汗ばむ陽気が増えてきた5月下旬、私たちの将来の暮らしに関わる重要な話し合いが国でスタートしました。厚生労働省が開始した、介護保険の利用者の預貯金などを正確に把握するための検討について、気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は、2026年5月27日に開催された第1回検討会の内容をもとに、介護保険の基本的な仕組みから、今後の負担がどう変わる可能性があるのかについて分かりやすく解説します。

1. 【公的介護保険】なぜ利用者の「預貯金」把握が進められているのか?

介護保険制度において利用者の預貯金など資産状況の把握が進められている背景には、全世代型社会保障の構築に向け、所得だけでなく資産も総合的に勘案した「能力に応じた公平な負担」を求める国の方針があります。現在、介護保険の施設サービスで所得が一定基準以下の方の食費・居住費を補助する「補足給付」において、先行して利用者の預貯金額等を確認する実務が行われています。

補足給付について1/3

補足給付について

出所:厚生労働省「補足給付の現状について」

さらに国(社会保障審議会・介護保険部会)では、サービスを「2割負担」とする対象者の拡大を検討中であり、その際の負担緩和措置として「所得が基準を超えていても預貯金が一定額未満であれば1割負担に据え置く」という新しい仕組みの導入も併せて議論されています。しかし、こうした所得と資産の双方を見る公平なルールを広く浸透させるには、自治体が金融機関へ1件ずつ書面等で照会している現行のアナログな手続きが、双方の大きな事務負担になっているという大きな課題がありました。

そこで政府は、マイナンバーの活用検討やデジタル庁を中心とした預貯金照会のオンライン化を進め、正確性を担保しながら手続きを大幅に効率化・省力化する環境づくりに乗り出しています。2026年5月27日に開催された厚生労働省の検討会は、まさにこの事務負担軽減に向けた、実務レベルの具体的なデジタルインフラ作りを話し合い始めた場と言えます。

2. 【公的介護保険】最高3割!単身で年金年収340万円の人「自己負担割合」はどうなる?

介護保険は、「高齢者の介護を社会全体で支え合う」ことを目的として、2000年にスタートした制度です。昔は家族が介護を担うのが一般的でしたが、高齢化や核家族化が進み、家族だけで支えることが限界になった背景から生まれました。

2.1 《対象者》65歳以上(第1号被保険者)と40~64歳(第2号被保険者)

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介護保険制度の被保険者(加入者)

出所:厚生労働省「介護保険制度の概要」

制度の大きな理念は、単なる身の回りの世話にとどまらず、「高齢者の自立を支援する」ことです。対象となるのは、65歳以上の人(第1号被保険者)と、40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)です。ただし、サービスを受けられる要件は年齢で異なり、65歳以上は原因を問わないのに対し、40歳〜64歳の人は末期がんや関節リウマチなど、加齢に起因する「特定疾病」による場合に限定されます。

2.2 《自己負担割合》原則「費用の1割」一定以上の所得「1〜3割」

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介護保険制度における利用者負担

出所:厚生労働省「介護保険制度の概要」

介護が必要と認定されると、原則としてかかった費用の1割を自己負担するだけでサービスを受けられますが、一定以上の所得がある人は2割または3割負担となります。

なお、この所得に応じた2割・3割負担のルールは65歳以上の「第1号被保険者」が対象で、40歳〜64歳の「第2号被保険者」は所得に関わらず一律1割負担となります。

具体的には、第1号被保険者の本人の合計所得金額が160万円以上で単身世帯の年金収入などが280万円以上の場合は2割負担です。さらに所得が高く、本人の合計所得金額が220万円以上かつ、単身世帯の年金収入などが340万円以上になる場合は最高3割負担が適用される仕組みになっています。

また、特別養護老人ホームなどの施設サービスを利用する際は、これらの介護費用とは別に、居住費や食費などの日常生活費も原則として自己負担(※今回の検討会で把握が議論されている部分)となります。

3. 【公的介護保険】65歳以上の介護保険料2000年「月2911円」→現在「月6225円」約2倍に

介護保険にかかる費用は、半分を税金(公費)、もう半分をみんなから集める「保険料」で賄う仕組みになっています。この保険料の決まり方や支払い方法は、年齢によって異なります。

3.1 65歳以上(第1号被保険者)の保険料は市区町村ごとに設定され原則「年金天引き」

まず、65歳以上の人の保険料は、お住まいの市区町村ごとに基準額が設定され、個人の所得段階に応じて決まります。支払いは原則として年金からの天引きです。高齢化の影響で利用者が増えているため保険料は年々上昇しており、制度開始時は全国平均で月額2911円でしたが、現在(令和6〜8年度)は6225円になっています。

3.2 40歳〜64歳(第2号被保険者)の保険料は「医療保険」とセットで徴収

一方、40歳から64歳までの人は、自分が加入している医療保険(職場の健康保険や国民健康保険など)の保険料とひとまとめにして徴収されます。例えば、多くの中小企業が加入する「協会けんぽ」の場合、毎月のお給料(標準報酬月額)に一定の「介護保険料率」をかけて計算されます。

4. 【公的介護保険】今後の行方に注目、今からできる備えをはじめよう

今回は、厚生労働省の新たな検討会の内容をもとに、介護保険の預貯金把握の動きや制度の基本について解説しました。「預貯金の把握」と聞くと少し身構えてしまいますが、これは制度を長持ちさせ、本当に困っている人へ支援を届けるための大切な話し合いです。

高齢化が進む日本において、介護保険の負担や給付のバランスが見直されるのは避けられない流れと言えます。だからこそ、私たちは「ひとごと」ではなく、自分や家族の将来に関わる「自分事」として捉える必要があります。

現役世代のうちから、最新の制度変更のニュースにアンテナを張っておくことが大切です。公的な介護保険の仕組みを正しく理解していれば、将来のマネープランも格段に立てやすくなります。

過度に不安がる必要はありませんが、これを機に家族で老後の暮らしや介護費用について話し合ってみるのも良いですね。これからの安心な暮らしを守るために、今後の国の議論の行方に引き続き注目していきましょう。

参考資料

村岸 理美