5. 厚生年金でいちばん多いのは「月10万円台」
では、いちばん人数が多い“ボリュームゾーン”はどこでしょうか。同じデータで金額帯別の人数をみると、厚生年金〈全体〉で最も多いのは「月10万円以上〜11万円未満」で、111万2828人が集まっています。平均の15万円台よりも、やや低い金額帯に人数のピークがあります。
これを男女別にみると、様子がかなり変わります。男性で最も多いのは「月18万円以上〜19万円未満」の95万5327人。18万〜20万円あたりに厚い層があります。
一方、女性で最も多いのは「月10万円以上〜11万円未満」の81万3990人で、10万円前後に人数が集中しています。同じ厚生年金でも、男女で“ボリュームゾーン”が異なります。この差の背景には、平均月額の男女差と同じく、就労期間や賃金水準の違いがあると考えられます。
大切なのは、平均や上位層の金額に引っ張られず、「自分や配偶者は、現役時代の働き方からみて、どのあたりの金額帯に入りそうか」という目線で見込みを立てることです。世帯単位で合計すると、見え方が変わることも少なくありません。そしてねんきんネットで年金見込み額をみるとより明確になるのでよいでしょう。
6. 年金からも「天引き」される—額面と手取りは違う
ここまで見てきた受給額は、すべて「額面」の金額です。実は、年金からも税金や社会保険料が天引き(特別徴収)されるため、実際に使えるお金=手取りは、額面よりも少なくなります。現役時代に給与から税・社会保険料が引かれていたのと同じことが、年金でも起こるわけです。
日本年金機構によると、年金から特別徴収(天引き)される主なものは、次のとおりです。
- 介護保険料(65歳以上で、年金の年間受給額が18万円以上の方など)
- 国民健康保険料(税)(65歳以上75歳未満の方など)
- 後期高齢者医療保険料(75歳以上の方など)
- 個人住民税および森林環境税(65歳以上で、年金の年間受給額が18万円以上の方など)
年金額が年18万円以上あると、まず介護保険料が天引きの対象となり、続いて医療保険料や住民税などが差し引かれていきます。また、一定以上の年金には所得税がかかる場合もあります。つまり、「額面◯万円」がそのまま通帳に振り込まれるわけではない、ということです。複数の年金を受け取っている場合は、決められた優先順位にしたがって、いずれか一つの年金から天引きが行われます。
老後の家計を考えるうえで大切なのは、額面ではなく“手取り”でとらえることです。
平均額や早見表の数字は、いずれも額面。ここから税・社会保険料が引かれることを見込んでおかないと、「思ったより少ない」と後で戸惑うことになりかねません。自分の場合いくら引かれるのかは、毎年届く年金の「振込通知書」などで確認できます。額面と手取りの差を知っておくことが、現実的な老後の家計づくりの出発点になります。
7. 自分の受給見込み額を確かめるには
ここまでみてきたように、厚生年金の受給額は人によって大きく異なります。だからこそ、平均や分布はあくまで「全体の地図」として押さえたうえで、最後は自分自身の見込み額を確認することが欠かせません。
いちばん確実なのは、日本年金機構の「ねんきんネット」や、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」で、これまでの加入記録と将来の見込み額をチェックすることです。ねんきんネットなら、働き方や受け取り開始年齢を変えたときの試算もできます。50歳以上の方の定期便には、現在の加入条件が続いた場合の見込み額が記載されています。
「思ったより少ない」と感じた場合でも、打てる手はあります。長く働いて厚生年金の加入期間を延ばす、繰下げ受給で年金額を増やす、国民年金であれば付加年金や任意加入を検討する、といった方法です。まずは現状を“数字”で把握することが、老後のお金の不安を具体的な準備に変える第一歩になります。
8. まとめにかえて
厚生年金で「月30万円以上」を受け取る人は全体の約0.1%と、ごく一部にとどまります。いちばん人数が多いのは全体で月10万円台、男性では18万〜19万円台と、平均や高額層のイメージとは異なる姿がデータから見えてきました。男女差も大きく、女性は10万円前後に人数が集中しています。
大切なのは、平均や上位の金額に一喜一憂するのではなく、自分と家族の見込み額を“世帯単位”で把握することです。ねんきんネットで現状を確認したうえで、足りない部分をどう補うかを早めに考えておく。それが、老後の家計を落ち着いて見通すためのいちばんの近道です。
9. 元証券会社社員の執筆者コメント
参考資料
宮野 茉莉子
