超高齢社会を支える公的介護保険制度において、利用者の経済力に応じた「公平な負担」への見直しが加速しています。一定以上の所得がある高齢者の自己負担割合は最大3割まで引き上げられており、さらに国は所得だけでなく「預貯金などの資産」も加味した負担ルールの拡大を検討しています。

2026年5月27日に開催された厚生労働省の検討会では、自治体や金融機関の事務負担を軽減するためのデジタルインフラ構築に向けた具体的な議論が始まりました。本記事では、現在の自己負担割合の基準や保険料の推移、そして今後の資産把握を巡る政府の動きについて解説します。

1. 【公的介護保険】65歳以上で自己負担「3割」になるのはどんな人?

介護保険は「高齢者の介護を社会全体で支え合う」ため、2000年に始まった制度です。単なる身の回りの世話にと則らず「高齢者の自立支援」を理念としています。

1.1 「65歳以上」と「40~64歳」で異なるサービス利用の要件

介護保険制度の被保険者(加入者)1/3

介護保険制度の被保険者(加入者)

出所:厚生労働省「介護保険制度の概要」

対象者は以下の2種類に分かれますが、サービスを受けられる要件が異なります。

  • 第1号被保険者(65歳以上):原因を問わず要介護・要支援認定で利用可能。
  • 第2号被保険者(40歳〜64歳の医療保険加入者):末期がんや関節リウマチなど、加齢に起因する「特定疾病」による場合に限定。

1.2 所得に応じた「1〜3割」の自己負担割合。40〜64歳は一律1割負担

介護保険制度における利用者負担2/3

介護保険制度における利用者負担

出所:厚生労働省「介護保険制度の概要」

要介護認定を受けると、原則として費用の1割の自己負担でサービスを利用できますが、一定以上の所得がある人は2割または3割負担となります。

なお、この所得に応じた負担増のルールは65歳以上の「第1号被保険者」が対象であり、40歳〜64歳の「第2号被保険者」は所得に関わらず一律1割負担となります。

65歳以上の人(単身の場合)の自己負担割合の目安は以下の一覧表の通りです。

  • 1割負担:年金収入など280万円未満(本人の合計所得金額160万円未満)
  • 2割負担:年金収入など280万円以上(本人の合計所得金額160万円以上)
  • 3割負担(最高負担):年金収入など340万円以上(本人の合計所得金額220万円以上)

なお、特別養護老人ホームなどの施設サービスを利用する際は、これらの介護費用とは別に、居住費や食費などの日常生活費も原則として自己負担となります。

2. 【公的介護保険】なぜ「預貯金」把握が進められているのか?

現在、政府は全世代型社会保障の構築に向け、所得だけでなく資産も総合的に勘案した「能力に応じた公平な負担」を求めています。その一環として、利用者の預貯金など資産状況の把握が進められています。

すでに、施設サービスで所得が一定基準以下の人の食費・居住費を補助する「補足給付」においては、先行して利用者の預貯金額等を確認する実務が行われています。

補足給付について3/3

補足給付について

出所:厚生労働省「補足給付の現状について」

さらに社会保障審議会・介護保険部会では、サービスを「2割負担」とする対象者の拡大を検討中であり、その際の負担緩和措置として「所得が基準を超えていても、預貯金が一定額未満であれば1割負担に据え置く」という新ルールの導入も議論されています。

しかし、資産を広く把握するには、自治体が金融機関へ1件ずつ書面等で照会している現行のアナログな手続きが、双方にとって大きな事務負担になっているという課題がありました。

そこで政府は、マイナンバーの活用検討やデジタル庁を中心とした預貯金照会のオンライン化を推進し、正確性を担保しながら手続きを大幅に効率化・省力化する環境づくりに乗り出しています。先述の2026年5月27日の厚生労働省の検討会は、まさにこの事務負担軽減に向けた、実務レベルの具体的なデジタルインフラ構築を話し合う契機となっています。

3. まとめにかえて

公的介護保険制度は、急速な高齢化に伴い、私たちの負担が年々増大する局面を迎えています。実際に65歳以上の保険料は、2000年の制度開始時の全国平均「月額2911円」から、現在は「月額6225円」へと約2倍にまで上昇しました。さらに現役世代である40歳〜64歳の人も、医療保険とセットで介護保険料を納めており、全世代で負担が重くなっているのが現状です。

このような財政の逼迫を背景に、政府は所得だけでなく預貯金などの資産も加味した「能力に応じた公平な負担」への見直しを進めています。2026年5月に開催された検討会が示す通り、今後はデジタル技術の活用によって資産の把握がさらに効率化・実効化していく見込みです。

利用者負担が最大3割まで引き上げられるなど、今後は国からの給付だけに頼り切ることが難しい時代へと移行していきます。だからこそ、現役世代のうちから老後の介護リスクや自己負担増を現実的な問題として捉え、計画的な資産形成を進めることが重要です。民間の介護保険への加入を検討するなど、今からできる「自助努力」による備えを始めておくことが、将来の安心へとつながる賢明な一手と言えます。

参考資料

村岸 理美