令和8年度から年金額が引き上げられ、正社員として33年働いた女性の年金目安は月額約13.5万円となります。

しかし、この金額だけで老後の生活費をすべてカバーするには、今からの計画的な備えが必要です。背景には、男性に比べ女性の賃金が約24%低いという構造的な課題も影響しています。本記事では、働き方が将来の受給額に与える影響と、今からできる対策を分かりやすく解説します。

1. 【2026年度の概算額】正社員として33年働いた女性の年金目安「月額約13.5万円」

現役時代の働き方や収入によって、受け取れる年金額にどれほど差が出るのでしょうか。厚生労働省の「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」から、会社員として長く貢献してきた女性のケースを見てみましょう。

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】1/3

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

1.1 ケース①:女性・厚生年金期間中心(20年以上)

年金月額(見通し)

  • 令和7年度:13万2117円
  • 令和8年度:13万4640円(前年度比 +2523円)

経歴の前提条件

  • 平均厚生年金期間:33.4年
  • 平均収入:35.6万円(※賞与含む月額換算。年収換算で約427万円)

令和8年度の内訳

  • 基礎年金:7万1881円
  • 厚生年金:6万2759円

正社員として約33年間、年収換算で約427万円を維持してきた女性(ケース①)の場合、月額は約13.5万円です。令和7年度の13万2117円から2523円の増額となりますが、この金額だけで日々の生活費や住居費のすべてをカバーするのは工夫が必要な場合もあり、今から自助努力での備えも視野に入れる必要がありそうです。

1.2 ケース②:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)

《年金月額》令和7年度:6万636円 → 令和8年度:6万1771円

  • 平均厚生年金期間:6.5年
  • 平均収入:25.1万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 5万3119円/厚生年金 8652円

1.3 ケース③:女性・国民年金(第3号被保険者期間)中心(20年以上)

《年金月額》令和7年度:7万6810円 → 令和8年度:7万8249円

  • 平均厚生年金期間:6.7年
  • 平均収入:26.3万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 6万9016円/厚生年金 9234円

これらの例を見ても分かるように、厚生年金の加入期間や現役時代の平均収入によって、将来の受給額は大きく変動します。物価や賃金の変動に伴う改定により、令和8年度は各ケースとも増額となる見通しですが、自身のライフコースがどのパターンに近いかを知っておくことは、老後資金を計画する上で重要になります。

2. 【男女の賃金ピーク】男性55〜59歳「44.4万円」女性45〜49歳「29.8万円」

正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)2/3

正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)

出所:内閣府男女共同参画局「女性版骨太の方針2025」

将来、ケース①のような年金額を確保するためには、厚生年金の加入期間に「空白」を作らず、キャリアを継続させることが鍵となります。

2.1 《男女の賃金格差》

年金の「報酬比例部分」を左右するのは現役時代の賃金です。しかし、令和6年の調査では依然として厳しい格差が浮き彫りになっています。

  • 男女の賃金差: 男性平均36万3100円に対し、女性は27万5300円。格差は約24%存在します。
  • 賃金のピーク: 男性は55〜59歳で44万4100円まで伸びるのに対し、女性は45〜49歳の29万8000円がピークとなり、上昇幅に大きな開きがあります。

この差の背景には、女性の平均勤続年数(10.0年)が男性(13.9年)より短いことも影響しています。年金額の底上げに向けては、個人のキャリア選択だけでなく、社会全体での賃金体系の見直しや、多様な働き方を支える環境整備が進むことが期待されます。

3. 【都道府県ランキング】地方自治体「役職別」女性割合と《ガラスの天井》

地方自治体の公表データを見ると、役職の段階が上がるにつれて女性の割合が減少する「ガラスの天井」の存在がはっきりと浮き彫りになります。

3.1 都道府県における役職別の女性割合ランキング(各上位5団体)

本庁係長相当職

  • 1位:香川県(44.8%)
  • 2位:石川県(40.6%)
  • 3位:福井県(39.3%)
  • 4位:沖縄県(38.5%)
  • 5位:徳島県(37.9%)

本庁課長相当職

  • 1位:福井県(27.9%)
  • 2位:福岡県(27.8%)
  • 3位:徳島県(26.0%)
  • 4位:沖縄県(24.8%)
  • 5位:広島県(23.6%)

本庁部局長・次長相当職

  • 1位:沖縄県(21.7%)
  • 2位:富山県(20.2%)
  • 3位:兵庫県(16.8%)
  • 4位:茨城県(16.5%)
  • 5位:福井県(14.0%)

このように、係長クラスまでは一定の女性登用が進んでいるものの、組織の意思決定に関わる上位役職へ進む過程にはまだ課題が残されているのが現状です。

賃金や将来の年金格差を和らげていくためにも、女性がリーダー層として継続してキャリアを築けるような、組織ぐるみのサポートが今後ますます重要になってくるでしょう。

4. まとめにかえて

令和8年度の年金改定で受給額は増額傾向にあるものの、ライフコースによる格差や老後資金の不足という現実的な課題が見えてきました。現役時代の働き方や収入は、将来受け取る年金額に直結しています。まずは「ねんきん定期便」を確認し、ご自身の将来の受給見込みを正しく把握することから始めましょう。

ライフイベントに寄り添いながら「細く長くキャリアを続ける」ことも、立派な老後資金対策になります。日々の主体的な選択の積み重ねが、将来のあなたを支える確かな経済基盤をつくっていきます。

参考資料

村岸 理美