梅雨入りの便りが聞かれる6月上旬、将来の生活設計について考える方も多いのではないでしょうか。
日本の公的年金制度は、「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造が特徴です。
この仕組みにより、現役時代の働き方や加入状況が、将来受け取る年金額に大きく影響します。
近年では制度改正や年金額の見直しが頻繁に行われており、最新の情報を把握しておくことがますます重要になっています。
この記事では、公的年金の基本的な仕組みから、2026年度の年金額の動向、実際の受給額分布、そしてiDeCoなど私的年金の制度変更までを網羅的に解説します。
老後資金計画を立てる上で、押さえておきたいポイントを分かりやすく整理しました。
1. 日本の公的年金制度:「国民年金」と「厚生年金」による2階建て構造とは
日本の公的年金は、「国民年金(基礎年金)」を土台とし、その上に「厚生年金」が上乗せされる仕組みで、「2階建て構造」といわれています。
それぞれの制度の基本的な内容を確認していきましょう。
【1階部分】国民年金(基礎年金)の概要
- 加入対象:日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入します。
- 保険料:年度ごとに改定されますが、所得にかかわらず一律の金額です。(※1)
- 受給額:保険料を480カ月(40年間)すべて納付すると、65歳から満額の老齢基礎年金を受け取れます。(※2)保険料の未納期間がある場合は、その期間に応じて満額から減額されます。
※1 国民年金保険料:2025年度月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度月額は6万9308円
【2階部分】厚生年金の概要
- 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどでも特定の事業所(※3)で働き、一定の条件を満たす方が国民年金に上乗せして加入します。
- 保険料:収入(給与や賞与)に応じて決まり、上限が設けられています。(※4)
- 受給額:加入期間の長さや、納付した保険料の総額によって個人差が生じます。
両制度は、加入対象者や保険料の決定方法、受給額の計算式が異なるため、老後に受け取る年金額は個人の加入状況や収入によって変わってきます。
また、公的年金の額は、物価や現役世代の賃金水準の変動に応じて、毎年度見直されるという点も理解しておきたいポイントです。
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
2. 2026年度の年金額は増額へ。国民年金・厚生年金のモデルケースを紹介
厚生労働省が公表した資料によると、2026年度における年金額のモデルケースは以下の通りです。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分)(※1)
- 厚生年金:月額23万7279円(夫婦2人分)(※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。このように年齢により受給額が異なります。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
国民年金だけを受給する場合、満額(※3)でも月額は約7万円です。
仮に受給開始を上限の75歳まで繰下げ(※4)たとしても、月々の受給額は13万円に達しない計算になります。
※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%。
3. 厚生年金の受給実態:月額15万円以上を受け取る人の割合は?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金の平均受給月額(男女合計)は15万289円となっています。
この金額には、1階部分である国民年金(老齢基礎年金)の額も含まれている点に注意が必要です。
3.1 厚生年金の受給額別・受給権者数の分布
受給額別の人数分布は、以下のグラフとデータで確認できます。
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
この分布データから計算すると、厚生年金を月額15万円以上受け取っている人の割合は、全体の約49.8%です。
これは、受給者の半数に満たない水準であることがわかります。
厚生年金の受給資格がない人も含めると、この割合はさらに下がることになります。
4. なぜ公的年金だけでは不十分?私的年金と組み合わせる重要性
公的年金は老後の生活を支える重要な収入源ですが、それだけで生活費のすべてをまかなうのは難しい場合があります。
例えば、国民年金のみの受給であれば、満額でも月額7万円程度です。
厚生年金を受け取っている方でも、月額15万円未満のケースが半数以上を占めるという実態があります。
こうした背景から、近年では私的年金の役割がより重要視されるようになっています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DCといった制度は、自分で資金を積み立てて老後に備えるもので、公的年金を補完する役割を担います。
制度改正も進んでおり、加入条件の緩和や拠出の柔軟性が高まるなど、多くの人が利用しやすい環境が整備されつつあります。
老後の生活を安定させるためには、公的年金だけに頼るのではなく、私的年金を活用して複数の収入源を確保することが大切です。
2025年6月には年金制度が改正され、私的年金に関する見直しも行われています。
次の章では、この私的年金の見直し内容について詳しく見ていきましょう。
5. 私的年金制度の改正ポイントを解説
2025年6月に、年金制度改正法が成立しました。
この改正には、「年収106万円の壁」の見直しにつながる社会保険の適用拡大や、在職老齢年金の支給停止調整額の引き上げ、遺族年金制度の変更といった、公的年金に関する重要な変更点が含まれています。
同時に、私的年金であるiDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DCについても、いくつかの見直しが実施されることになりました。
5.1 iDeCoの加入可能年齢が70歳未満に引き上げ(3年以内に実施)
働き方の違いにかかわらず、iDeCoに加入できる年齢の上限が「70歳未満」へと引き上げられます。
- 改正前の加入条件
- 国民年金被保険者であること
- 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していないこと
- 改正後の対象者イメージ
- iDeCoを活用して老後の資産形成を続けたい方
- 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付を受給していない方
5.2 企業型DCのマッチング拠出上限が撤廃へ(3年以内に実施)
企業型DCにおいて、加入者本人が掛金を追加できる「マッチング拠出」の上限がなくなります。
この変更により、事業主の掛金額を上回る拠出も可能になり、限度額内でより柔軟な資産形成ができるようになります。
5.3 企業年金の運用状況の「見える化」がスタート(5年以内に実施)
企業年金の運用実績に関する情報を厚生労働省が一元的に集約し、公表する仕組みが導入されます。
これにより、他社の運用状況との比較や分析がしやすくなります。
6. まとめ:年金制度の理解と自身の受給額把握が老後設計の鍵
この記事では、公的年金の基本的な構造や、最新の年金額の動向について解説してきました。
公的年金の統計データを見ると、平均受給額と個々の受給実態には乖離があり、高額な年金を受け取っているのは一部の人に限られることがわかります。
年金制度は物価や賃金の変動に合わせて毎年調整される仕組みであり、私的年金についても制度の見直しが進んでいます。
したがって、老後の資金計画においては公的年金のみに頼るのではなく、複数の手段を組み合わせて準備するという視点が不可欠です。
制度の仕組みとご自身の受給額の見込みを正しく理解し、自分に合った対策を講じることが大切です。
単に「平均額」を参考にするだけでなく、まずは「ねんきん定期便」でご自身の状況を確認することから始めましょう。
その上で、必要に応じてiDeCoや新NISAの活用を検討するなど、早期に準備をスタートさせることが重要です。
※当記事は再編集記事です。



