老後の生活を支える大切な収入源である年金。実際にどれくらいの金額を受け取れるのか、また、受給開始を早めたり遅らせたりするとどうなるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

6月15日の年金支給日を前に今回は、厚生年金の平均受給額や受給額別の割合を詳しく見ていきます。あわせて、年金の「繰上げ受給」と「繰下げ受給」の仕組みや、それぞれのメリット・デメリットについても分かりやすく解説します。

1. 【厚生年金】受給額「10万円未満」と「20万円以上」どちらが多い?

厚生労働省年金局が公表した『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によれば、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均受給月額は15万289円です。では、実際の受給額の分布はどうなっているのでしょうか。「月10万円未満」で受け取っている人と「月20万円以上」の人では、どちらの割合が高いのか見ていきましょう。

1.1 男女別の平均受給額

〈全体〉平均年金月額:15万289円

〈男性〉平均年金月額:16万9967円
〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む

1.2 受給額別の詳しい割合(全体:1608万5696人)

10万円未満の割合:19.0%
10万円以上の割合:81.0%
15万円以上の割合:49.8%
20万円以上の割合:18.8%
30万円以上の割合:0.12%

データを見ると、受給額が10万円に満たない人の割合は19.0%でした。一方で、20万円以上の人々の割合は18.8%となっており、両者の割合は非常に近いものの、わずかに10万円未満の層が多いことがわかります。

この結果から、必ずしも高額な年金を受け取っている人ばかりではなく、比較的少額の受給に留まっている人も少なくないという実態がうかがえます。月額15万円以上を受給している人は全体の約半数を占めますが、20万円以上となるとその割合は約2割まで減少します。

このような状況をふまえると、公的年金だけでゆとりのある老後生活を送るためには、iDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用した資産形成や、長く働き続けるためのキャリアプランニングといった、個人での備えが重要になるといえるでしょう。

2. 【年金の繰上げ受給】早くもらう分「一生減額」されるしくみ

繰上げ受給の減額イメージ

【グラフで分かる】繰上げ受給の減額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとにLIMO編集部作成

老齢年金は、原則として65歳から支給が開始されます。しかし、希望すれば60歳から64歳までの間に前倒しで受け取ることもでき、これを「繰上げ受給」と呼びます。

通常より早く年金を受け取れるメリットがある一方で、受給額が減額されるというデメリットがあり、その減額された金額は生涯変わりません。減額率は繰上げを申請した期間によって異なり、1カ月早めるごとに0.4%ずつ減額されます。

減額率の計算ルール

減額率は、繰り上げた月数に応じて以下の数式で算出されます。

  • 減額率(最大24%) = 0.4% × 繰り上げた月数

※昭和37年4月1日以前生まれの方は、減額率が「0.5%(最大30%)」と現行より高く設定されています。

※一度請求すると取り消しができず、減額された金額が一生続きます。

最短の60歳0か月で請求した場合: 年金額は24%減となります。一度手続きを行うと取り消しはできないため、慎重な判断が求められる制度です。

3. 【年金の繰下げ受給】年金は増えるが「税金・社会保険料」も増える可能性あり

繰下げ受給の増額イメージ2/4

【グラフで分かる】繰下げ受給の増額イメージ

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとに筆者作成

繰上げ受給とは反対に、年金の受給開始を65歳よりも後に遅らせることで、将来受け取る年金額を増やせる制度が「繰下げ受給」です。

受給開始を1カ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増額され、最大で75歳まで繰下げることが可能です。75歳まで繰下げた場合の増額率は、最大で84%にもなります。

増額率の計算ルール

増額率は、65歳になった月(誕生日の前日が含まれる月)から受給開始までの月数で決まります。

  • 増額率(最大84%) = 0.7% × 繰り下げた月数

最長の75歳まで遅らせた場合: 年金額は84%増となります。

※昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰下げ上限が70歳までのため、最大増額率は42%です。

※待機期間中の生活費をどう確保するかが、この制度を活用する上での鍵となります。

ただし、受給開始までの生活費を自分で確保する必要があるほか、受給額が増えることで税金や社会保険料の負担が増える可能性もあります。また、受給前に亡くなった場合、増額分は受け取れない点にも注意が必要です。

4. 【年金の繰上げ・繰下げ受給】どちらが実際に選ばれているのか?

では、実際に繰上げ受給や繰下げ受給を選んでいる人は、どのくらいいるのでしょうか。厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度末時点での利用率は、繰上げ受給が1.2%、繰下げ受給が1.9%でした。このデータから、繰下げ受給を選択する人の方がやや多いことが分かります。

厚生年金保険(第1号) (老齢厚生年金)受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況の推移3/4

厚生年金保険(第1号) (老齢厚生年金)受給権者の繰上げ・繰下げ受給状況の推移

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

特にここ数年は繰下げ受給を選択する人が増加傾向にあり、将来の受給額を増やすという選択肢が広まりつつあるようです。高齢になっても働き続ける人が増えている社会背景も、この傾向を後押ししている一因と考えられます。

4.1 70歳時点で進む繰下げ選択の広がり

70歳時点での状況を見ると、繰下げ受給の割合はさらに高まっています。

厚生年金保険(第1号) (老齢厚生年金) 70 歳の繰上げ・繰下げ受給状況の推移4/4

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

令和6年度では4.2%に達しており、以前と比べて増加傾向がはっきりと見られます。制度改正によって繰下げ可能な年齢が拡大されたことも、この流れを後押ししています。

その一方で、繰上げ受給を選ぶ人の割合は低い水準で推移しており、早く受け取ることよりも、将来の受給額を増やすことを重視する人が増えているといえそうです。

5. 【年金の受け取り】自分のライフプランにあった方法を検討しよう

厚生年金の平均受給月額は約15万円ですが、これはあくまで平均値であり、実際の受給額には個人差が大きいのが実情です。受給額が10万円未満の人と20万円以上の人の割合がほぼ同じであることからも、誰もが高額な年金を受け取れるわけではないことがわかります。

繰上げ受給は早期に年金を受け取れるメリットがありますが、一度選択すると生涯にわたって減額された金額を受け取り続けることになるため、慎重な判断が求められます。対照的に、繰下げ受給は年金額を大幅に増やせる可能性がありますが、受給開始までの生活費の確保や、税金・社会保険料の負担増といった課題も考慮する必要があります。

これらの制度のメリットとデメリットをよく理解し、ご自身の健康状態や働き方、貯蓄状況といったライフプランに合わせて最適な受給開始時期を選択することが、安心して老後を過ごすための鍵となるでしょう。

参考資料