続いて、ここ数年でぐっと浸透してきた「キャッシュレス」にも注目してみましょう。

経済産業省は、2018年に公表した『キャッシュレス・ビジョン』において、日本のキャッシュレス決済比率が16年時点で20.0%にまで上昇したことを明らかにしました。政府はキャッシュレス化を積極的に推進しており、25年までに40%に、将来的には世界最高水準の80%にまで引き上げることを目指しています。

また、キャッシュレス化は20代よりも、30代や40代で加速しているという実情も。SMBCコンシューマーファイナンス㈱が19年に公表した『30代・40代の金銭感覚についての意識調査2019』によれば、「普段の買い物で現金決済よりキャッシュレス決済のほうが多いか」という問いに対して、「非常にそう思う」「ややそう思う」と答えた合計が20代では44.1%。30代では52.8%、40代では53.4%と過半数を超える状況となっています。

「キャッシュレス決済=クレジットカード」ではない

キャッシュレスと聞くと、クレジットカードをイメージする人もいるかもしれませんが、実は「キャッシュレス決済」には大きく分けて3つのタイプがあります。

「お金を使いすぎてしまいそうだから」という理由でキャッシュレスを敬遠する人も多いですが、デビットカードやプリペイドカードのタイプであれば、上限を決めてキャッシュレスを利用することもできます。現金と同様、使いすぎを防げるので安心です。

また、この1〜2年で「〇〇ペイ」という名称のサービスが爆発的に増えていますが、これはQRコードを使った「即時払い決済」の仕組みのこと。支払い方法にはクレジットカード払いと口座振替の2通りがあり、口座振替を指定すれば、基本的に残高を超えての支払いはできない仕組みになっています。

キャッシュレス化は貯蓄にプラス?マイナス?

非常に便利なキャッシュレス決済ですが、デメリットを挙げるとすれば、お金を使っている実感が湧きにくいこと。あまりに手軽なので、「その買い物が本当に必要なのか」を検討する時間が短くなり、無駄遣いにつながりやすいのがネックと言えるでしょう。

お金の管理が苦手な人や欲求をコントロールするのが苦手な人の場合、キャッシュレス化によって貯蓄がしにくくなる可能性は否定できません。とはいえ、キャッシュレス化の波は確実に迫ってきており、貯蓄と上手に両立させている層も相当数いるようです。

JCBが19年3月に公表した『キャッシュレスとデビットカード利用意向に関する実態調査』によると、18年から19年にかけて増えた貯蓄額の平均値は57.2万円。支払い方法別にみると、現金派の平均貯蓄増加額は34.2万円、キャッシュレス派の平均貯蓄増加額は83.2万円と現金派の2.4倍に上っています。

この結果を見る限り、「貯金は現金派よりもキャッシュレス派のほうが増えやすい傾向にある」と言えるでしょう。実際、キャッシュレス決済にはお得に利用できるサービスも多々ありますし、上手に使えば家計管理が簡単になることもしばしば。「よくわからなくて怖いから」「面倒だから」といった理由でキャッシュレスを遠ざけるほうが、貯蓄にはマイナスになる時代が訪れているのかもしれませんね。
まだ取り入れていないという人は必要な知識を吸収した上で、賢く利用してみてはいかがでしょうか。

【参考】
『キャッシュレス・ビジョン』経済産業省
『キャッシュレスとデビットカード利用意向に関する実態調査2019』JCB

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

LIMO編集部