いよいよ来週の6月15日(月)に迫った2026年度(令和8年度)の公的年金の初回支給日。物価高などを背景に年金額がプラス改定され、今年4月・5月分として初めて増額された年金が口座に振り込まれます。

さらに、年金受給者の生活をサポートする「年金生活者支援給付金」も増額の対象となっていることはご存じでしょうか?

この給付金は、一定の所得要件などを満たすことでベースの基礎年金に恒久的に上乗せされる心強い制度ですが、実は「自分から申請書類を提出しないと、1円も受け取ることができない」という落とし穴があります。

本記事では、この年金生活者支援給付金の仕組みや2026年度の給付基準、対象となる方の条件、もらい損ねを防ぐための手続き方法まで詳しく解説します。

公的年金だけで生活するシニアのリアルな割合もデータで確認しながら、インフレに負けない家計防衛のポイントを押さえていきましょう。

1. 年金生活者支援給付金の概要

年金生活者支援給付金制度は、年金を受給されている方の暮らしをサポートする目的で2019年に始まりました。

支給の条件を満たす対象者には、2カ月に1度、公的年金の支給日に合わせて、年金とは別に給付金が支給されます。

年金生活者支援給付金制度について1/8

年金生活者支援給付金制度について

出典:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

この給付金は3種類に分かれており、受け取っている基礎年金に応じて「老齢」「障害」「遺族」のいずれかの年金生活者支援給付金が支給されます。

つまり、それぞれの基礎年金を受給している方で、所得などの要件を満たした場合に、この給付金の対象となる仕組みです。

2. 年金生活者支援給付金を受け取るための条件

ここでは、年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な支給要件について、詳しく見ていきましょう。

2.1 障害・遺族年金生活者支援給付金の対象者

「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受給していることが前提です。

その上で、前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。

ここで重要なのは、所得の計算には障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれないという点です。

また、扶養しているご家族の人数に応じて、所得の基準額が引き上げられることも覚えておくとよいでしょう。

2.2 老齢年金生活者支援給付金の対象者

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年金生活者支援給付金制度について

出典:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

一方で、老齢年金生活者支援給付金は、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 65歳以上で、老齢基礎年金を受給している
  • 同じ世帯の全員が、市町村民税非課税である
  • 前年の公的年金などの収入とその他の所得の合計額が、生年月日に応じた基準額(昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円)以下である

老齢年金生活者支援給付金は、ご本人の所得だけでなく世帯全体の状況も要件に含まれる点に注意が必要です。こちらの判定においても、障害年金や遺族年金などの非課税収入は所得に含まれません。

また、所得が基準額をわずかに超えたために給付の対象外となる方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という仕組みも用意されています。

この補足的給付金の対象となるのは、所得の合計額が「昭和31年4月2日以降生まれの方で80万9000円を超え90万9000円以下」、「昭和31年4月1日以前生まれの方で80万6700円を超え90万6700円以下」の方です。

3. 年金生活者支援給付金の平均月額は?最新データで解説

厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、実際に支給されている年金生活者支援給付金の平均月額を確認してみましょう。

同資料によると、2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金で4146円、障害年金生活者支援給付金で5727円、遺族年金生活者支援給付金で5228円となっています。

※2025年3月時点で認定されている方の平均給付額です。

さらに、年齢別の平均額も見ていきます。

3.1 年齢で見る老齢年金生活者支援給付金の平均額

  • 70歳未満:4905円(対象者数:43万9628人)
  • 70~74歳:4374円(対象者数:56万1362人)
  • 75~79歳:4092円(対象者数:85万9446人)
  • 80~84歳:3936円(対象者数:95万453人)
  • 85~89歳:3989円(対象者数:82万8270人)
  • 90歳以上:4045円(対象者数:86万5282人)

3.2 年齢で見る障害年金生活者支援給付金の平均額

  • 30歳未満:5692円(対象者数:26万6276人)
  • 30~39歳:5668円(対象者数:31万6202人)
  • 40~49歳:5655円(対象者数:37万1772人)
  • 50~59歳:5671円(対象者数:46万8876人)
  • 60~69歳:5749円(対象者数:38万4626人)
  • 70~79歳:5880円(対象者数:26万4423人)
  • 80歳以上:6033円(対象者数:10万4991人)

