新年度の始まりである4月は、1年間のマネープランを立てる重要な時期です。

まもなく6月になると、前年の所得に基づいた「住民税」の通知が届きます。税負担の有無によって、家計の支出は大きく変わりますが、実は「非課税」となることで受けられる優遇措置は、一時的な給付金だけではありません。

本記事では、住民税非課税世帯が活用できる「8つの優遇措置」を詳しく解説します。

「年収いくらまでなら対象なのか」といった具体的な条件についても、給与所得者から年金受給者までケース別に網羅。制度を正しく理解し、新年度の家計管理にぜひお役立てください。

1. 【住民税非課税世帯】どんな優遇措置がある?

住民税非課税世帯とは、世帯の所得が一定の基準を下回る世帯のことです。

こうした世帯の暮らしを支えるため、一時的な給付金以外にも多様な優遇措置が用意されています。ここでは、その代表的な8つの制度を紹介します。

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【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

1.1 国民健康保険料(応益割)の減額措置

  • 応益分保険料(均等割・平等割)が所得に応じて「7割・5割・2割」のいずれかの割合で減額されます。自治体が自動で判定するため申請は不要で、年間の負担が数万円軽くなるケースもあります。

1.2 介護保険料の負担軽減

  • 65歳以上の第1号被保険者を対象に、保険料が減額されます。軽減率は自治体によって異なりますが、負担が大幅に軽減されることもあります。

1.3 国民年金保険料の免除や納付猶予制度

  • 経済的な理由で保険料の納付が困難な場合に、全額免除、一部免除、納付猶予のいずれかの措置を受けられます。申請が必要ですが、将来の年金受給額にも一部反映されるメリットがあります。

1.4 高額療養費制度における自己負担上限額の引き下げ

1カ月あたりの医療費の自己負担上限額が低く設定されています。これにより、課税世帯に比べて医療費の心配が和らぎます。

1.5 NHK受信料の免除

全額または半額が免除されます。世帯に障がいのある方がいる場合や、生活保護を受けている場合などが主な対象です。

1.6 0歳から2歳までの保育料無償化

0歳から2歳クラスの子どもの保育料が無料になります。3歳からの無償化とあわせて、小学校入学前までの子育て費用を大きく抑えることができます。

1.7 大学などの高等教育における修学支援新制度

大学や専門学校などの授業料・入学金の免除や、給付型奨学金の支給が受けられます。返済の必要がないため、経済的な事情で進学を断念せずにすむよう支援する制度です。

1.8 各自治体が提供する独自の支援策

水道料金の基本料金免除、指定ゴミ袋の無料配布、公共交通機関の無料乗車券の交付など、自治体ごとに独自の支援が行われています。お住まいの地域によって内容や金額が異なります。

住民税非課税世帯というと、年金で生活する高齢者の世帯を思い浮かべるかもしれませんが、失業中の方や育児休業中で一時的に所得が減少した世帯、所得が一定以下のフリーランスなども対象に含まれます。

それでは次に、住民税非課税世帯がどのような条件で決まるのかを見ていきましょう。

2. そもそも…住民税非課税世帯とは?

まず住民税の基本的な構造を理解し、どのような場合に住民税非課税世帯となるのかを確認していきましょう。

2.1 住民税を構成する「均等割」と「所得割」

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/4

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に納める地方税の一つです。地域の公共サービスを支える重要な財源として活用されています。

個人の住民税は、主に「均等割」と「所得割」の2つの部分から成り立っています。

  • 均等割:所得額にかかわらず、一定の所得がある方に均等に課される税金
  • 所得割:前年の所得金額に応じて課される税金

この均等割と所得割の両方が課税されない状態を「住民税非課税」といいます。そして「住民税非課税世帯」とは、その世帯にいる全員が住民税非課税の状態である世帯を指します。

ちなみに、住民税には「所得割のみ非課税」というケースもあります。この場合に給付金などの支援対象となるかは自治体の判断によりますので、お住まいの市区町村の情報を確認することが大切です。

3. 住民税が非課税になる条件は3つ

それでは、どのような場合に住民税が非課税になるのか、具体的な条件を見ていきましょう。

主に、以下のいずれかの条件に該当する場合に住民税が非課税となります。

  1. 生活保護法に基づく生活扶助を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦またはひとり親に該当し、前年の合計所得金額が135万円以下である
  3. 前年の合計所得金額が、お住まいの市区町村が定める基準額以下である

上記の1と2は全国で共通の条件ですが、3の所得に関する基準額は市区町村によって異なる点に注意が必要です。

4. 住民税が非課税になる所得基準の計算方法《例:神戸市》

住民税非課税世帯となる所得の基準は自治体ごとに定められています。ここでは兵庫県神戸市の例を基に解説します。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?3/4

