副業解禁の流れは、中高年社員の再就職を考えると望ましい、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。
働き方改革関連法が副業を推進
今年度から働き方関連法が施行されていますが、その中に副業の普及を推進する内容が含まれています。
これを受け、副業を認める企業が出始めていますが、今秋からはメガバンクであるみずほ銀行も副業を解禁すると伝えられていますので、この動きはかなり広がるかもしれませんね。
建前としては、「働き盛りの社員に副業をさせて視野を広げさせ、本業に生かさせる」ということなのでしょうが、これは容易なことではないでしょう。
企業としては、副業先に気に入られて引き抜かれては困りますし、企業秘密を副業先で漏らされても困りますから、本音では歓迎しないケースも多そうです。
一方、本人としても、本業が忙しくて副業まで手が回らない、という場合がほとんどでしょう。ただでさえ働きすぎが問題となっている時に、副業でさらに働くというのは、現実的でない場合が多いでしょう。
したがって、実際に副業をするのは「サラリーマンとしての先が見えた中高年」が中心になると思われます。
先が見えたサラリーマンには転職先を探すインセンティブあり
「定年まで年功序列賃金で働いて、定年後は年金生活を送る」というサラリーマンは、転職先を探すインセンティブがないので、副業のインセンティブは大きくないでしょう。せいぜい小遣い稼ぎといったことでしょうから。
しかし、人生100年時代を迎えて「70歳まで現役で働きたい、年金受取開始を70歳まで待って老後の年金受取額を42%増やしたい」というサラリーマンが増えると、転職先を探すために副業するというインセンティブが高まります。
企業が70歳まで雇ってくれるならば、雇ってもらうという選択肢もあるでしょうが、70歳までは雇ってくれない企業も多いでしょう。
雇ってくれる場合であっても、企業が役職定年を設けたり、定年後再雇用はするけれども以前の部下にお仕えするポストしか与えなかったりするのであれば、70歳までその企業にしがみつくよりも転職したいと考えるサラリーマンも多いでしょう。
企業としても、出世競争の最中のサラリーマンと比べ、先が見えてしまったサラリーマンは勤労意欲が乏しい場合も多いでしょうから、積極的に副業してもらって人件費を削減し、運がよければ転職してもらう、という方が望ましいでしょう。
また、政府は70歳までの就業機会確保を企業の努力義務として定める方針です。そうなれば、「先が見えた中高年社員を70歳まで自社で雇うよりも、副業等により転職先を探してもらった方が良い」と考える企業は増えるでしょう。
したがって、企業としても先が見えた中高年サラリーマンには副業を積極的に勧めることになるかもしれません。特に「窓際族」には熱心に勧めることになるはずですね(笑)。