数、そして「申請しないと受け取れない」請求手続きの流れまでをやさしく整理していきます。
1. 「年金生活者支援給付金」とは?基礎年金にプラスして受け取れる支援制度
「年金生活者支援給付金」は、年金受給者の暮らしを支えることを目的に、2019年に創設された制度です。
受給要件を満たした方には、2カ月に1回、公的年金の支給日にあわせて、給付金が振り込まれる仕組みになっています。
「年金生活者支援給付金」には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、受給している基礎年金の種類に応じて、「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」のいずれかに振り分けられます。
それぞれの所得要件を満たした基礎年金受給者が、この給付金の対象となる仕組みです。
2. 【3種類で要件が異なる】「年金生活者支援給付金」の支給要件を整理
本章では、気になる「年金生活者支援給付金の支給要件」について、3種類ごとに深掘りしていきましょう。
2.1 【障害・遺族】年金生活者支援給付金の支給対象を見る
まず、「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれの年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中であることと、前年の所得が「479万4000円」以下であることが条件となります。
ここでポイントとなるのが、「所得には障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれない」という点です。
また、扶養親族などの数に応じて、所得の基準額が上がる点もあわせて押さえておきましょう。
2.2 【老齢】年金生活者支援給付金の支給対象を見る
一方、「老齢年金生活者支援給付金」の支給対象は少し異なり、下記の支給要件をすべて満たす方が対象となります。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれの方は「80万9000円」以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は「80万6700円」以下
「老齢年金生活者支援給付金」については、本人の所得以外の要件も加わってくる点には注意が必要です。なお、老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
また、「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される仕組みになっています。
対象となるのは、「昭和31年4月2日以後に生まれた方で『80万9000円』を超え『90万9000円』以下である方」、「昭和31年4月1日以前に生まれた方で『80万6700円』を超え『90万6700円』以下である方」です。
3. 【最新データ】年金生活者支援給付金は1人あたりいくら?給付金額別の件数で見る
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、実際に支給されている年金生活者支援給付金の平均月額を確認していきましょう。
2025年3月時点の平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が「4146円」、障害年金生活者支援給付金が「5727円」、遺族年金生活者支援給付金が「5228円」となっています。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。
給付金額別の給付件数は、次のとおりです。
3.1 【老齢年金生活者支援給付金】給付金額別の給付件数
- 1000円未満:7万5101件
- 1000円以上2000円未満:31万4450件
- 2000円以上3000円未満:59万9166件
- 3000円以上4000円未満:108万2177件
- 4000円以上5000円未満:103万4357件
- 5000円以上6000円未満:104万5423件
- 6000円以上7000円未満:18万5291件
- 7000円以上8000円未満:9万3265件
- 8000円以上9000円未満:4万4796件
- 9000円以上1万円未満:1万9891件
- 1万円以上:1万524件
3.2 【障害年金生活者支援給付金】給付金額別の給付件数
- 5000円以上6000円未満:149万3700件
- 6000円以上7000円未満:68万3466件
3.3 【遺族年金生活者支援給付金】給付金額別の給付件数
- 1000円未満:ー
- 1000円以上2000円未満:607件
- 2000円以上3000円未満:1569件
- 3000円以上4000円未満:ー
- 4000円以上5000円未満:ー
- 5000円以上:7万5531件
4. 【年金生活者支援給付金】請求手続きの方法を2パターンで整理
「年金生活者支援給付金」は、対象者であっても自動的に振り込まれる仕組みではありません。申請が必須となっているので、手続き漏れがないように注意しましょう。
ここからは、該当する方が多い「2つのパターン」にわけて、請求手続きの方法を整理していきます。
4.1 パターン1:すでに年金受給中で、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となった場合
- 毎年9月の第1営業日から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。受け取った方は必要事項を記入し、切手を貼って郵便ポストに投函します。
- 締切日までに提出すると10月分まで遡って受け取れますが、それ以降になると、請求した月の翌月分からの支給となります。早めの手続きを心がけましょう。
※「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は、電子申請による提出も可能です。電子申請を行った場合は、郵送での提出は不要となります。
4.2 パターン2:新規に老齢年金の受給が始まる人が、年金生活者支援給付金も支給対象になった場合
- 受給権が発生する3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」が送付されます。こちらに「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出します。
4.3 【重要】翌年以降の請求手続きは原則不要
「毎年手続きが必要なのかな?」と思う方もいるかもしれません。一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り、翌年以降の請求手続きは原則不要となっています。
※年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報等に基づき、継続支給の判定が行われます。継続支給の判定結果は、毎年10月分(支払いは12月)から1年間反映されます。
5. 【参考データ】国民年金・厚生年金の平均年金月額はいくら?
そもそも、いまのシニア世代はどれくらいの公的年金を受給しているのでしょうか。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、国民年金と厚生年金の平均年金月額を見ていきましょう。
5.1 国民年金(老齢基礎年金)の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:「5万9310円」
- 〈男性〉平均年金月額:「6万1595円」
- 〈女性〉平均年金月額:「5万7582円」
5.2 厚生年金(国民年金月額を含む)の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:「15万289円」
- 〈男性〉平均年金月額:「16万9967円」
- 〈女性〉平均年金月額:「11万1413円」
現役時代の働き方や過ごし方によって受給額が変わってくるため、個人差はどうしても大きくなりがちです。ねんきん定期便などを活用して、ご自身の見込み額を一度確認しておきましょう。
6. まとめにかえて
「年金生活者支援給付金」は年金にプラスして受け取れる心強い制度ですが、対象であっても自動的に振り込まれるわけではなく、申請が必須となっています。
かつて自治体の窓口で給付や資格切り替えに携わってきた経験からも、「請求書が届いていたのに気づかず期限を過ぎてしまった」「自分は対象外だと思い込んでいた」というケースは少なくありませんでした。
とくに「基準額ギリギリで対象外かも」と感じる方も、「補足的老齢年金生活者支援給付金」として対象になる可能性があります。判断に迷うときは、年金事務所やお住まいの自治体の窓口に相談してみましょう。
一度申請すれば、支給要件を満たす限り翌年以降の手続きは原則不要です。「自分は関係ないかも」と決めつけず、ご家族の年金や所得状況もあわせて、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」
太田 彩子