「今年度は年金が増額されると聞いていたのに、手取りがあまり変わっていない気がする……」
6月に入り、ご自宅に届く年金額改定通知書や住民税の決定通知書を見て、そんな疑問や釈然としない思いを抱く方も多いのではないでしょうか。
実は6月は、前年の所得をもとに税金や社会保険料の天引き額が更新される月。額面が増えても、実質的な手取りが相殺されてしまうケースは少なくありません。
日用品や電気代の負担増など生活防衛への意識が高まる2026年夏だからこそ、年金本体とは別に受け取れる「低所得者向けの上乗せ給付」の存在が家計の大きな命綱となります。
厚生労働省の統計によると、高齢者世帯のおよそ半数が「公的年金のみ」で生活しているという厳しい現実があります。
だからこそ、国が用意している支援制度は漏れなく活用したいところですが、この年金生活者支援給付金は「自ら日本年金機構へ請求書を提出しないと1円も振り込まれない」という大きな落とし穴があります。
本記事では、自分が上乗せの対象になるかどうかの決定的な境界線や、実際の給付額の目安、そして手元に届く封筒の色に応じた具体的な手続き方法を詳しく解説します。
1. 年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」の概要
年金受給者の生活を支えることを目的に、2019年に年金生活者支援給付金制度が創設されました。
受給要件を満たした対象者には、2カ月に1回、公的年金の支給日にあわせて年金生活者支援給付金が振り込まれます。
年金生活者支援給付金には3種類があり、受給する基礎年金の種類に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」にわかれます。
それぞれの所得要件を満たす基礎年金受給者が、この給付金の対象となるということです。
2. 【種類別】年金生活者支援給付金の支給要件を確認
基礎年金を受給している人のうち、年金等の収入や所得の合計額が一定基準以下となる場合、「年金生活者支援給付金」がもらえる可能性があるとわかりました。
本章では「年金生活者支援給付金」の具体的な支給要件について、3種類にわけて見ていきましょう。
2.1 老齢年金生活者支援給付金の対象となる方
まず老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす方です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
2.2 障害年金生活者支援給付金の対象となる方
下記の支給要件をすべて満たす場合、障害年金生活者支援給付金の支給対象となります。
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 障害年金等の非課税収入は除く
2.3 遺族年金生活者支援給付金の対象となる方
下記の支給要件をすべて満たす場合、遺族年金生活者支援給付金の支給対象となります。
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)
※ 遺族年金等の非課税収入は除く
3. 実際みんなはいくらもらっている?老齢・障害・遺族ごとの最新支給実績データ
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を見ていきましょう。
2025年3月時点の平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円でした。
※2025年3月において認定されている平均給付金額です。
給付金額別の給付件数は以下のとおりです。
3.1 老齢年金生活者支援給付金:給付金額ごとの件数
- 1000円未満:7万5101件
- 1000円以上2000円未満:31万4450件
- 2000円以上3000円未満:59万9166件
- 3000円以上4000円未満:108万2177件
- 4000円以上5000円未満:103万4357件
- 5000円以上6000円未満:104万5423件
- 6000円以上7000円未満:18万5291件
- 7000円以上8000円未満:9万3265件
- 8000円以上9000円未満:4万4796件
- 9000円以上1万円未満:1万9891件
- 1万円以上:1万524件
3.2 障害年金生活者支援給付金:給付金額ごとの件数
- 5000円以上6000円未満:149万3700件
- 6000円以上7000円未満:68万3466件
3.3 遺族年金生活者支援給付金:給付金額ごとの件数
- 1000円未満:ー
- 1000円以上2000円未満:607件
- 2000円以上3000円未満:1569件
- 3000円以上4000円未満:ー
- 4000円以上5000円未満:ー
- 5000円以上:7万5531件
4. 日本年金機構から届く請求書はどれ?確実にお金を受け取るための手続き
「年金生活者支援給付金」は勝手に受け取れるわけではありません。申請が必須となっているので手続き漏れがないように注意しましょう。
ここでは、該当する人が多い2つのパターンにわけて、請求手続きの方法を見ていきます。
4.1 ケース1:すでに年金を受給中で、新たに対象となった方の手続き
- 毎年9月の第1営業日から、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。受け取った方は必要事項を記入し、切手を貼って郵便ポストに投函します。
- 締切日までに提出すると10月分まで遡って受け取れますが、それ以降になると、請求した月の翌月分からの支給となります。早めの手続きを心がけましょう。
※「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた人は、電子申請による提出も可能です。電子申請を行った場合、郵送での提出は不要です。
4.2 ケース2:これから老齢年金の受給が始まる方の手続き
- 受給権が発生する3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」が送付されます。こちらに「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
- 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書と一緒に年金事務所へ提出します。
4.3 知っておきたいポイント:翌年以降の手続きは原則不要
毎年手続きが発生するの?と思う方もいますが、一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り翌年以降の手続きは原則不要です。
※年金生活者支援給付金は、毎年度、前年の所得情報等に基づき、継続支給の判定が行われます。継続支給の判定結果は、毎年10月分(支払いは12月)から1年間反映されます。
5. 貯蓄の取り崩しはいくら必要?「公的年金だけで生活する世帯」のリアルな割合
年金だけで生活している高齢者世帯は、実は多くありません。
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、その割合は43.4%であることがわかっています。
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外の所得で生活費を補填していることがわかります。
公的年金のみで生活できない可能性も念頭に置いて、老後計画を立てる必要があるといえるでしょう。
6. まとめ:もらい損ねて損をしないために
これから本格的な夏を迎えるにあたり、熱中症対策のためのエアコン代や日々の食費など、家計から出ていくお金は増える一方です。
だからこそ、6月15日の年金支給日を前に、自分が正当に受け取れるはずの権利を逃さないことが何よりも大切になります。
今回ご紹介した上乗せ制度は、一度申請さえしてしまえば翌年以降は原則として自動更新される心強い味方ですが、裏を返せば「最初のハガキ1枚を出さずに放置した人」は、ずっと0円のまま損をし続けることになります。
届いたハガキや通知書を「よくわからないから」と引き出しの奥にしまい込んでいませんか。まずはご自宅の郵便物を確認してみてください。









