シルクロードの中央に位置するウズベキスタンでは、最近、ホットな話題は国営企業の民営化です。一方、日本からは連日、かんぽ生命の「不正販売」のニュースが聞こえてきます。そのような中で、日本郵政という日本の国営企業の不祥事からどんな教訓が得られるだろうかという疑問が湧いてきました。

今回は、日本郵政の事例を参考にし、ウズベキスタンの経済移行プロセスの中で取り組まれる「国営企業の民営化」をどうしたら成功に導けるか考えてみたいと思います。

国営企業の民営化に向けて始動するウズベキスタン政府

タシケント証券取引所には609社の上場企業がありますが、そのうち政府が182社(株式発行額では証券市場全体の83%)の大株主となっています。証券市場全体の時価総額は約18億ドル(GDP比5%)とわずかで、売買も活発ではありません。

上場企業の時価総額トップ20社には13社の銀行がランクインしていますが、銀行セクターでも国有銀行13行が市場を独占し、銀行セクター全体の総資産の85%を占めています。

組織的には復興開発基金や国家資産管理庁があり、それらが国営企業の株主となっています。ちなみに復興開発基金はウズベキスタン国家財政の特別勘定ですので、日本の財政投融資に似ています。

2017年以降、ミルジヨーエフ大統領が市場経済化を進めるべく構造改革を行っていますが、今、大きな話題は国営企業の民営化です。

最近の動きとしては、政府が現実的な民営化プランを策定し、先日、国営企業33社の政府保有株の放出を打ち出しました。対象のセクターは農業、建設、建設資材、電力、運輸、水力発電、貿易等、多岐にわたっています。

銀行セクターでも、政府から国家資産管理庁に対して5銀行の政府保有株を一部売却せよとの指示が下りたようです(出所:7月19日付けタシケント・タイムズ紙)。

かんぽ生命の「不正販売」から見える組織の問題

かんぽ生命の「不正販売」と言われている問題は具体的にどんな事象でしょうか。新聞報道によれば、次のようなケースがあった可能性があります。

  • 保険料の二重払い:新契約を締結してから6カ月以内に旧契約を解除すると乗り換えと見なされ営業成績にカウントされないので、6カ月が経過した後に解約させた。
  • 無保険:旧契約の解約から3カ月以内に新契約を結んだ場合は乗り換えと見なされるので、3カ月経過してから新契約を結ばせた。当該3カ月間は無保険状態。
  • 無駄な新契約:特約の切り換えで済むのに新契約を結ばせた。

当面、経営陣が2,900万件の全契約を対象に手紙や訪問などで契約内容の確認を行う方針を打ち出していますので、事実がどうだったかはその結果を待ちましょう。

ただ、日本の高齢者は郵便局を「お役所」と思っていて、郵便局員に言われるがままに契約する人が少なくないでしょうから、「不正販売」とは、それにつけこんだ個人的または組織的な戦術です。

金融商品の販売手数料が収益の柱だとすればノルマがきつくなるのは当たり前ですが、経営陣が「不正販売」以外の販売戦略を見出せなかったとしたら、あるいは、「不正販売」に手をそめてしまう社員を見過ごしていたとすれば、とても残念な組織です。

日本の上場企業のコンプライアンス水準は、その程度のものだったのだろうかと若干心配になりますが、それとは別に本件では日本郵政という組織の特殊性に着目する必要があるでしょう。

日本郵政は玉虫色の民営化という失敗例か