5月も下旬に入り、新年度の慌ただしさが一段落した頃かもしれません。
日々の生活のなかで、物価上昇の影響を改めて感じている方も多いのではないでしょうか。
特に公的年金で暮らす方々にとって、安定した収入の確保は切実な課題です。
そこで注目したいのが、年金に上乗せして受け取れる「年金生活者支援給付金」という制度です。
この給付金は、所得などの条件を満たす方が対象となりますが、自動的に支給されるわけではなく、原則としてご自身での申請手続きが求められます。
「制度の存在を知らなかった」「申請を忘れていた」といった理由で、本来受け取れるはずの給付金を受け取れていない可能性も考えられます。
さらに、2026年度からは給付額が見直され、6月15日の支給分から増額が適用される点も知っておきたい大切なポイントです。
この記事では、老齢・障害・遺族という3種類の年金生活者支援給付金について、それぞれの対象条件や給付額、具体的な手続き方法から注意点まで、一つひとつ丁寧に確認していきます。
1. 「年金生活者支援給付金」とは?年金に上乗せされる公的給付の基礎知識
基礎年金を受給している方のうち、所得が一定の要件を満たす場合に「年金生活者支援給付金」を受け取ることが可能です。
この「年金生活者支援給付金」には、「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3つの種類があります。
1.1 老齢年金生活者支援給付金の対象者と支給要件について
老齢年金生活者支援給付金は、以下の支給要件をすべて満たす方が対象となります。
- 65歳以上で老齢基礎年金の受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)と、その他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下(※2)であること
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
1.2 障害年金生活者支援給付金の対象者と支給要件について
障害年金生活者支援給付金は、以下の支給要件をすべて満たす方が対象です。
- 障害基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族などの数に応じて増額されます)
※ 障害年金などの非課税収入は所得に含まれません。
1.3 遺族年金生活者支援給付金の対象者と支給要件について
遺族年金生活者支援給付金は、以下の支給要件をすべて満たす方が対象となります。
- 遺族基礎年金の受給者であること
- 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族などの数に応じて増額されます)
※ 遺族年金などの非課税収入は所得に含まれません。
いずれの「年金生活者支援給付金」も、支給要件には前年の所得額が関係しています。
2. 2026年度の年金生活者支援給付金、基準額はいくらになるのか
「年金生活者支援給付金」の給付額は、公的年金と同様に物価の変動に応じて改定される仕組みになっています。
2026年度の給付額は前年度と比較して3.2%引き上げられ、この増額率は6月の支給分(4月・5月分の給付金)から適用されます。
2026年度における支給金額は、以下の通りです。
- 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級 月額7025円・2級 月額5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5620円
ただし、老齢年金生活者支援給付金については、上記の基準額を基に保険料の納付済期間や免除期間などに応じて、実際の給付額が計算されることになります。
3. 年金生活者支援給付金は申請が必要!具体的な手続き方法を解説
「年金生活者支援給付金」は、公的年金と同じように、請求手続きをしなければ受け取ることはできません。
ここでは、対象となる方が多いと考えられる2つのケースについて、請求手続きの方法をみていきましょう。
3.1 【パターン1】すでに年金を受給中で、新たに給付金の対象になった方の手続き
- 例年9月の第1営業日(2025年の場合は9月1日)から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送られてきます。必要事項を記入し、切手を貼ってポストに投函してください。
- 原則として、請求した月の翌月分から支給が開始されるため、早めに手続きを済ませることをおすすめします。
なお、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は、電子申請での提出も可能です。
電子申請を利用した場合は、郵送での提出は不要になります。
3.2 【パターン2】これから老齢年金の受給が始まる方の手続き
- 65歳になる3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封される形で、「年金生活者支援給付金請求書」が入った封筒が届きます。
- 必要事項を記入したうえで、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書とあわせて年金事務所へ提出します。
3.3 2年目以降の手続きは原則として不要
一度請求書を提出して受給が決定すれば、支給要件を満たしている限り、翌年以降の手続きは原則として不要です(※)。
これにより、継続して給付金を受け取ることができます。
※年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報などに基づいて継続して支給するかどうかの判定が行われます。この判定結果は、毎年10月分(12月支払い)から1年間反映されることになります。
4. 年金の受給額は人それぞれ。平均額はどのくらい?
