2026年現在、マクロ経済スライドによる実質的な年金目減りとインフレの長期化が続くなか、リタイア後の生活を支える柱である「年金」への関心はかつてないほど高まっています。

メディアなどで「シニアの平均年金月額」が報じられることも増えましたが、その数字だけを見て「自分は人並みにもらえているから大丈夫」「平均以下だから絶望的だ」と一喜一憂するのは、老後設計の実務においてあまり意味をなしません。

なぜなら公的年金の受給額は、現役時代の働き方や加入期間、さらには「現在何歳なのか(受給が始まった時期の制度や賃金水準)」によって大きな差があるためです。統計上の「平均値」は一部の高い受給者が全体を引き上げている側面があり、実際の肌感覚とは異なるケースが多々あります。

本記事では、厚生労働省の最新の一次データをもとに、60代から90歳以上までの「年齢別・男女別」の具体的な平均受給額と、1万円刻みの詳細な受給額分布を徹底解説します。周囲のリアルな実態と比較しながら、自力で年金額を増やす手段についても分かりやすく整理します。

1. 【制度の基本】日本の公的年金は「基礎年金」と「厚生年金」の2階建て構造

公的年金は「2階建て構造」だと聞いたことがある人もいるでしょう。

これは、日本の年金制度が「1階部分にあたる国民年金(基礎年金)」と「2階部分にあたる厚生年金」から成り立つためです。

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厚生年金と国民年金の仕組み

出典:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 【1階部分】国民年金の概要

  • 加入対象者:原則として日本に住む20歳以上60歳未満の全員
  • 年金保険料:国民年金保険料は全員一律。ただし年度ごとに改定あり(2026年度月額:1万7920円)
  • 受給額:保険料を40年間欠かさず納付すれば満額が受け取れる(2026年度月額:7万608円)

国民年金の加入者は第1号被保険者~第3号被保険者にわかれ、このうち第2号被保険者が後述する厚生年金に加入します。厚生年金保険料を支払う人は、別途国民年金保険料を支払う必要はありません。

また、第3号被保険者も保険料の納付義務がありません。

1.2 【2階部分】厚生年金の概要

  • 加入対象者:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※1)に働き一定要件を満たした人が国民年金に上乗せで加入
  • 年金保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変わる。ただし上限あり(※2)
  • 受給額:加入期間や納めた保険料により個人差あり

※1 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される