4. 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】資産分布と中央値から把握する貯蓄の実態

4.1 平均額と資産の中身から見る老後資金の実像

年金収入だけで生活費を賄いきれない場合、その不足分を補う役割を果たすのが貯蓄です。ここでは、75歳以上の後期高齢シニア夫婦世帯が保有する資産の水準について確認していきます。

総務省「家計調査 家計収支編 2025年〔二人以上の世帯〕」および「貯蓄・負債編」によると、世帯主が75歳以上で無職の世帯の貯蓄状況は次のとおりです。

二人以上世帯のうち「世帯主が75歳以上、無職世帯」の貯蓄額

二人以上世帯のうち「世帯主が75歳以上、無職世帯」の貯蓄額

出所:総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 2025年 〔二人以上の世帯〕」(第8-10表)をもとに筆者作成

貯蓄:2392万円

金融機関:2383万円

  • 通貨性預貯金:763万円(31.9%)
  • 定期性預貯金:775万円(32.4%)
  • 生命保険など:396万円
  • 有価証券:449万円(18.4%)
    • 貸付信託・金銭信託:10万円
    • 株式:223万円
    • 債券:45万円
    • 投資信託:171万円

金融機関外:9万円

負債:24万円

4.2 貯蓄の額は「格差」が大きい

平均額だけを見ると十分な資産があるように感じられますが、実際には一部の高額資産世帯が平均を押し上げている側面があり、貯蓄額には大きなばらつきが存在します。

そのため重要なのは、平均との比較ではなく、自身の資産が毎月の赤字や生活費との差額をどの程度カバーできるかという視点です。

老後の家計を考える際には、資産額を時間軸で捉え直すことが不可欠となります。

4.3 資産寿命を延ばすために

資産構成を見ると、預貯金が約64%を占めており、安全性を重視した運用が中心となっていることが分かります。

一方で、有価証券の割合は2割弱にとどまっており、リスクを抑えた資産配分といえます。ただし、老後が長期化する中で重要となるのが物価上昇への対応です。

預貯金は元本が減りにくい反面、インフレ環境では実質的な購買力が低下する可能性があります。そのため、「どれだけ貯蓄があるか」だけでなく、「どれくらいの期間生活を支えられるか」という資産寿命の視点が重要になります。

リスクを抑えながら資産を分散する工夫や、自宅を活用するリバースモーゲージなど、多様な手段を組み合わせて資産全体で老後を支える考え方が求められます。