3. 富士通、利益倍増のカラクリは「AIによる生産性100倍」
決算説明会資料をさらに深掘りすると、富士通がどのようにして利益水準(採算性)を改善させているのかが明確になります。
富士通のグロスマージン(売上総利益率=粗利率)は、2023年度の32.0%から、2024年度は35.9%、そして直近の2025年度第3四半期累計では37.8%と、年々目覚ましい改善を見せています。
この採算性改善の最大の原動力として会社側が挙げているのが、「生成AIの適用によるスピード向上・品質安定化」です。
富士通は、国内のシステムエンジニア約3万人や協力会社に対して生成AIツールの利用環境を提供しており、国内プロジェクトにおける生成AIの利用率は、第2四半期末の3割から第3四半期末には6割へと急速に拡大しています。
インタビュワーがAI活用の効果について驚きを見せると、泉田氏は富士通のCFO(最高財務責任者)が決算説明会で語った衝撃的なコメントを紹介します。
「実際に全工程でAIを適用してうまくいってるケースも出てきているそう。最善のケースでは、従来3人月かかっていた開発が3〜4時間で完了するなど、生産性が100倍近くに向上する結果も出ていますと」
「3人月」とは、1人のエンジニアが3ヶ月間つきっきりで作業するボリュームを意味します。それがわずか「3〜4時間」で終わってしまうというのです。
SIerの業界は、元請けから下請け、孫請けへと開発業務が委託されていくゼネコンのような多重下請け構造を持っています。
人間同士のコミュニケーションを挟めば挟むほど、認識のズレや手戻りが発生しやすくなります。しかし、富士通は末端の開発現場にまでAIを利用させ、自社のフォーマットを厳格に守らせることで、劇的な効率化と原価低減を実現しているのです。
市場は「AIが普及すればSIerの仕事がなくなる」と懸念して株を売りましたが、実態は「富士通自身がAIを徹底的に使いこなし、圧倒的な生産性向上によって利益を倍増させている」という全く逆の構図だったわけです。
