新年度が始まり、桜の便りが聞かれる4月上旬、生活設計を見直す方も多いのではないでしょうか。

公的年金というと、多くの方が老後の生活を支える「老齢年金」を思い浮かべるかもしれません。

しかし、年金制度にはもう一つ、現役世代にとっても重要な役割を果たす「障害年金」があります。

この制度は、病気やけがによって生活や仕事に支障が生じた場合に、所得を保障してくれる心強い味方です。

年金制度は「基礎年金」と「厚生年金」の2階建て構造になっており、障害年金もこの仕組みに沿って支給されます。

本記事では、2026年度の最新改定額を踏まえつつ、知らずに損をしてしまう可能性のある「最大5年分の遡及認定」という仕組みについて、公的な資料を基にわかりやすく解説していきます。

障害年金は2階建て1/6

障害年金は2階建て

LIMO編集部作成

1. 2026年度の障害基礎年金は増額へ。1級は105万9125円、2級は84万7300円に

2026年度4月分(6月15日支給開始)から適用される、改定後の年金額を見ていきましょう。

ここで紹介する金額は、いずれも昭和31年4月2日以降に生まれた方が対象です。

障害基礎年金の年金額(令和8年4月分から)2/6

障害基礎年金の年金額(令和8年4月分から)

出所:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」

  • 1級:105万9125円 + 子の加算額※
  • 2級:84万7300円 + 子の加算額※

※子の加算額は以下の通りです。

  • 2人まで:1人につき24万3800円
  • 3人目以降:1人につき8万1300円

1級の金額は2級の1.25倍で計算されます(子の加算額は別途)。障害厚生年金は年金制度の2階部分に相当するため、1級または2級に該当する方は、障害厚生年金と障害基礎年金の両方を受け取れるのが大きな特徴です。

また、「1級は2級の1.25倍」という考え方は、障害厚生年金の報酬比例部分にも同じように適用されます。

さらに、配偶者がいる場合には加給年金が加算されることもあります。

このように、1級と2級は基礎年金と厚生年金の両方が支給対象となる一方、障害厚生年金には独自の3級も設定されており、障害の状態や保険料の納付状況に応じた保障が用意されています。

2. 障害基礎年金1級なら最大5年分の遡及認定で約520万円?知っておきたい請求方法

障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の請求方法には、障害の状態になったタイミングによって「障害認定日による請求」と「事後重症による請求」という2つの種類があります。

2.1 過去にさかのぼって請求する「障害認定日による請求」

障害認定日による請求3/6

障害認定日による請求

出所:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」

障害認定日の時点で障害等級に該当していると認められれば、その翌月分から年金を受け取る権利が発生します。これは「遡及認定」とも呼ばれ、過去にさかのぼって年金を受給できる可能性があります。

ただし、時効の関係で、実際に支給されるのは原則として最大5年分です。

仮に、障害基礎年金1級の方が5年分の遡及を認められたケースを考えてみます。

実際の支給額は各年度の年金額に基づいて計算されるため、最新の年金額を単純に5倍した額とは異なりますが、目安として5年間で約520万円が一括で支給される可能性があります。

ただし、過去の期間に「子の加算」の対象となる子どもがいたか、あるいは途中で等級に変更がなかったかなど、個別の状況によって実際の受給額は変動するため注意が必要です。

2.2 症状が悪化した場合の「事後重症による請求」

事後重症による請求4/6

事後重症による請求

出所:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」

一方で、障害認定日の時点では等級に該当しなかったものの、その後に症状が重くなった場合は「事後重症による請求」を行うことができます。

この請求方法では、請求した月の翌月分から年金の受給が始まります。

ただし、事後重症による請求には期限がある点に注意が必要です。

請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出しなければなりません。

この期限を1日でも過ぎると請求権を失ってしまうため、症状が悪化して生活に支障を感じる場合は、早めに行動することが重要です。

3. 障害年金の申請前に確認したい「3つの受給要件」とは

障害年金は、病気やけがが原因で日常生活や仕事に支障が出た場合に、現役世代の暮らしを支えるための大切な社会保障制度です。

対象となる傷病は、視覚・聴覚や手足の障害といった外見からわかるものだけではありません。

がんや糖尿病といった内部疾患や、うつ病、統合失調症などの精神疾患も幅広く含まれます。また、障害者手帳の有無は受給条件とは関係ありません。

障害年金を受給するためには、特に「初診日」「保険料の納付状況」「障害の程度」という3つの要件を満たすことが重要になります。

障害年金の受給要件6/6

障害年金の受給要件

出所:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」

受給申請において、最初の関門となりやすいのが「初診日」の証明です。

初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。

「何年も前のことで記憶が曖昧だ」「受診した病院がすでに閉院している」といった状況も考えられます。

そのような場合でも、お薬手帳や診察券、当時の日記などが証明の手がかりになることがあります。

一人で悩まず、年金事務所や社会保険労務士といった専門家のサポートを受けながら、手続きを進めることが大切です。

次に、初診日までの一定期間に、年金保険料を納付しているか、または免除されている必要があります。

ただし、20歳になる前に初診日がある傷病については、この納付要件は問われません。

さらに、初診日から1年6カ月が経過した「障害認定日」などの時点で、障害の状態が法律で定められた障害等級(1級~3級)に該当していることも受給の条件となります。

4. 障害年金の制度を正しく理解し、活用するために

この記事では、2026年度の障害年金額の改定内容と、遡及認定の仕組みについて詳しく解説しました。

「自分は対象ではない」と考えている方もいるかもしれませんが、障害年金は身体的な障害に限らず、がんや糖尿病、うつ病といった精神疾患なども対象としています。

2026年度からは1級の場合、月額換算で約8万8260円(前年度比1600円増)となり、生活の大きな支えになり得ます。

重要なポイントは、年金をさかのぼって請求できるのは「最大5年間」という点です。

手続きが遅れると、本来受給できたはずの年金を受け取れなくなる可能性があります。

「もっと早く相談すればよかった」と後悔しないためにも、まずはご自身の状況と「初診日」を確認してみてはいかがでしょうか。

制度を正しく理解し、適切に活用することが、ご自身とご家族の暮らしを守ることにつながります。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

マネー編集部社会保障班