日々の生活費や医療費など、お金に関する悩みは尽きないものですが、特に年金収入が生活の柱となるシニア世代にとっては、少しでも暮らしの助けになる制度は知っておきたいところです。
実は、公的年金に加えて、特定の条件を満たすことで受け取れる「年金生活者支援給付金」という制度があります。
この記事では、どのような方が対象になるのか、2026年度から増額された給付金は具体的にいくらもらえるのか、そしてどうすれば受け取れるのか、制度の基本から手続きの流れまで、一つひとつ丁寧に解説していきます。
1. 年金生活者支援給付金とはどのような制度?
年金受給者の生活を支えることを目的に、2019年に年金生活者支援給付金制度が創設されました。
受給要件を満たした対象者には、2カ月に1回、公的年金の支給日にあわせて年金生活者支援給付金が支給されます。
年金生活者支援給付金には3種類があり、受給する基礎年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」にわかれます。
それぞれの所得要件を満たす基礎年金受給者が、この給付金の対象となるということです。
2. 年金生活者支援給付金の支給対象となる要件
本章では、気になる「年金生活者支援給付金の支給要件」について深堀りしていきましょう。
2.1 障害・遺族年金生活者支援給付金の対象者
まず、「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」はそれぞれの年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中であることと、前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。
このときポイントとなるのが、「所得には障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれない」という点です。
扶養親族などの数に応じて、所得の基準額があがる点も押さえておきましょう。
2.2 老齢年金生活者支援給付金の対象者
一方、老齢年金生活者支援給付金の支給対象は少し異なり、下記の支給要件をすべて満たす必要があります。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下
「老齢年金生活者支援給付金」については、本人の所得以外の要件も加わることに注意しましょう。なお、老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
また「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
対象となるのは、「昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方」、「昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方」です。
3. 種類別の年金生活者支援給付金、支給額はいくら?
年金生活者支援給付金には、「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3種類があり、公的年金に上乗せして支給されます。
ここでは気になる金額について見ていきましょう。
3.1 2026年度における年金生活者支援給付金の金額
2026年度の年金生活者支援給付金の給付金額は、2025年度に比べて3.2%引き上げられています。
- 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円
4. 年金生活者支援給付金を受け取るための請求手続き
本章では「年金生活者支援給付金の請求手続き」を解説します。
すでに公的年金を受給している人のうち、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となった人には、日本年金機構からお知らせを兼ねた請求書が届きます。
4.1 手続きの流れ:すでに基礎年金を受給している場合
- 毎年9月の第1営業日から順次、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されてくる
- 2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は電子申請が利用できる
- 電子申請を利用しない場合は、必要事項を記載し、切手を貼ってポストに投函
なお、支給要件に当てはまるかどうかが確認できない人には「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」および「所得情報等を確認するための所得状況届」が届きます。
続いて、年金自体を新規で請求する場合のフローを確認しましょう。
4.2 手続きの流れ:これから老齢基礎年金を請求する場合
- 65歳になる3か月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封して送付
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書と併せて年金事務所に提出
※障害年金生活者支援給付金および遺族年金生活者支援給付金の対象者のうち、基礎年金を初めて新規で請求する方(年金と給付金を同時に請求する方)は、給付金の請求書が自動的に郵送されません。年金の請求手続きとあわせて、ご自身で年金事務所や市区町村の窓口で給付金の請求手続きを行う必要があります。
4.3 給付金はいつ支給される?支給日について
年金生活者支援給付金は、公的年金と同じく偶数月の15日に支払われます。なお、15日が土日または祝日のときは、その直前の金融機関の営業日に前倒しとなります。
例えば10月に給付されるのは、8月分・9月分の給付金です。
年金の受取口座と同じ口座に振り込まれますが、通帳にはそれぞれ別の振込として記載されます。
5. 年金だけで生活している高齢者世帯は多くない
年金だけで生活している高齢者世帯は、実は多くありません。
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、その割合は43.4%であることがわかっています。
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外の所得で生活費を補填していることがわかります。
公的年金のみで生活できない可能性も念頭に置いて、老後計画を立てる必要があるといえるでしょう。
6. まとめ
今回は、年金生活をサポートする「年金生活者支援給付金」について、その概要から支給要件、金額、手続き方法までを解説しました。
物価の上昇が続くなか、少しでも家計の助けになる制度はありがたいものです。
この給付金は自動的に支給されるものではなく、原則として請求手続きが必要になります。
対象になる可能性がある方には日本年金機構から案内が届きますので、見逃さないように注意しましょう。
もしご自身が対象になるか不安な場合や、手続きでわからないことがあれば、お近くの年金事務所や「給付金専用ダイヤル」に相談してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「『年金生活者支援給付金請求書』 の提出をお願いします!」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」
- 厚生労働省「Ⅱ 各種世帯の所得等の状況」
和田 直子