3. 市場縮小でも自社は成長?来期の強気すぎる地域別予想
巨額の研究開発費という先行投資を行っているヤマハ発動機ですが、足元のビジネスをどう見立てているのでしょうか。
泉田氏が企業分析の核心として注目したのが、コア事業であるモーターサイクルの「来期(2026年)の地域別販売予想」です。
企業が発表する業績予想には、経営陣の「自信」や「戦略」が色濃く反映されます。泉田氏は、各地域における「市場全体の成長率(総需要)」と「自社の販売成長率」のギャップに目を向けました。
例えば、欧州主要5カ国や米国、日本といった先進国市場において、会社側は「市場全体はマイナス成長」になると予想しています。
しかし驚くべきことに、その縮小する市場環境下において、ヤマハ発動機は自社の販売台数が「プラス5%」になると計画しているのです。
この強気な姿勢に対し、泉田氏はプロの目線から次のように指摘します。
「マーケットはマイナスなんだけど、自分たちはプラス5になるって言ってますね。結構これも8%ポイントぐらいギャップがあるんで、強気といえば強気」
市場全体が縮小している中で自社だけが成長するということは、競合他社からシェア(市場占有率)を奪い取らなければ達成できません。これは口で言うほど簡単なことではありません。
「本当なのかどうかという話。作戦があればいいけど、マイナスの市場で伸ばすのは難しいから、その辺りの前提も確認すべき」
強気な予想は先進国だけにとどまりません。
新興国市場においても、フィリピンでは市場の伸びがプラス5%に対して自社はプラス16%、インドでは市場がプラス4%に対して自社はプラス23%、ベトナムに至っては市場プラス4%に対して自社はプラス38%という、市場の成長を遥かに上回る飛躍的な伸びを計画しています。
【動画で解説】ヤマハ発動機、利益を押し下げる要因とは?
泉田氏はこの計画の前提について、投資家として警戒感を持って見つめています。
「結構前提がアグレッシブ。規模増とか単価アップっていう要素があったけども、それの計画はこの前提に基づいているので、これができないと結構苦しくなるかな」
企業の利益計画は、こうした販売台数の前提の上に成り立っています。もしこの「アグレッシブな前提」が崩れ、想定通りにバイクが売れなかった場合、業績予想は下方修正を余儀なくされるリスクを孕んでいるのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日