「厚生年金は現役時代に頑張って働けば、月30万円くらいもらえる」—そんなイメージをお持ちの方もいるかもしれません。ところが実際のデータをみると、厚生年金を月30万円以上受け取っている人は、全体のわずか約0.1%。ほとんどの人は、そこまで届いていないのが実情です。

8月は2か月に一度の年金支給月。2026年は8月15日が土曜日にあたるため、8月の年金は8月14日に支給されました。通帳に振り込まれた金額を見て、「自分の年金は多いのか、少ないのか」と考えた方もいるかもしれません。

65歳を過ぎても働き続ける人が増えるなか、「年金だけで実際いくらもらえるのか」は、あらためて知っておきたいテーマといえるでしょう。今回は、厚生年金の「本当の受給額の分布」を、公的な最新データからひもといていきます。まずは年金の仕組みと平均月額をおさえたうえで、高額受給の実態と、いちばん多い受給額の“ボリュームゾーン”を確認しましょう。

※本記事は一部、【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアルを引用のもと執筆しています。

1. この記事の3つのポイント

  •  厚生年金を「月30万円以上」受け取る人は全体の約0.1%(1万9283人)。高額受給はごく一部
  •  いちばん多いのは「月10万〜11万円台」。平均(月15万289円)より低い層に人数が集まる
  •  「月20万円以上」は全体で約19%、男性でも約27%。男女差も大きい

 

2. 公的年金は「2階建て」

「自分の年金はいくらか」を考える前に、まず土台となる仕組みを押さえておきましょう。日本の公的年金は、1階の国民年金(基礎年金)の上に、会社員や公務員などが加入する2階の厚生年金が積み重なった「2階建て」でできています。どの階に、どれだけの期間・保険料で加入してきたかによって、受け取る額は一人ひとり大きく変わります。まずは制度の概要を確認しましょう。

厚生年金と国民年金の仕組み1/3

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

【1階部分】国民年金(基礎年金)の概要

  • 加入対象:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人
  • 保険料:国民年金保険料は所得にかかわらず一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度は月額1万7920円)
  • 受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額を受け取ることができます(2026年度は月額7万608円)

【2階部分】厚生年金の概要

  • 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入
  • 保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、保険料計算の基となる収入には上限が設けられています
  • 受給額:加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます

ここで押さえたいのは、両者の性格の違いです。国民年金は「全員一律」で満額があらかじめ決まっているのに対し、厚生年金は収入と加入期間しだいで大きくも小さくもなります。会社員として長く、高い給与で働いた人ほど2階部分が厚く積み上がり、加入期間が短い人や国民年金だけの人は、その分だけ受給額が小さくなるということです。

今回のテーマ「厚生年金でいくらもらえるか」に大きな個人差が出るのは、まさにこの仕組みが理由です。ご自身がどの区分で、何年ほど厚生年金に加入してきたかを思い出しながら、次の平均額を見てみてください。

3. 厚生年金・国民年金の平均年金月額一覧

仕組みを押さえたら、次は「平均でいくらもらえているのか」です。最新の公的データである厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金と国民年金それぞれの平均月額を、男女別で見ていきましょう。

国民年金の平均年金月額2/3

国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

厚生年金の平均年金月額3/3

厚生年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

厚生年金の平均額(全年齢)

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円 ※国民年金の金額を含みます。

国民年金の平均額(全年齢)

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

厚生年金は全体で月15万円台ですが、見逃せないのが男女差です。育児や介護などで働く期間が短くなりやすかったこと、賃金の差があったことなどが背景にあると考えられます。

また、「平均=いちばん多い金額」ではありません。平均は一部の高額受給者に引き上げられるため、実感とはズレることがあります。では実際に、人数はどの金額帯に集まっているのか。ここからは受給額の“分布”を見ていきましょう。

宮野 茉莉子
平均「月15万円」という数字だけを見ると、多い・少ないと一喜一憂しがちです。でも本当に大事なのは、平均や上位の金額と比べることではなく、自分がどのあたりに位置するかを知ること。次にみる分布と、ねんきんネットで確認できるご自身の見込み額をあわせて見ると、老後の家計がぐっと具体的に見えてきます。

4. 厚生年金「月30万円以上」はわずか約0.1%

同資料より、厚生年金(老齢・国民年金分を含む)の受給者を金額帯ごとにみていきます。受給権者は全体で1608万5696人(男性1067万9944人、女性540万5752人)です。

このうち、月「30万円以上」を受け取っている人は、全体で1万9283人。割合にすると約0.1%にすぎません。男性に絞っても1万8801人(男性全体の約0.2%)、女性はわずか482人です。「厚生年金なら30万円くらい」というイメージは、データ上はごく一部の人にあてはまる話だ、ということが分かります。

もう少し広げて「月25万円以上」でみても、全体で約2.3%。「月20万円以上」まで広げて、ようやく全体の約19%(およそ5人に1人)、男性では約27%(およそ4人に1人)に届きます。

逆にいえば、多くの人は月20万円未満の範囲に収まっている、ということです。高い金額帯ほど人数が急に少なくなる—これが厚生年金の受給額のリアルな姿です。