3. 株価材料としての2大提携:鴻海JVとパワー半導体統合
足元の業績好調に加え、三菱電機の株価を刺激しているのが、立て続けに発表された大型の事業再編・提携のニュースです。
3.1 自動車機器事業における鴻海とのジョイントベンチャー
一つ目の大きな動きが、自動車機器事業に関する提携です。
2026年4月24日、三菱電機は台湾の巨大EMS(電子機器受託製造)企業である鴻海(ホンハイ)精密工業と、戦略的提携の検討を開始したと発表しました。
具体的には、自社の自動車機器事業を担う「三菱電機モビリティ」へ鴻海から50%の出資を受け入れ、ジョイントベンチャー(JV:共同出資会社)化を視野に入れるという内容です。
一部の投資家からは「自動車部門を売り渡すのではないか」という懸念の声も上がりましたが、泉田氏はこの動きを極めて合理的な判断だと分析します。
「自分たちの資本だけじゃちょっと難しいから、他の外部の資本も入れたいねっていうのがまず1つ。あともう1つは、自動車の作り方がガソリン車から『電気自動車』に変わってくるにあたって、ものづくりも変わってくるわけですよ」
現在、自動車業界はEV(電気自動車)や自動運転、さらにはソフトウェアで車を制御するSDV(Software Defined Vehicle)へと劇的な変化を遂げています。これらに対応するための研究開発費や設備投資は、巨額になります。
また、投資家目線で重要なのが「ROIC(投下資本利益率)」という考え方です。
事業に投じた資金に対してどれだけ効率よく利益を生んでいるかを示す指標ですが、利益率が相対的に低く、かつ莫大な追加投資が必要な事業に対して、自社単独で資金を投じ続けるのはリスクが伴います。
そこで、資金力があり組み立てを得意とする鴻海と組むことで、リスクを分散しながら次世代の自動車産業で生き残る道を選んだのです。
3.2 国の宝「パワー半導体」を守り抜く4社統合
二つ目の大きな材料が、半導体事業の再編です。2026年3月27日、三菱電機はローム、東芝(東芝デバイス&ストレージ)、日本産業パートナーズ(JIP)などと、パワー半導体事業の経営統合に関する基本合意書を締結したと発表しました。
パワー半導体とは、高い電圧や大きな電流を制御するための半導体で、電気自動車や鉄道、送変電所などで不可欠な部品です。日本の企業が世界的に高いシェアを持っている、いわば「国の宝」とも言える領域です。
なぜこのタイミングで統合に向かうのでしょうか。泉田氏は次のように解説します。
「1社ごとにやるんでは設備投資とか研究開発が追いつかないっていうので、今回一緒にジョインするって話になったんじゃないかなと思います」
成長市場であるパワー半導体分野で世界と戦うためには、やはり巨額の投資が必要です。各社がバラバラに投資するのではなく、日本の強みを結集して統合体を形成することで、グローバル市場での競争力を高める狙いがあります。
「敗戦処理のような事業整理ではないのか」という疑問が投げかけられると、泉田氏はこれを明確に否定し、成長に向けた前向きな統合であると強調しました。
【動画で解説】三菱電機、防衛テーマと連続増益が牽引する株価上昇に迫る
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日