6月は、年金にとって少し特別な月です。2026年度(令和8年度)の新しい年金額が初めて反映されるのが、6月15日(月曜)の振込分だからです。

「ニュースで年金が上がると聞いたけれど、自分の通帳の数字はどう変わるのだろう」そう気になっている方もいるのではないでしょうか。

一方で、「物価も上がっているし、増えても暮らしは楽にならないのでは」と感じている方もいるかもしれません。

金額が変わるこの時期は、届いた通知書をうっかり見落とすと、「結局いくらになったのか分からない」まま過ごしてしまいがちです。せっかくの確認の機会を逃さないよう、ポイントを押さえておきたいところです。

この記事でわかることは、次の3つです。

  • 厚生年金・国民年金は2026年度に「何%増える」のか(改定率)
  • 夫婦のモデル年金額や、老齢基礎年金の満額は「いくら」になるのか
  • 増額しても「手取りは思ったほど増えない」のはなぜか

「自分の場合はどうなるだろう?」と想像しながら、順番に確認していきましょう。

1. 厚生年金・国民年金の「年金額改定」とは?

公的年金の額は、毎年度、物価や賃金の動きに合わせて見直されます。これを「年金額改定」と呼びます。改定後の金額は、原則として毎年4月分(実際の振込は6月支払分)から反映されるしくみです。

では、2026年度(令和8年度)の改定は、何をもとに決まったのでしょうか。まず前提となる2つの指標を見てみましょう。

  • 物価変動率:プラス3.2%
  • 名目手取り賃金変動率(働く世代の手取り賃金の伸び):プラス2.1%

年金額改定のルールでは、物価と賃金がともにプラスで、物価の伸びが賃金の伸びを上回る場合、低いほうの「賃金変動率」を使って改定することになっています。

2026年度は物価(3.2%)が賃金(2.1%)を上回ったため、賃金変動率の「2.1%」が改定の出発点になりました。

この「2.1%」から、次の章で触れる調整を差し引いて、最終的な改定率が決まります。仕組みがわかったところで、いよいよ具体的な金額を見ていきましょう。

2. 【2026年度の改定率】満額・モデル年金額を見る

2026年度の最終的な改定率は、次のとおりです。

  • 国民年金(基礎年金):1.9%の引き上げ
  • 厚生年金(報酬比例部分):2.0%の引き上げ

基礎年金部分と報酬比例部分で、引き上げ率がわずかに異なるのがポイントです。なお「報酬比例部分」とは、現役時代の報酬と加入期間に応じて決まる、厚生年金の上乗せ部分のことです。

具体的な金額は、生年月日によって2段階に分かれます。まず、老齢基礎年金(1人分・満額)の月額を見てみましょう。

  • 昭和31年4月2日以後生まれの方:「月額7万608円」
  • 昭和31年4月1日以前生まれの方:「月額7万408円」

次に、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的なケース(モデル年金額)です。

  • 夫婦2人の老齢厚生年金を含む標準的な年金額(昭和31年4月2日以後生まれの場合):「月額23万7279円」

令和8年4月分からの年金額等1/2

令和8年4月分からの年金額等

出所:日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」

ここで一点、注意しておきたいことがあります。

このモデル年金額は、「平均的な収入で40年間働いた場合」を想定した標準的な一例にすぎません。実際に受け取る額は、加入していた期間や現役時代の報酬によって、一人ひとり大きく変わります。

「我が家はいくらだろう」と気になった方のために、調べ方は後ほどご案内します。

3. 年金の増額は「2026年6月15日の振込分」に反映されます

新しい年金額が反映されるのは、令和8年4月分(2026年6月15日(月曜)に支払われる分)からです。

公的年金は、原則として2カ月分が後払いでまとめて振り込まれます。6月15日に支払われるのは4月分・5月分にあたり、ここから改定後の金額になります。

この時期には、日本年金機構から「年金振込通知書」などで新しい金額が知らされます。届いたら中身をひと通り確認し、すぐに処分せず手元に保管しておきましょう。

4. 厚生年金が増えても「手取りは増えない人」とは

年金が「1.9~2.0%増える」と聞くと、その分だけ手元のお金が増えるように感じます。しかし、ここで気をつけたい点が2つあります。順番に見ていきましょう。

4.1 「マクロ経済スライド」による調整がある

年金には、「マクロ経済スライド」というしくみがあります。少子高齢化が進むなかでも年金制度を支え続けられるよう、年金額の伸びをゆるやかに抑える調整のことです。

2026年度も、この調整が実施されました。

  • 国民年金(基礎年金):マイナス0.2%
  • 厚生年金(報酬比例部分):マイナス0.1%

賃金や物価の伸びから、この調整分があらかじめ差し引かれた結果が、先ほどの改定率(1.9%・2.0%)です。つまり、賃金の伸び(2.1%)が、そのまま年金額に乗るわけではないのです。

令和8年度の参考指標2/2

令和8年度の参考指標

出所:日本年金機構「令和8年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。」

出所:日本年金機構「令和8年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。」

4.2 税金・社会保険料の天引きがある

年金額(額面)が増えても、そこから差し引かれる税金や社会保険料(介護保険料・国民健康保険料や後期高齢者医療の保険料など)によって、実際に受け取る「手取り」は額面ほど増えないことがあります。

これらの負担は、年度やお住まいの市区町村、所得などによって異なります。

額面の改定率だけでなく、「手取りでどう変わるか」という視点も持っておくと、家計の見通しが立てやすくなります。

5. 【確認方法】自分の厚生年金はいくら?ねんきんネットや通知書等で確認

くり返しになりますが、モデル年金額はあくまで標準的な一例で、実際の受給額は人それぞれです。「自分はいくら受け取れるのか」を知るには、次の方法等があります。

  • ねんきんネット:日本年金機構のオンラインサービスで、これまでの加入記録や年金見込み額を確認できます。
  • 年金振込通知書・年金額改定通知書:すでに受給している方は、毎年送られてくる通知書で、実際の振込額・改定後の金額を確認できます。
  • ねんきん定期便:現役世代の方は、毎年届くねんきん定期便で、加入状況や見込み額の目安を確認できます。

数字は人によって異なります。「平均」や「モデル」と比べて一喜一憂するよりも、まずはご自身の記録を確認することが、家計の見通しを立てる確かな第一歩になります。

6. 【まとめにかえて】年金額が変わる6月を、家計の点検日に

2026年度(令和8年度)は、国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられ、新しい金額は2026年6月15日の支払分から反映されます。夫婦のモデル年金額は「月23万7279円」です。

ただし、マクロ経済スライドによる調整や、税・社会保険料の天引きもあるため、手取りが額面どおりに増えるとは限りません。だからこそ、ニュースの数字だけで判断せず、ご自身の通知書や受給額に目を通しておくことが大切です。

年金額が動くこの6月を、わが家の家計をそっと点検する日にしてみてはいかがでしょうか。まずは知ることから始めてみましょう。

※記事内の情報は執筆時点(2026年6月8日)のものです。最新の年金額や個別の受給額は、日本年金機構の通知書やねんきんネットなど公式の情報でご確認ください。LIMOでは個別のお問い合わせへのお答えはいたしかねます。

参考資料

太田 彩子