2. 半導体株の宿命「シリコンサイクル」とAIの波
東京エレクトロンの株価や業績を理解する上で避けて通れないのが、「シリコンサイクル」という概念です。
シリコンサイクルとは、半導体業界に特有の「好況と不況の波」のことです。半導体はあらゆる電子機器に使われるため、世界的な景気や新しいテクノロジーの普及に合わせて需要が急増します。
しかし、需要に応えるために各社が一斉に工場を建てて生産を増やすと、今度は供給過剰になり、価格が下落して不況に陥ります。このサイクルが数年単位で繰り返されるのが半導体業界の宿命です。
インタビュアーから「今はその波の中でどのような位置にいるのか」と尋ねられると、泉田氏は現在の状況を単なるシリコンサイクル以上の「ボーナスステージ」だと表現しました。
泉田氏の分析によれば、近年は大きな波が立て続けに押し寄せています。まず、コロナ禍によって人々の生活がデジタル化し、PCやデータセンター向けの半導体需要が急増しました。
次に、ChatGPTなどに代表されるAIの登場により、AIを学習させるための半導体需要が生まれました。そして現在は、各社がAI開発競争に勝つために設備投資を加速させる「AI投資過熱」の波が来ています。
2.1 AI投資は一過性か?次に控える「フィジカルAI」の需要
投資家が最も気にするのは、「このAIの波(ボーナスステージ)はいつまで続くのか」という点です。設備投資が一巡すれば、半導体製造装置の需要も急減してしまうのではないかという懸念があります。
これに対し、泉田氏はAIの進化が次のステージへ向かうことで、新たな需要が生まれ続ける可能性を指摘します。現在主流のパソコンやサーバー上で動くAIだけでなく、今後は実社会の物理的な空間で稼働する「フィジカルAI」の普及が鍵を握るといいます。
その代表例が自動運転技術です。アメリカでシェアを拡大しているGoogle系の無人タクシー「Waymo(ウェイモ)」などを引き合いに出し、泉田氏は次のように語ります。
「自動運転車が無尽蔵に走り出して、全部データを処理しなきゃいけなくなるって言ったら、今用意してるものは足りないじゃない」
現実世界の膨大な映像やセンサーデータを瞬時に処理するためには、現在とは比較にならないほどの計算能力が必要になります。
AIでできることが増えれば増えるほど、「あれもできる、これもできる」と想像力が膨らみ、結果として新たなデータセンターや半導体のキャパシティが求められるようになります。
設備投資の波には当然「山と谷」がありますが、AIが社会インフラとして普及していく初期段階にある現在、需要の波が完全に逆回転してしまうことは考えにくいと泉田氏は分析しています。
【動画で解説】東京エレクトロン、なぜ減益でも株価は強い?
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日