毎年の物価や賃金の変動に合わせて見直される公的年金。

2026年度(令和8年度)の年金額は前年度から引き上げとなり、国民年金(老齢基礎年金)を65歳から満額受給する場合、月額7万608円(※68歳以下の新規裁定者等)と、昨年度から1300円の増額改定となりました。

また、会社員として働いた夫と専業主婦の妻という標準的な世帯が受け取る「厚生年金」のモデル金額も月額23万7279円となり、昨年度から4495円の引き上げとなっています。

しかし、額面上は増額されたものの、直近の物価上昇率には追いついていません。

さらにマクロ経済スライドによる給付抑制も行われているため、生活に欠かせない食料品や日用品の値上げラッシュの中、「実質的な価値は目減りしている」と厳しい現実を感じているシニア世代が多いのが実情です。

一方で、これから老後を迎える現役世代からも「自分たちの時代には年金だけで生活できるのだろうか」と不安視する声が聞こえてきます。

会社員が受け取る「厚生年金」は月額平均15万円ほどと言われますが、実はその受給額には非常に大きな「個人差」が存在します。

今回は、厚生労働省の最新データをもとに、シニア世代のリアルな年金事情とシビアな男女格差の現実を深掘りしていきます。

1. おさらいしておきたい「年金の2階建て構造」

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出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

具体的な受給額を見る前に、日本の公的年金の仕組みを簡単におさらいしましょう。日本の年金制度は、大きく分けて以下の「2階建て構造」になっています。

1.1 1階部分(国民年金)

原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入し、共通の保険料を納める基礎年金。

1.2 2階部分(厚生年金)

会社員や公務員などが加入し、給与水準などに応じた保険料を納める年金。

なお、ひとくちに「厚生年金」といっても加入者の職業によって第1号から第4号まで区分が分かれています。

今回データとして取り上げる「第1号厚生年金被保険者」は主に民間企業に勤める会社員が該当し、公務員や私学教職員は含まれていません。

会社員として長く働いてきた人は、1階部分の国民年金に上乗せして2階部分の厚生年金も受け取れるため、自営業者などに比べて将来の年金収入が手厚くなる仕組みです。

2. 【厚生年金】平均は月15万円。最新データから見る「男女別」のリアルな受給者分布

では、民間企業で働いていたシニアは実際ひと月にいくらもらっているのでしょうか。

厚生労働省が公表した最新の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金保険(第1号)の平均受給月額は全体で15万289円となっています。男女別に見ると、男性が16万9967円、女性が11万1413円です。

しかし、「平均額」だけでは実態はわかりません。実際にいくら受け取っている人が多いのか、受給額ごとの人数分布を男女別に比較してみましょう。

(※以下の金額には、1階部分の基礎年金が含まれています)

2.1 【厚生年金】受給額別の人数分布(男女別)

  • 1万円未満:男性 3万446人 / 女性 1万2953人
  • 1万円以上~2万円未満:男性 1万257人 / 女性 3880人
  • 2万円以上~3万円未満:男性 5404人 / 女性 2万9993人
  • 3万円以上~4万円未満:男性 5185人 / 女性 6万3025人
  • 4万円以上~5万円未満:男性 1万4747人 / 女性 6万1945人
  • 5万円以上~6万円未満:男性 3万9134人 / 女性 6万9313人
  • 6万円以上~7万円未満:男性 13万4214人 / 女性 18万892人
  • 7万円以上~8万円未満:男性 23万186人 / 女性 34万8764人
  • 8万円以上~9万円未満:男性 26万278人 / 女性 54万1901人
  • 9万円以上~10万円未満:男性 26万99人 / 女性 75万1358人
  • 10万円以上~11万円未満:男性 29万8838人 / 女性 81万3990人
  • 11万円以上~12万円未満:男性 37万6357人 / 女性 69万5128人
  • 12万円以上~13万円未満:男性 45万6689人 / 女性 52万2466人
  • 13万円以上~14万円未満:男性 54万9337人 / 女性 37万4169人
  • 14万円以上~15万円未満:男性 65万7775人 / 女性 27万1489人
  • 15万円以上~16万円未満:男性 76万4713人 / 女性 20万322人
  • 16万円以上~17万円未満:男性 85万3718人 / 女性 14万7604人
  • 17万円以上~18万円未満:男性 92万6462人 / 女性 10万5489人
  • 18万円以上~19万円未満:男性 95万5327人 / 女性 7万1561人
  • 19万円以上~20万円未満:男性 91万3998人 / 女性 4万8617人
  • 20万円以上~21万円未満:男性 82万204人 / 女性 3万3387人
  • 21万円以上~22万円未満:男性 68万2702人 / 女性 21万931人
  • 22万円以上~23万円未満:男性 50万9842人 / 女性 1万4116人
  • 23万円以上~24万円未満:男性 34万1191人 / 女性 8813人
  • 24万円以上~25万円未満:男性 22万4720人 / 女性 5491人
  • 25万円以上~26万円未満:男性 14万7563人 / 女性 3233人
  • 26万円以上~27万円未満:男性 9万2856人 / 女性 1811人
  • 27万円以上~28万円未満:男性 5万4156人 / 女性 927人
  • 28万円以上~29万円未満:男性 2万9810人 / 女性 479人
  • 29万円以上~30万円未満:男性 1万4935人 / 女性 223人
  • 30万円以上~:男性 1万8801人 / 女性 482人