3.3 年齢で見る遺族年金生活者支援給付金の平均額

  • 20歳未満:4190円(対象者数:5687人)
  • 20~29歳:5310円(対象者数:529人)
  • 30~39歳:5310円(対象者数:7881人)
  • 40~49歳:5310円(対象者数:3万4072人)
  • 50~59歳:5310円(対象者数:2万7828人)
  • 60歳以上:5310円(対象者数:1710人)

4. 年金生活者支援給付金の申請方法

この章では、年金生活者支援給付金の請求手続きについてご説明します。

すでに公的年金を受け取っている方で、新たに給付金の支給対象となった場合には、日本年金機構から請求書を兼ねたお知らせが郵送されます。

4.1 すでに基礎年金を受給している場合の手続き

年金生活者支援給付金請求書の手続きフロー6/8

年金生活者支援給付金請求書の手続きフロー

出典:日本年金機構「年金生活者支援給付金手続きのご案内リーフレット」

  • 毎年9月上旬から順次、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届きます。
  • 2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構からこの請求書が届いた方は、電子申請も可能です。
  • 電子申請を利用しない場合は、必要事項を記入し、切手を貼ってポストへ投函します。

なお、支給要件に該当するかどうか確認が必要な方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と「所得状況届」が送られてきます。

次に、これから年金そのものを請求する方の流れを見てみましょう。

4.2 これから老齢基礎年金を請求する場合の手続き

老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ7/8

老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ

出典:日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」

  • 65歳になる3カ月前に届く「年金請求書(事前送付用)」に、給付金の請求書が同封されています。
  • 必要事項を記入の上、年金の受給を開始する年齢の誕生日前日以降に、年金の請求書と一緒に年金事務所へ提出してください。

※障害年金または遺族年金生活者支援給付金の対象者で、初めて基礎年金を請求する方は、給付金の請求書が自動では送付されません。年金の請求手続きと同時に、ご自身で年金事務所や市区町村の窓口にて給付金の請求手続きを行う必要がありますのでご注意ください。

4.3 給付金はいつ支給される?

年金生活者支援給付金は、公的年金と同様に偶数月の15日に支給されます。もし15日が土日や祝日にあたる場合は、その直前の金融機関営業日に前倒しで支給されます。

例えば、10月に支給されるのは8月分と9月分の2カ月分です。

年金と同じ受取口座に支給されますが、通帳には年金と給付金がそれぞれ別の項目として記録されます。

5. 年金だけで生活する高齢者世帯のリアルな割合

高齢者世帯のうち、公的年金だけで生活している世帯は、実はそれほど多くありません。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、収入が公的年金・恩給のみという世帯は全体の43.4%でした。

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成8/8

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成

出典:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 総所得のうち公的年金・恩給が100%の世帯:43.4%
  • 総所得のうち公的年金・恩給が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 総所得のうち公的年金・恩給が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 総所得のうち公的年金・恩給が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 総所得のうち公的年金・恩給が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 総所得のうち公的年金・恩給が20%未満の世帯:4.0%

このデータから、残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外にも何らかの所得を得て生活費をまかなっていることがわかります。

公的年金だけで生活するのが難しい可能性も考え、早めに老後の生活設計を立てておくことが大切だといえるでしょう。

6. まとめ

6月中旬は、増額された年金額が初めて振り込まれると同時に、ご自宅に『年金額改定通知書』や『年金振込通知書』、さらには各種税金の決定通知書などが届く重要なタイミングです。

今回解説した「年金生活者支援給付金」は、要件を満たした方にのみ日本年金機構から案内が届きます。緑色やうす緑色の封筒に入った請求書(ハガキ)を見落とし、「自分には関係ない」「手続きが面倒でよくわからない」と放置してしまうと、もらえるはずだった大切なお金を受け取ることができません。

データが示す通り、年金だけで生活をやり繰りしているシニア世帯は決して少なくありません。物価高による生活費の負担が増す今こそ、まずは手元に届いた郵便物を確実に開封し、申請漏れを防ぐことが生活防衛策となります。

ご自身の分はもちろん、離れて暮らす親御さんや身近な高齢者の方とも情報共有し、大切な権利をしっかりと守っていきましょう。

参考資料