生活保護は、生活に困窮する人を支える公的なセーフティーネットとして重要な役割を担っています。

厚生労働省の公表によると、2026年1月時点の生活保護受給者数は約198万人となっています。

全体の受給者数や世帯数は減少傾向にある一方で、依然として多くの人が制度を必要としている実態がうかがえます。

なかでも特徴的なのが、高齢単身世帯の多さです。

生活保護受給世帯の半数以上を高齢者世帯が占め、その大部分が単身世帯となっています。

その背景には、年金収入だけでは生活費をまかなうことが難しい高齢者の家計事情があると考えられます。

本記事では、生活保護受給世帯の構成や高齢単身世帯の家計状況、さらに生活保護制度の仕組みや支給内容について詳しく見ていきます。

1. 【生活保護】受給者の半数超が「高齢単身世帯」

厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和8年1月分概数)」によると、2026年1月時点の生活保護受給者数は約198万人となっています。

全体としては、被保護実人員数と世帯数はいずれも前年同月より減少しています。

また、新規申請件数や保護開始世帯数も前年を下回りました。

  • 保護の申請件数:2万1565件 前年同月比635件減少(2.9%減)
  • 保護開始世帯数:1万6907世帯 前年同月比318世帯減少(1.8%減)

次に、世帯類型別の内訳を見てみましょう。

【世帯類型別世帯数及び割合(保護停止中を含まない)】

  • 高齢者世帯:54.9%
    • 単身世帯:51.3%
    • 二人以上世帯:3.6%
  • 高齢者以外世帯:45.1%
    • 母子世帯:3.6%
    • 障害者・傷病者世帯:25.6% 
    • その他の世帯:15.9%

とくに目立つのは、生活保護受給世帯のうち51.3%が単身高齢者世帯となっている点です。

この結果から、生活保護制度が「年金収入のみでは生活が難しい高齢単身者」を支える役割を果たしていることがうかがえます。

2. 「年金だけでは足りない?」高齢者が抱える老後資金不足

高齢単身世帯で生活保護受給者が多い背景には、年金収入だけでは生活を維持しにくい高齢者が少なくない現状があります。

実際に、厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%となっている世帯は43.4%となっています。

近年は、食料品や電気・ガス料金など生活に欠かせない支出の値上がりが続いており、高齢者世帯の家計にも影響が広がっています。

また、高齢になると、住宅設備の修繕や家電の買い替えなど、予想外の支出が発生するケースもあります。

さらに、年金受給額には個人差があり、現役時代の働き方や厚生年金への加入期間によって、受け取れる金額は大きく異なります。

こうした複数の要因が重なることで、生活に困窮し、生活保護を必要とする高齢単身世帯が増えていると考えられます。

では、高齢単身世帯の「家計収支」はどのようになっているのでしょうか。

3. 高齢単身世帯の「家計収支」を確認

総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の家計状況は以下のとおりです。

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

【65歳以上 単身無職世帯】

  • 実収入:13万1456円
  • 可処分所得(手取り収入):11万8465円
  • 消費支出:14万8445円
  • 毎月の赤字額:2万9980円

平均的な家計を見ると、高齢の単身世帯では毎月およそ3万円の赤字が発生しており、多くの高齢単身世帯では、年金収入のみで生活費をまかなうのが難しく、別の収入源を必要としている実態が見えてきます。

さらに、この家計試算は日常生活にかかる支出を前提としたものです。

医療費や介護費、葬儀費用などが発生した場合には、家計負担がさらに重くなる可能性があります。

こうした背景を踏まえると、生活保護受給世帯の約半数を単身高齢者世帯が占めていることも理解できるでしょう。

では、生活保護では実際にどの程度の金額が支給されるのでしょうか。

4. 【生活保護の生活扶助】毎月の支給額はどのくらい?

生活保護は、全国一律の金額が支給される制度ではありません。

制度は8種類の扶助に分かれており、世帯ごとの収入状況や必要な支出をもとに、不足分を補う仕組みとなっています。

  • 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱水費等)
  • 住宅扶助:アパート等の家賃等 定められた範囲内で実費を支給
  • 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費等
  • 医療扶助:医療サービスの費用。費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)
  • 介護扶助:介護サービスの費用。費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし)
  • 出産扶助:出産費用。定められた範囲内で実費を支給
  • 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用(高等学校等に就学するための費用を含む。)定められた範囲内で実費(高等学校等に就学するための費用の一部は定められた基準額)を支給
  • 葬祭扶助:葬祭費用。定められた範囲内で実費を支給

この中でも、食費や光熱費など日常生活を支える「生活扶助」が、どの程度受け取れるのか気になる人も多いでしょう。

生活扶助の支給額は、地域の物価水準や世帯人数、年齢構成などによって細かく設定されています。

ここでは、生活扶助額の具体例を見ていきます。

世帯構成:東京都区部等/地方郡部等

  • 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
  • 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万6450円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
  • 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円

これらに加えて、家賃にあたる住宅扶助などが支給されます。

このように、生活保護における「最低限度の生活」の基準は、世帯構成や住んでいる地域によって異なっています。

5. 生活保護の実態から見える高齢単身世帯の生活課題

本記事では、生活保護受給世帯の構成や高齢単身世帯の家計状況について解説しました。

生活保護受給世帯の内訳を見ると、高齢単身世帯が全体の半数以上を占めており、年金収入だけでは生活が難しい高齢者が少なくない実態がうかがえます。

こうした状況のなかで、生活保護は最低限度の生活を支える重要な制度として機能しています。

なお、支給内容は全国一律ではなく、地域の物価や世帯構成、年齢などに応じて決定されている点も特徴です。

制度の仕組みや現状を正しく理解することは、高齢化が進む社会における生活課題を考えるうえでも重要でしょう。

参考資料

鶴田 綾