ここからは、厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、国民年金と厚生年金の平均的な年金月額を、男女全体と男女別にそれぞれ見ていきましょう。
4.1 厚生年金の平均受給月額
〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
4.2 国民年金の平均受給月額
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
会社員などが受け取る厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額は、現役時代の働き方や厚生年金への加入月数、その期間の収入などによって大きな個人差が生じます。
そのため、平均年金月額が2万円に満たない方から25万円を超える方まで、受給額は幅広い範囲に分布しています。
一方で、自営業などで国民年金のみを受給する場合、男女ともに平均年金月額は5万円台です。
満額受給できたとしても、月額は7万608円(2026年度)となります。
国民年金のみを受給するケースでは、厚生年金ほどの個人差は生じにくいものの、老後資金をより手厚く準備する必要があるといえそうです。
5. 2025年年金制度改正のポイント:遺族年金の見直し動向
2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」が目指す大きな目的の一つは、働き方や家族構成の多様化に対応した年金制度を整備することです。
この改正では、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に関連する社会保険の加入要件拡大のほか、遺族年金に関する見直しも含まれています。
5.1 遺族厚生年金における男女差の是正に向けた動き
現在の遺族厚生年金の制度では、受給者の性別によって以下のような違いがありました。
現行制度の概要
- 女性
- 30歳未満で死別した場合:5年間の有期給付
- 30歳以上で死別した場合:無期給付
- 男性
- 55歳未満で死別した場合:給付なし
- 55歳以上で死別した場合:60歳から無期給付
このような男女差を解消するための見直しは、男性については2028年4月から、女性については2028年4月から20年かけて段階的に実施される予定です。
改正後の制度概要
- 男女共通
- 60歳未満で死別した場合:原則として5年間の有期給付(ただし、配慮が必要な場合は5年目以降も給付を継続)
- 60歳以上で死別した場合:無期給付(現行制度のまま)
また、今回の改正では「遺族基礎年金」に関する見直しも行われました。
これまでは同一生計の父または母がいて遺族基礎年金を受け取れなかった場合でも、2028年4月からは、こどもが単独で「遺族基礎年金」を受給できるようになります。
6. 年金への上乗せ給付を受け取るために、今確認すべきこと
今回は、日本の年金制度を振り返りながら、現在のシニア世代の年金事情について詳しく見てきました。
年金生活者支援給付金は、条件を満たせば年金に上乗せして受け取れる大切な制度ですが、「申請が前提」となっている点が大きな特徴です。
「自分は対象になるのか」「申請は済んでいるか」をこの機会に一度確認してみることで、将来の収入を増やすことにつながるかもしれません。
厚生労働省年金局の資料によれば、国民年金の平均年金月額は5万9310円、厚生年金(国民年金を含む)は15万289円となっています。
日本の年金制度は2階建て構造であり、現役時代に自営業やフリーランスだった方が受け取る主な年金は国民年金のみです。
一方で、会社員や公務員だった方は国民年金と厚生年金の両方を受け取れます。
現役時代がフリーランスや自営業だった方、あるいは会社員や公務員として働いた期間が短い専業主婦の方などは、将来受け取る年金額が少なくなる傾向があります。
NISAやiDeCo、個人年金保険などを活用して、早めに老後に向けた準備を進めてみてはいかがでしょうか。
また、ご自身の詳しい年金見込額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。
まずは自分が将来いくらくらいの年金を受け取れるのかを把握し、そこから必要な老後資金を計算して準備を始めるのがよいでしょう。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「個人の方の電子申請(年金生活者支援給付金請求書)」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求手続きのご案内リーフレット」
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- LIMO「申請しないとゼロ円【2026年6月15日支給分から増額】年金生活者支援給付金はいくら上乗せ?《老齢・障害・遺族》の条件と手続きまで整理」








