年度の節目は、将来の生活設計を見直す良いタイミングでもあります。

とくに近年は物価や賃金の変動が続いており、「老後にどれくらいの年金を受け取れるのか」に関心を持つ方も増えています。

2026年度は年金額の引き上げが公表されており、国民年金(基礎年金)は前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の引き上げとなりました。

本記事では、厚生労働省のデータをもとに、女性の働き方と年金額の関係に焦点を当て、具体的なモデルケースを通じて将来の受給額の目安を整理します。

自身のライフコースと照らし合わせながら、老後に向けた備えのヒントを探っていきましょう。

1. 「厚生年金に33年加入・平均年収約420万円」の女性が受け取る年金額の目安は?

働き方が多様化しているなかで、キャリアを積み重ねてきた女性にとって「将来どの程度の年金を受け取れるのか」を把握することは、ライフプランを考えるうえで重要な出発点となります。

本章では、厚生労働省が公表している「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」をもとに、会社員として長期間働いてきたケースを確認していきます。

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】2/6

【多様なライフコースに応じた年金額(概算)】

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

1.1 ケース①:女性・厚生年金期間中心(20年以上)の年金額の目安

年金月額(見通し)

  • 令和7年度:13万2117円
  • 令和8年度:13万4640円(前年度比 +2523円)

経歴の前提条件

  • 平均厚生年金期間:33.4年
  • 平均収入:35.6万円(※賞与含む月額換算。年収換算で約427万円)

令和8年度の内訳

  • 基礎年金:7万1881円
  • 厚生年金:6万2759円

正社員として約33年間働き続け、平均年収がおおよそ427万円で推移したケースでは、令和8年度の年金受給額は月額13万4640円程度になると見込まれます。

物価スライドによって増額が見込まれる点はあるものの、住居費や日常の支出を踏まえると、この水準で生活設計をどう考えるかが重要になります。

1.2 ケース②:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の年金額の目安

《年金月額》令和7年度:6万636円 → 令和8年度:6万1771円

  • 平均厚生年金期間:6.5年
  • 平均収入:25.1万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 5万3119円/厚生年金 8652円

1.3 ケース③:女性・国民年金(第3号被保険者期間)中心(20年以上)

《年金月額》令和7年度:7万6810円 → 令和8年度:7万8249円

  • 平均厚生年金期間:6.7年
  • 平均収入:26.3万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 6万9016円/厚生年金 9234円

1.4 ケース④:男性・厚生年金期間中心(20年以上)の年金額の目安

《年金月額》令和7年度:17万3457円 → 令和8年度:17万6793円

  • 平均厚生年金期間:39.8年
  • 平均収入:50.9万円(※賞与含む月額換算。年収換算で約610万円)
  • 内訳(令和8年度):基礎年金6万9951円/厚生年金 10万6842円

1.5 ケース⑤:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心(20年以上)の年金額の目安

《年金月額》令和7年度:6万2344円 → 令和8年度:6万3513円

  • 平均厚生年金期間:7.6年
  • 平均収入:36.4万円
  • 内訳(令和8年度):基礎年金 4万8896円/厚生年金 1万4617円

これらの試算からも分かるとおり、厚生年金の受給額は、加入していた期間や現役時代の平均収入によって大きく左右されます。

次章では、現代シニアが実際に受け取っている「リアルな年金額」について確認していきます。

2. 現代シニアが実際に受け取っている「リアルな年金額」はいくら?

ここまでモデルケースを見てきましたが、実際のシニア世代はどの程度の年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、厚生年金・国民年金の平均月額を見ていきましょう。

2.1 厚生年金の「平均年金月額」はいくら?

厚生年金の受給額

厚生年金の受給額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

厚生労働省の資料によると、厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は、全体で15万289円となっています。

男女別では、男性が16万9967円、女性が11万1413円と差があり、現役時代の賃金や就業期間の違いが影響していることが分かります。

2.2 国民年金の「平均年金月額」はいくら?

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

国民年金(老齢基礎年金)のみの場合、平均月額は全体で5万9310円となっており、男性が6万1595円、女性が5万7582円です。

このように、加入している制度や働き方によって受給額には大きな差が生じます。

平均値だけで判断するのではなく、自分がどの制度にどれくらい加入しているかを「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで確認することが重要です。

3. 「仕事と育児の両立」を望む人が3割超。未婚女性のライフプランの変化

将来受け取る年金額は、現役時代の働き方や就業期間によって大きく影響を受けます。

内閣府の「令和7年版男女共同参画白書」に掲載されている「ライフコースの希望」を見ると、未婚女性の志向は、従来の「専業主婦コース」から、仕事と子育てを両立する「両立コース」へと移行しており、令和3年には34.0%で最も高い割合となっています。

男性についても、パートナーに両立を求める割合が39.4%まで増加しており、共働きを前提としたライフプランが一般的になっていることがうかがえます。

ライフコースの希望の推移4/6

ライフコースの希望の推移

出所:内閣府男女共同参画局「令和7年版男女共同参画白書」

3.1 30歳代女性の正規雇用率は上昇傾向

一方、女性の正規雇用比率の推移を見ると、出産・育児期に就業率が落ち込むいわゆるM字カーブの谷が緩やかになりつつあり、令和4年時点では30歳代の正規雇用率が改善しています。

正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)5/6

正規雇用比率の推移(男女、年齢階級別)

出所:内閣府男女共同参画局「女性版骨太の方針2025」

ただし、男性の正規雇用率がおよそ8割であるのに対し、女性はライフイベントの影響でキャリアが途切れたり、非正規雇用へ移行したりする可能性が残っています。

先に示したモデルケース(厚生年金33年・月額13万4000円)に近づくためには、この両立型の働き方を維持し、空白期間を作らずに厚生年金へ加入し続けることが重要なポイントとなるでしょう。

4. 平均賃金は「男性36万3000円・女性27万5000円」で約8万円の差

将来の厚生年金額のうち「報酬比例部分」は、現役時代の賃金に大きく影響を受けます。

令和6年の調査では、平均賃金は男女計で33万400円となっており、男性が36万3100円であるのに対し、女性は27万5300円にとどまっています。

男女間の賃金格差(男性=100)は75.8まで改善しているものの、依然としておよそ24%の差がある状況です。

年齢別に見ると、男性は55〜59歳で44万4100円まで上昇する一方、女性は45〜49歳の29万8000円が最も高い水準となっています。

また、20〜24歳の賃金を100とした指数では、男性が189.6まで伸びるのに対し、女性は130.2にとどまり、伸び幅に差が見られます。

この背景には、女性の平均勤続年数が10.0年と、男性の13.9年より短い点も関係しています。

安定した将来の年金受給を目指すためには、就業を継続するだけでなく、男女の賃金格差を縮小し、女性の賃金水準自体を引き上げていく仕組みが重要となります。

5. 老後のために今からできる備えとは

本記事では、老後の年金受給額の目安について紹介しました。

年金の受給額は加入期間や現役時代の収入によって大きく左右されます。

今年度は改定により各ケースで増額が見込まれるものの、その水準には個人差があり、十分とは言い切れないケースもあります。

また、女性の場合はライフイベントによるキャリアの中断や賃金差の影響を受けやすく、将来の年金額にも差が生じやすい現状があります。

こうした前提を踏まえ、自分の見込み額を把握し、不足分をどのように補うかを早い段階で考えることが重要です。

参考資料