老後の収入を考える際、厚生年金や国民年金の「平均受給額」を参考にする方は多いでしょう。

しかし、平均年金月額は受給者全体の金額を集計した数値であり、そのまま自分の受給額になるわけではありません。

橋本 優理

筆者は約300組のお客様のライフプランニングに携わってきましたが、老後を不安に思う方は意外と多いものです。平均年金額を見て安心する方もいれば、逆に不安になる方もいますが、実際にはご自身の受給額を具体的に確認しないことには判断できません。年金だけでなく、寿命や認知症、終活まで含めて、老後全体を見渡しながら準備を考えていきましょう。

また、老後が長期化するなかでは、年金や資産形成だけでなく、認知症や医療・介護への備え、資産などを整理する終活についても考えておくことが大切です。

本記事では、年金額を左右するポイントや厚生年金の受給額分布、日本人の平均寿命、認知症と軽度認知障害の推計、終活やエンディングノートの準備状況を確認します。

1. この記事の3つのポイント

  •  年金額は加入期間・現役時代の給与・保険料納付期間で個人差が大きく、「平均額=自分の受給額」ではない
  •  厚生年金受給者のうち月10万円未満は19.0%、月20万円以上は18.8%と、月20万円未満が全体の8割を超える
  •  65歳以上の約3人に1人が認知症またはMCIと推計され、エンディングノートの実行率は年代が上がるほど下がる傾向

2. 「平均年金額=自分の年金額」ではない?受給額が変わる3つのポイント

老後に受け取れる年金額を考える際、平均年金月額は一つの目安になります。

ただし、平均額は現在の受給者全体を集計した数値であり、すべての人が同じ金額を受け取れるわけではありません。

実際の年金額を左右する主なポイントは、次の3つです。

  • 厚生年金に加入していた期間
  • 現役時代の給与や賞与の金額
  • 保険料を納めた期間

国民年金は保険料が一律で、40年間(480カ月)納付すると満額の老齢基礎年金を受け取れます。未納期間などがあれば、その分だけ受給額は少なくなります。

一方、厚生年金は加入期間に加え、現役時代の給与や賞与に応じて納めた保険料が年金額に反映される仕組みです。そのため、同じ厚生年金の受給者でも、働き方や収入によって受給額に差が生じます。

平均年金月額だけで自身の老後収入を判断せず、個人差があることを踏まえて受給状況を見ることが大切です。

橋本 優理

厚生年金の加入期間や現役時代の収入が違えば、同じ「厚生年金受給者」でも金額は大きく変わります。ライフプランニングの現場でも、「平均だから自分もそのくらいだろう」と考えていた方が、実際に試算してみると想定より少なかったというケースは珍しくありません。

では、厚生年金の受給者では「月10万円未満」と「月20万円以上」のどちらが多いのでしょうか。

3. 厚生年金は「月10万円未満」と「月20万円以上」のどちらが多い?

厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布を見ると、「月20万円以上」を受け取る人よりも、「月10万円未満」の人の割合がわずかに高くなっています。

※ここで紹介するのは、会社員など民間の事業所で働いていた人が受給する「厚生年金保険(第1号)」の年金額で、国民年金部分も含まれています。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)1/3

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

3.1 厚生年金の受給額を比較

  • 月額10万円未満:19.0%(約5.3人に1人)
  • 月額20万円以上:18.8%(約5.3人に1人)

両者の差はわずかですが、「月20万円以上」の受給者よりも、月額が10万円に満たない人の方が多いことが分かります。

また、これらは厚生年金の受給者を対象とした割合であり、国民年金のみを受け取っている人まで含めると「月10万円未満」の割合はさらに高くなると考えられます。

厚生年金の平均月額は15万円台ですが、実際の受給額には個人差があります。月額20万円未満の人は全体の8割を超えており、平均額だけで自分の老後収入を判断するのは難しいでしょう。

年金生活が始まってから想定より受給額が少ないことに気付く事態を避けるためにも、現役時代から自身の受給見込額を確認しておくことが大切です。公的年金だけに依存せず、iDeCoやNISAなどを利用して老後資金を準備することも、選択肢の一つとなります。

橋本 優理

「月10万円未満」が19.0%、「月20万円以上」が18.8%と、実はわずかに月10万円未満の方が多いという結果は、意外に感じる方も多いのではないでしょうか。平均額だけを見て「自分もそのくらいはもらえるだろう」と考えるのは、少し危険かもしれません。