5. なぜ止められないのか?総量規制の不在と最悪のシナリオ
このような危険な状態を、なぜ規制当局は止めないのでしょうか。インタビュワーが疑問を投げかけると、泉田氏は日本のバブル崩壊の教訓を引き合いに出します。
1980年代後半の日本でも、不動産価格の永遠の上昇を前提とした異常な融資が行われていました。これを見かねた大蔵省(当時)が不動産向け融資に「総量規制」をかけた結果、お金の流れが急激に止まり、バブル崩壊という大惨事を招きました。
「お金が回らなくなるとやっぱり経済っていうのは崩れる。株価も下がる。さらに資産効果として消費が落ち込むみたいな、そんなループなんですよ」
現在のプライベートクレジット市場に対しても、当局が融資の総量規制をかければ、延命していたゾンビ企業が一斉に倒産し、深刻な不況を引き起こすことは目に見えています。
政治的なハレーションを恐れるあまり、誰もその市場の急収縮を招く引き金を引けず、リスクだけが雪だるま式に先送りされている側面もあるようです。
では、このまま膨張を続けた先に待っている「最悪のシナリオ」とはどのようなものでしょうか。泉田氏は、リーマンショックのような一夜にして世界が変わる急激なパニックではなく、じわじわと実体経済へ深刻な悪影響を波及させる「L字型の長期大不況」を危惧します。
「投資の民主化」によって個人の退職金や年金がこの市場に組み込まれた後、自己評価のメッキが剥がれ、資産価値が大きく目減りしたとします。
「運用して増やしてるって思ってた年金が全然価値がなくて、本来もらえる額よりも目減りしちゃう。これ、年金、退職金として運用してたとしたら、老後にもらうはずのお金じゃないですか」
リタイア世代は失われた資金を労働で取り戻すことができません。結果として深刻な消費の冷え込みが起き、日本が経験した「失われた30年」のような、底を這うような長期停滞がアメリカ経済を襲う可能性もあるのです。
【動画で解説】なぜ250兆円市場に急拡大?プライベートクレジットの仕組みを元機関投資家が解説
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日