この記事でわかること
  • 「国策」の視点でチェック!
  • 「株価」でチャート分析
  • 「株主還元」の視点でチェック!

信越化学工業は世界トップクラスの化学メーカーで、化学株として時価総額は世界4位です。レアアースや半導体など、政府が進める方針とも一致する領域が多く、国策銘柄としての地位を固めつつあります。

投資の検討にあたって、信越化学工業の業績や株主還元の状況を整理しておきましょう。

※記事中で記載の株価は全て終値となっています。
※決算情報・業績等は執筆時点での情報にもとづいています。
※株式分割の影響は全て遡及修正して株価を調整しています。

1. 【信越化学工業(4063)】《国策》半導体関連で世界シェア1位!

まずは信越化学工業と国策との関係を解説します。

1.1 国から認定「レアアース」消費抑える《永久磁石》独自技術!

政府は日中関係の悪化を契機にレアアース確保を加速しています。信越化学工業は、レアアースのなかでも特に永久磁石の分野で国策と深く結びついています。

永久磁石は経済安全保障推進法で重要物資に指定されており、政府は国内のサプライヤーを支援しています。信越化学工業は2024年4月に認定を受けたほか、2025年4月にも追加認定を取得しており、国内で複数回の認定を受けた数少ない企業の1つです。

レアアースマグネットは自動車や産業用モーターをはじめ、高い耐熱性が求められる用途に広く採用されています。通常、ネオジム磁石などのレアアースマグネットは加熱で磁力が低下するため、さらに別のレアアースを添加することで耐熱性を得ます。

一方、信越化学工業は「粒界拡散合金法」を確立し、レアアースの添加を抑えつつ高い耐熱性と磁力の維持に成功しています。レアアースの使用量が抑えられるため、調達リスクの軽減が期待されます。

1.2 半導体材料で世界シェア圧倒

政府はAIと半導体を成長戦略の柱と位置づけますが、この分野でも信越化学工業は欠かせない存在です。シリコンウエハーを筆頭に、多くの半導体材料で圧倒的なシェアを持ちます。

【信越化学工業の主な半導体関連製品の世界シェア】

  • 半導体シリコンウエハー:1位
  • 半導体ウエハーケース:1位
  • フォトレジスト(回路形成に用いる感光材):2位
  • フォトマスクブランクス(回路形成に用いる原版の材料):2位

出所:信越化学工業株式会社「統合報告書2025」

1.3 中東リスク低い塩化ビニルが再注目

塩化ビニルは、原油を精製したナフサからエチレンを取り出し、塩と合わせて製造する石油製品です。中東情勢の緊迫化を受け、政府は塩化ビニルを含む石油製品の確保を強化する方針を策定しました。

信越化学工業は主に子会社のシンテックが米国で塩化ビニルを生産しており、世界シェアは首位です。エチレンや塩は現地で自社生産でも調達していることに加え、原料は塩が約6割で中東の依存度が低く、代替調達の恩恵が期待されます。

2. 【信越化学工業(4063)】株価2年ぶり高値!中東リスクも軽微

2.1 【株価の主な状況】

  • 2年ぶり高値圏
  • 大型自社株買いが反発の契機に
  • イラン紛争の下げは全戻し

信越化学工業の2026年4月16日終値は6910円です。一時は6944円まで買われ、2024年3月の高値6926円を2年ぶりに突破します。以前は下落トレンドで、2025年4月には3425円の安値をつけていました。

反発のきっかけは自社株買いです。信越化学工業は2025年4、最大5000億円の自社株買いを公表しました。自己株式を除く発行済み株式数の10.2%に相当する量で、翌営業日の株価は6.6%高と急伸します。

2.2 【1年間の株価チャートを振り返る】

株価は2026年に入り上昇ペースを上げ、1年間では78.9%上昇し、日経平均株価(同75.5%)と同水準に値上がりしました。

信越化学工業の株価チャート(日足、1年)1/3

信越化学工業の株価チャート(日足、1年)

出所:著者作成

なお、2月末からは12.0%の上昇と、日経平均株価(同1.1%)を大きく上回っていることから、イラン紛争に起因する売りは相対的に軽微だった模様です。

3. 【信越化学工業(4063)】株主還元は「積極化」業績は反発待ち

続いて業績と株主還元の状況も押さえておきましょう。

3.1 減益トレンド続く 塩化ビニルが苦戦

2026年3月期は減収減益の計画です。第3四半期累計は売上高が前年同期比0.2%増、営業利益は同14.8%減となりました。通期では売上高が前期比6.3%減、営業利益は同14.4%減を予想します。

半導体シリコンウエハーなどの電子材料は堅調で、AI向けの先端分野がけん引しています。一方、塩化ビニルなどの生活環境基盤材料は中国からの輸出を主因に軟調であり、全体の減益につながっています。

信越化学工業の業績(2016年3月期~2026年3月期)2/3

信越化学工業の業績(2016年3月期~2026年3月期)

出所:信越化学工業株式会社「決算短信」より著者作成

3.2 配当金は10年前の「4.8倍」自社株買いも大型化

業績は苦戦していますが、株主還元は強化しています。2026年3月期は1株あたり106円の配当金を予定しており、10年前の4.8倍の水準にあります。

信越化学工業の株主還元(2016年3月期~2026年3月期)3/3

信越化学工業の株主還元(2016年3月期~2026年3月期)

出所:信越化学工業株式会社「決算短信」および信越化学工業株式会社「適時開示情報」より著者作成

自社株買いも積極的で、2022年3月期以降は毎年1000億円以上を実施してきました。先述した最大5000億円の自社株買いは、2026年2月までにほぼ消化しています。

4. 【信越化学工業(4063)】本決算の公表間近!焦点は「自社株買い」の有無

信越化学工業は2026年3月期の本決算を4月28日に公表する予定です。ただし、同社は本決算では通期の見通しを開示しないことが定例となっており、近年はまったく開示しないか、第1四半期の開示のみにとどめています。

本決算では翌期の見通しが株価に大きな影響を与えますが、信越化学工業においてはその動きは限定的とみられます。

一方で、自社株買いには期待したいところです。取得額が最大900億円以上に絞ると、直近10年間では6回公表しており、うち3回が4月~5月に公表されました。

大型の自社株買いは本決算の前後に公表される傾向にあり、注目度は高いと考えられます。仮に公表がなかった場合、失望感から売られる展開もありそうです。

免責事項

  • 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の株式の売買を推奨するものではありません。
    投資判断は、最新の決算資料や市場動向をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件は変更される場合があります。詳細は必ず公式サイトでご確認ください。

参考資料

若山 卓也