風薫る5月となり、過ごしやすい季節になりました。
大型連休を利用して、旅行や趣味を楽しんでいる方もいらっしゃるかもしれません。
さて、2026年4月15日は、2025年度を締めくくる最後の年金支給日でした。
次回の年金支給日は6月15日で、2026年度の年金額が適用されます。
将来の生活を考えたとき、「年金だけで暮らしていけるのだろうか」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
厚生年金(国民年金分を含む)を、月額20万円以上を受け取る人は何%ほどいるのでしょうか。
この記事では、厚生労働省の公表データをもとに、厚生年金のリアルな受給額や、受給開始時期を調整する「繰上げ受給」「繰下げ受給」が家計にどのような影響をあたえるのかを詳しく解説します。
1. 厚生年金の受給額、月20万円(2カ月で40万円)を受け取る人の割合は?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金分を含む)の平均受給額は月額で15万289円となっています。
しかし、この金額はあくまで平均であり、男女間での受給額には大きな差が見られるほか、受給額の分布にもばらつきがあります。
1.1 男女別の平均受給額について
まずは、男女別の平均受給額から確認していきましょう。
〈全体〉平均年金月額:15万289円
〈男性〉平均年金月額:16万9967円
〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含みます。
1.2 受給額別の詳しい割合
次に、受給額ごとの詳しい割合を見ていきます。(全体:1608万5696人)
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 30万円以上の割合:0.12%
受給額の分布を見ると、およそ半数の方が月額15万円以上を受け取っていることがわかります。
しかし、月額20万円以上となると、その割合は全体の2割弱まで減少します。
このことから、老後の資金を公的年金のみに依存するのではなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用した資産形成や、長く働き続けるためのキャリアプランニングといった、個人での備えが重要になるといえるでしょう。
2. 年金の「繰上げ受給」とは?早く受け取れるが一生涯減額される制度
「繰上げ受給」とは、原則65歳から支給が開始される老齢年金を、60歳から64歳の間に前倒しで受け取れる制度のことです。
早期に年金を受け取れるという利点がありますが、その一方で、減額された年金額が一生涯続くという点には注意しなければなりません。
繰上げ受給の減額率計算方法
繰上げ受給による年金の減額率は、繰り上げた月数に応じて、以下の計算式で決まります。
- 減額率(最大24%) = 0.4% × 繰り上げた月数
例えば、最も早い60歳0カ月で請求した場合、年金額は24%減額されます。
※昭和37年4月1日以前に生まれた方は、減額率が「0.5%(最大30%)」となり、現行制度よりも高めに設定されています。
※この請求は一度行うと取り消すことができず、減額されたままの金額で生涯受け取ることになります。
3. 年金の「繰下げ受給」とは?増額する一方で税金・社会保険料の負担増も
「繰下げ受給」は、年金の受給開始を66歳以降に遅らせることで、受け取る年金額を増やせる仕組みです。
1カ月遅らせるごとに受給額が増え、その増額率の高さが大きな特徴となっています。
繰下げ受給の増額率計算方法
繰下げ受給による年金の増額率は、65歳に達した月(誕生日の前日を含む月)から受給を開始した月までの期間に応じて、以下の計算式で算出されます。
- 増額率(最大84%) = 0.7% × 繰り下げた月数
最も遅い75歳まで繰下げた場合、年金額は84%も増額されます。
※昭和27年4月1日以前に生まれた方は、繰下げの上限年齢が70歳のため、最大の増額率は42%です。
※この制度を利用する際は、年金の支給を待つ間の生活費をどのように確保するかが重要なポイントになります。
繰下げ待機期間中は加給年金などが支給されない点に注意が必要です。
さらに、万が一受給を開始する前に亡くなってしまうと、遺族が増額された年金を受け取ることはできません。
そのため、ご自身の健康状態や家族の状況などを総合的に考えて、慎重に判断することが求められます。
特に注意したいのは、待機中に亡くなった場合、遺族が未支給分を請求しても5年を過ぎた分は時効で受け取れなくなるリスクがあることです。
これにより、本来受け取れるはずだった年金が失われる可能性があります。
また、待機期間中に他の年金を受け取る権利が発生した場合は、その時点で増額率が固定されます。
受給額が増えることに伴い、所得税や住民税、社会保険料の負担も増加するため、手取り額が額面通りに増えるわけではないことにも留意しておく必要があります。
4. 繰上げ受給と繰下げ受給、どちらが多く選ばれている?最新動向を解説
老齢厚生年金(特別支給分を除く)の受給権者において、繰上げ受給と繰下げ受給の利用状況は、近年少しずつ変化を見せています。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度末時点での繰上げ率は1.2%、繰下げ率は1.9%でした。
この結果から、繰下げ受給を選択する人が繰上げ受給を上回っていることがわかります。
繰上げ率も令和2年度の0.5%から見ると緩やかに上昇していますが、依然として低い水準です。
その一方で、繰下げ率は同期間に1.0%から1.9%へと着実に増加しており、年金の受給開始を遅らせるという選択肢が広がりつつある様子がうかがえます。
4.1 70歳時点での繰下げ受給の選択状況
次に、70歳時点での選択状況に絞って見てみましょう。
70歳時点における繰下げ率は、厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度には4.2%に達しており、上昇傾向がよりはっきりと表れています。
この背景には、長く働き続ける高齢者が増加していることや、繰下げ受給による年金額の増額メリットが広く知られるようになってきたことがあると考えられます。
また、制度改正によって繰下げできる年齢の上限が引き上げられたことも、利用者の増加を後押ししている要因の一つでしょう。
一方で、繰上げ受給の利用は限定的であることから、老後の生活設計において「早く受け取る」ことよりも「増やして受け取る」ことを重視する傾向が強まっているといえそうです。
これからの時代は、ご自身の就労状況や家計の変化を考慮しながら、ライフプランに合った受給開始時期を選ぶことが、ますます重要になっていくでしょう。
5. まとめ
今回は、厚生年金の受給実態と、繰上げ・繰下げ受給の制度について解説しました。
厚生年金の平均受給額は約15万円であり、月額20万円以上を受け取れるのは全体の2割弱という状況です。
繰上げ受給は早期に年金を受け取れる反面、生涯にわたって年金額が減額されます。
一方、繰下げ受給は年金額を増やせますが、待機期間中の生活費の確保や税負担の増加といった点に注意が必要です。
近年の傾向としては、受給開始を遅らせて年金額を増やす繰下げ受給を選ぶ人が少しずつ増えています。
老後の生活設計を立てる上では、ご自身の健康状態や資産状況をよく考慮し、最適な受給開始時期を検討することが大切です。
公的年金だけに頼るのではなく、iDeCoなどを活用した資産形成や、働き方そのものを見直すなど、多角的な準備を進めていくことが、より安心できる老後生活につながるのではないでしょうか。
※当記事は再編集記事です。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰上げ受給」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- LIMO「4月15日支給日【厚生年金】いちどの支給で「40万円(月額20万円)」もらう人はどれくらいいる?」
長井 祐人