2.2 【男女格差のリアル】なぜ女性の年金は圧倒的に低いのか?

リストを見ると、男性のボリュームゾーン(ピーク)が「月18万円から19万円台」であるのに対し、女性は「月10万円から11万円台」と、その差は歴然です。

なぜここまで年金受給額に「男女差」が生まれるのでしょうか。

その理由は、厚生年金の受給額が現役時代の「給与(標準報酬額)の高さ」と「加入していた期間の長さ」によって計算されるからです。

現在のシニア世代が現役だった頃は、「夫は正社員として働き、妻は専業主婦やパートタイム」というライフスタイルが一般的でした。

そのため、女性は男性に比べて厚生年金に加入している期間が短く、また非正規雇用などで給与水準が低かったケースも多いため、それが現在も年金額の差として表れているのです。

3. 【法改正】遺族年金の「男女差」もついに解消へ

自身の年金額が少ない女性にとって、老後の「命綱」とも言えるのが夫亡き後に受け取る「遺族厚生年金」でした。しかし、今後はこの遺族年金制度においてもシビアな見直しが行われます。

2025年の年金制度改正案では、「女性の就業率の向上などに合わせて、遺族厚生年金の男女差を解消する」ことが打ち出されました。

現在の制度では、こどものいない妻が30歳以上で夫と死別した場合、原則として「無期(一生涯)」で遺族厚生年金を受け取ることができます(一方で、妻を亡くした55歳未満の夫は給付ゼロでした)。

しかし見直し後は男女共通のルールとなり、「60歳未満で配偶者と死別した場合は、原則5年間の有期給付」へと厳格化される方針です(2028年4月から段階的に実施)。

「女性の社会進出が進んだこと」が理由とされていますが、現実問題として女性の年金収入が圧倒的に少ない現状において、「夫が亡くなれば一生遺族年金で暮らせる」という過去の常識は通用しなくなっていくのです。

4. 将来の年金不安をなくす!受給見込額の調べ方

このような時代において、平均データに一喜一憂するのではなく、自分自身が将来いくら年金をもらえるのかを正確に把握しておくことが何より重要です。将来の目安額は、以下の方法で簡単に確認できます。

4.1 ねんきん定期便で確認する

毎年誕生月になると、日本年金機構からハガキなどで送られてきます。

50歳以上の方には「いまの働き方や収入水準が60歳まで続いたと仮定した場合の受給見込額」が記載されるため、老後の生活設計のリアルな指標となります。

4.2 ねんきんネットでシミュレーションする

スマートフォンやパソコンから「マイナポータル」を経由するか、専用のユーザーIDを取得することで利用できます。

最新の年金記録が確認できるだけでなく、今後の働き方や収入の変化を想定した詳細な年金シミュレーションができるため、非常に便利です。

5. まとめ

働き方が多様化し、共働き世帯が主流となった現代では、年金額の男女差や個人差は今後さらに複雑になっていくと考えられます。

特に女性にとっては、法改正によって「配偶者頼み」の老後設計が難しくなる現実も見過ごせません。

まずは「自分の見込額」を把握することが老後対策のスタート地点です。

ご自身の受給見込額と将来の生活費を比較し、もし不足を感じる場合は、早いうちからNISAやiDeCoなどを活用して、自分自身の力で老後に備える計画を立ててみるのもよいでしょう。

参考資料