4. 機関投資家が好む「高ROE×自社株買い」の最強パターン
オービックが実施している「配当」と「自社株買い」という2つの株主還元。個人投資家にとっては、銀行口座に現金が振り込まれる配当のほうが嬉しいと感じるかもしれません。
しかし泉田氏によれば、機関投資家のようなプロの投資家は「自社株買い」をより高く評価する傾向があるといいます。
その理由を理解する鍵が、先ほど登場した「ROE(自己資本利益率)」です。
自社株買いとは、企業が自らの資金で市場から自社の株式を買い戻す行為です。買い戻された株式が消却(消滅)されると、発行済みの株式数が減るため、1株あたりの利益(EPS)が向上します。
同時に、自己資本が減少するため、計算上ROEがさらに高まるという効果があります。
泉田氏はこのメカニズムについて、次のように解説します。
「自社株買いってどういうことかいうと、ROEが16%の会社の株を買うってことなんですよ、当たり前なんですけど」
もし投資家が配当として現金を受け取った場合、その資金を再びどこかに投資して増やす必要があります。しかし、国債の利回りが数パーセントの時代に、ROEが16%を超えるような優良な投資先を自分で見つけるのは至難の業です。
「よその会社の株を買うよりも、自分の会社の株買った方がリターン高いわけですよ。かつ自社株買いして消却すると株数減るんで、またROEって上がるんですよ」と泉田氏は語ります。
つまり、高いROEを誇る企業が自社株買いを行うことは、最も効率の良い再投資となり、「高ROE企業×自社株買い」は投資の世界における最強のパターンなのです。
さらに、税金の面でも違いがあります。インタビュワーが配当と自社株買いの違いについて尋ねると、泉田氏は機関投資家のリアルな視点を明かします。
「配当でもらっちゃうと普通の口座だと2割税金取られちゃうんですよ。だけど自社株買いだと税金が取られないんです。勝手に株数減って消却して株価上がるだけなんで」
NISAのような非課税制度を使わない限り、配当金を受け取るたびに約20%の税金が引かれてしまいます。巨額の資金を運用する機関投資家にとって、税金で資金が目減りすることは複利効果を大きく削ぐ要因になります。
そのため、税金を払わずに企業価値(株価)そのものを高めてくれる自社株買いのほうが、合理的な選択として好まれるのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日