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「住民税(市県民税)とは」

35万円 ×(本人 + 同一生計配偶者(※)+ 扶養親族の数)+ 10万円 + 21万円

ただし、最後の21万円は、同一生計配偶者(※)または扶養親族がいる場合のみ加算されます。

※同一生計配偶者:納税者と生計を共にする配偶者で、前年の合計所得金額が48万円以下の方を指します。

5. 給与・年金収入別に見る住民税非課税の年収ライン《例:神戸市》

住民税が非課税になる所得基準は、扶養家族の有無だけでなく、収入の種類によっても異なります。

所得は収入から必要経費や各種控除を差し引いて算出されるため、神戸市の基準を具体的な「年収」に置き換えて確認してみましょう。

ケース1:単身世帯の年収目安

合計所得金額が45万円以下の方が対象となります。

  • 給与収入のみの場合:年収110万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年収155万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年収105万円以下

ケース2:配偶者や扶養家族がいる世帯の年収目安

合計所得金額が101万円以下の方が対象です。

  • 給与収入のみの場合:年収166万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳以上):年収211万円以下
  • 年金収入のみの場合(65歳未満):年収171万3334円以下

例えば単身世帯では、給与収入のみなら年収110万円以下、65歳以上で年金収入のみなら年収155万円以下が非課税の目安です。

同一生計配偶者や扶養親族がいる場合、非課税となる収入の基準額は引き上げられます。

特に65歳以上で年金収入のみの世帯では、扶養者が1人いるだけで非課税ラインが年収211万円以下となり、単身世帯と比較して基準が大幅に緩和されることがわかります。

このように、家族構成や収入の種類によって、住民税が課税されるかどうかのラインは大きく変動します。

6. 住民税非課税世帯にまつわるQ&A

制度を活用するうえで、メリットだけでなく「将来的な影響」や「資産の扱い」について不安を感じる方も多いため、特によくある2つの疑問を解消しておきましょう。

6.1 Q1:住民税非課税世帯になると、将来もらえる年金額が減ってしまうのでしょうか?

A:国民年金保険料の「免除制度」を利用した場合、将来の受給額は満額納付時より少なくなりますが、未納(放置)するよりは圧倒的に有利です。

住民税非課税世帯になると、国民年金保険料の免除(全額・半額など)を申請できるようになります。

「全額免除」が承認された期間については、保険料を1円も払わなくても、将来もらえる年金額には「2分の1」が反映されます。 これは国庫負担(税金)によって賄われているためです。

もし申請せずに「未納」のまま放置してしまうと、その期間は将来の年金額に一切反映されません。また、万が一の障害年金や遺族年金を受け取れなくなるリスクもあります。

ワンポイント・アドバイス
経済的に余裕が出てきたら、10年以内であれば免除された保険料を後から納める(追納する)ことが可能です。追納すれば、将来の受給額を満額に近づけることができます。

6.2 Q2:銀行に預貯金がたくさんあっても、住民税非課税世帯になれますか?

A:はい、なれます。住民税の判定はあくまで「前年の所得」で行われるため、現時点での貯蓄額や資産の有無は直接関係ありません。

住民税は「フロー(その年にいくら稼いだか)」に対して課される税金であり、「ストック(いくら持っているか)」を基準にはしていません。そのため、たとえ数千万円の預貯金や不動産を持っていたとしても、前年の所得が自治体の定める基準以下であれば、住民税非課税世帯として認定されます。

ただし、以下の点には注意が必要です。

利子・配当所得: 預貯金の利子や株式の配当金、売却益などが一定以上あり、確定申告を行った場合は「所得」としてカウントされるため、非課税ラインを超えてしまう可能性があります。

特定の給付金: 自治体が独自に行う給付金制度などでは、まれに所得制限だけでなく「資産(預貯金額)が一定以下であること」を条件に加える場合があります。

7. まとめ

住民税が非課税になることで受けられる優遇措置は、私たちの暮らしを陰で支えてくれる心強い味方です。

例えば神戸市の場合、65歳以上の単身なら年収155万円、配偶者を扶養しているなら年収211万円といった「非課税のボーダーライン」があります。ここを把握しておくことは、将来の安心への第一歩といえるでしょう。

一度限りの支援で終わらせず、継続的に利用できる制度を賢く取り入れることが、家計のゆとりを生む鍵となります。新年度を迎えたこの機会に、ご自身の世帯状況と照らし合わせてみてはいかがでしょうか。

参考資料