新緑がまぶしい5月下旬を迎え、来月6月の年金支給日を前に将来の生活設計が気になる方も多いのではないでしょうか。特に離婚時の「年金分割」は、老後の生活を支える重要な制度です。
実は今年2026年4月から、この年金分割の請求期限が大きく変更されたことをご存じでしょうか。今回は、厚生労働省の調査結果をもとに、男女別の厚生年金受給額のリアルや、今年4月からの変更点、実際の実施状況について解説します。
1. 【厚生年金】平均月額は全体「約15万円」男女で「月額5.8万円」の格差あり
まずは、現在の年金受給額の実態を見てみましょう。令和6年度末時点の統計によると、「厚生年金保険(第1号)」の老齢年金受給権者における平均年金月額(基礎年金月額を含む)は、全体で15万289円となっています。
これを男女別に比較すると、受給額に大きな差があることが分かります。
- 男性:平均 16万9967円
- 女性:平均 11万1413円
このように、男女間で月に約5万8千円もの差が生じています。これは、過去の働き方の違いや、結婚・出産などを機に女性が扶養に入る(第3号被保険者となる)期間が長かったことなどが影響していると考えられます。こうした夫婦間の年金額の格差を、離婚時に調整するための仕組みが「年金分割」制度です。
2. 【年金分割】今年4月から「2年→5年」請求期限が延長!でも実際の利用は2割にとどまる?
これまで、離婚時の年金分割の請求期限は、原則として「離婚等をした日の翌日から起算して2年以内」と定められていました。しかし、制度の見直しにより、この請求期限が原則「5年以内」へと大幅に延長されました。ただし、この「5年」という新たな期限が適用されるのは、原則として2026年(令和8年)4月1日以後に離婚等をした場合に限られます。同日より前に離婚等をした方については、従来通り「2年以内」のままとなりますので注意が必要です。
また、期限の起算日は離婚した日だけでなく、事実婚関係が解消したと認められる日や、調停等の特例に該当する場合はその確定日となるなど、細かいルールも定められています。
2.1 知っておきたい「年金分割」2つの仕組み。合意分割と3号分割の違い
年金分割には、大きく分けて「合意分割」と「3号分割」の2種類が存在します。
合意分割
婚姻期間中の厚生年金記録が対象です。夫婦間の合意、または裁判手続きによって、最大2分の1の割合まで分割することができます。なお、事実婚関係であっても、一方が他方の被扶養配偶者(第3号被保険者)として認定されていた期間があれば分割の対象となります。
3号分割
平成20年(2008年)4月1日以後の、専業主婦(夫)などの第3号被保険者であった期間のみが対象です。こちらは相手の合意を必要とせず、請求するだけで自動的に厚生年金記録が2分の1ずつ分割されます。
なお、合意分割の請求を行った際、対象期間の中に3号分割の対象期間が含まれている場合は、自動的に3号分割の請求も同時に行われたとみなされます。
2.2 年金分割で「月約3.3万円」増える?実施状況をみる
実際にどのくらい年金分割が行われているのか、令和6年度の統計を見てみましょう。
同年度の離婚件数は18万3840組でしたが、年金分割の実施件数は合計3万5755件(うち離婚分割が2万3383件、3号分割のみが1万2372件)に上りました。離婚件数に対して、実際に年金分割の手続きを行ったのは約2割にとどまります。しかし、年金分割による年金月額の変化を見ると、その影響の大きさが明確に表れています。
離婚分割を行ったケースにおいて、年金を分割した側(第1号改定者)の平均年金月額は、改定前の15万6324円から12万4917円へと、約3万1408円減少しています。
一方、分割を受けた側(第2号改定者)の平均年金月額は、改定前の6万934円から9万4509円へと、3万3575円も増加しました。このデータからも、年金分割が離婚後の経済的な格差を埋めるうえでいかに重要であるかが読み取れます。
※それぞれ異なる対象者の平均値であるため、全体の減少額と増加額は完全には一致しません。
3. 2026年は「共同親権」の導入も。離婚後のライフプランは早めの確認が安心の鍵
今回は、厚生労働省の調査結果をもとに、年金分割制度の変更点や受給額の実態について解説しました。婚姻期間中に夫婦で築いた年金記録は、離婚後の生活を支える大切な「共通の財産」です。
今年2026年4月から請求期限が原則5年に延長されたことで、これからは焦らずにこれからの生活について話し合う時間を確保できるようになりました。実際に年金分割を行ったことで、受給額が月3万円以上増えたというデータもあり、その影響は決して小さくありません。
「私には関係ないかも」と思わずに、将来の自分の生活を守るための大切な権利として、制度の中身を正しく知っておくことが大切です。
なお、今年4月からは年金だけでなく、離婚時の親権についても大きな法改正があり、従来の単独親権に加えて「共同親権」も選択できるようになりました。子どもの養育や老後の年金など、離婚時に決めるべき重要なルールが大きく変化している今だからこそ、最新の情報を正しくアップデートしておきたいですね。
まずはご自身の年金加入記録を確認するなど、小さな一歩から、これからの安心で前向きなライフプランを考えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- e-Gov法令検索「厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第七十八条の二」
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕」
- 厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「離婚時の年金分割」
- 政府広報オンライン「離婚後の養育に関するルール変更」
村岸 理美