6月15日は多くの年金受給者にとって待ちに待った年金振込日です。

2026年度は国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%引き上げられ、これで4年連続の増額改定となりました。

一方で、「実際にどれくらいの人が月15万円以上の年金を受け取っているのか」「自分の年金は平均と比べて多いのか少ないのか」と気になる方も多いでしょう。物価高が続くなか、年金収入の実態への関心は高まっています。

今回は、公的年金制度の基本を確認しながら、厚生年金受給者の受給額分布や、2025年成立の年金制度改正法で注目された「106万円の壁」の見直しについて解説します。

1. 公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造

日本の公的年金制度は、土台となる「国民年金(基礎年金)」に加え、上乗せ部分として「厚生年金」がある仕組みで、その構造から「2階建て」と呼ばれています。

ここでは、それぞれの制度の特徴を整理していきます。

【1階部分】国民年金(基礎年金)

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる

※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円

【2階部分】厚生年金

  • 加入対象:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※3)で働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
  • 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

厚生年金は、国民年金に上乗せして加入するため、加入状況や収入によって将来受け取る年金額にも違いが生まれます。

また、公的年金は物価や賃金の変化を踏まえ、毎年度見直しが行われています。

※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

2. 2026年度の年金額は「4年連続」の引き上げ

公的年金額は、物価や現役世代の賃金変動を踏まえて毎年改定されます。

2026年度は、国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられ、4年連続のプラス改定となりました。

2026年度の年金額は以下のとおりです。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分 ※1
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

国民年金のみの場合、満額(※3)でも月額で約7万円となっており、繰下げ受給(※4)の上限年齢である75歳まで受給を待機したとしても、月額13万円には届きません。

※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%。

3. 厚生年金で「月15万円以上」受給する人はどれくらい?

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均月額は15万289円です。

なお、この金額には国民年金(老齢基礎年金)の部分も含まれています。

受給額ごとの人数分布は次のとおりです。

3.1 厚生年金の「受給額ごとの受給権者数」を見る

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

月額15万円以上の厚生年金を受け取っている人は全体の49.8%で、半数には届いていません。

さらに、厚生年金を受給していない人も含めると、その割合はより低くなります。

4. 「106万円の壁」見直しへ。2025年成立の年金制度改正法

2025年6月13日に成立した年金制度改正法には、パートやアルバイトなど短時間労働者に関係する「106万円の壁」の見直しが盛り込まれました。

4.1 「年収106万円の壁」の概要とポイント

「106万円の壁」は、短時間労働者が年収106万円を超えると、健康保険や厚生年金の扶養から外れ、自身で社会保険料を支払う目安となるラインです。

社会保険料負担により手取り額が減るため、基準を超えないよう就業時間を調整する「働き控え」の要因の一つとされてきました。

また、社会保険の加入対象企業は段階的に広がっており、2024年10月からは「従業員51人以上」の企業が対象です。

今回の制度改正では、「賃金要件の3年以内撤廃」と「企業規模要件の10年かけた段階的撤廃」が決定しました。

4.2 短時間労働者の社会保険加入条件はどう変わる?

2025年7月時点で、パートタイムなど短時間労働者が社会保険へ加入するには、以下5条件を満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2か月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)

今回の見直しにより、4つ目の「賃金要件」と5つ目の「企業規模要件」が廃止されます。

いわゆる「106万円の壁」は、最低賃金の動向を見ながら3年以内に撤廃される予定です。

また、社会保険の適用対象企業は10年かけて段階的に拡大されます。

5. 年金額の実態と制度改正を知り、老後資金を考える

6月15日の年金振込日からは、2026年度の増額改定後の年金額が反映されます。

国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%の引き上げとなりましたが、受給額には加入期間や現役時代の収入によって大きな差があります。

特に「月15万円(年額180万円)」というラインは、多くの受給者にとって一つの目安となります。厚生年金の受給額分布を見ることで、自身の年金額がどの位置にあるのか把握しやすくなるでしょう。

また、2025年成立の年金制度改正法では「106万円の壁」の見直しが進められています。将来の年金額にも関わる重要な制度変更となるため、現役世代も無関係ではありません。

年金振込日をきっかけに、自身の年金見込み額や老後資金計画を改めて確認してみてはいかがでしょうか。

参考資料