5. 広告事業に迫る「AIリスク」と今後の注目点
ゲーム事業がボラティリティを抱える一方で、売上規模が最大のインターネット広告事業にも暗雲が立ち込めています。第1四半期の広告事業は、大型顧客1社の離脱が響き、売上高が2.7%減、営業利益は27.2%減と苦戦を強いられました。
これについて泉田氏は、目先の顧客離脱よりもさらに深刻な「構造的なリスク」が潜んでいると指摘しました。それが「AIの進化」です。
これまで、インターネット広告の運用は、代理店に依頼して専門の担当者がきめ細かく調整を行うのが一般的でした。しかし、AI技術が急速に進化する中で、その常識が覆りつつあります。
企業が自社内でAIを使って簡単に広告運用ができるようになれば、サイバーエージェントのような広告代理店に高い手数料を払う必要がなくなります。
さらに泉田氏が懸念するのは「人件費」の問題です。決算資料を見ると、同社は広告事業に非常に多くの人員を割いています。
「一番固定費が重く見えるところになると思うので、ここは気をつけて見ておくべきポイントかなと思いますね。」
人が動くことで付加価値を生み出してきた労働集約型のビジネスモデルが、AIによって代替された場合、抱え込んだ人員の固定費が重くのしかかるリスクがあります。
一方で、明るい材料にも注目しましょう。長年先行投資を続けてきた「ABEMA」などのメディア事業が、ついに四半期ベースで黒字化を達成したのです。
動画配信のサブスクリプションというビジネスモデルは、一度軌道に乗れば安定した収益基盤となります。ゲーム事業のような激しいブレとは反対といえます。
会社が思い描く中長期的な戦略は、安定した「広告事業」と「メディア事業」を土台にしつつ、その上でボラティリティのある「ゲーム事業」で上振れを狙うというものです。
しかし、その土台となるはずの広告事業がAIリスクに直面している今、メディア事業の安定的な成長がこれまで以上に重要になっていると言えるでしょう。
【動画で解説】サイバーエージェントの株価が乱高下、なぜ?
6. まとめ
今回のサイバーエージェントの決算分析では、表面的な数字の好調さだけでなく、その裏に隠された様々な要因が見えてきました。
新社長への「優しいパス」とも取れる保守的な業績予想、株価の乱高下を生み出すゲーム事業への依存構造、そして祖業である広告事業を脅かすAIの存在。
サイバーエージェントの株価の先行きを考えると、「会社予想と市場コンセンサスの乖離」がどこまで埋まるのか、そして広告事業がAI時代にどう適応していくのかが重要なポイントになりそうです。
参考資料
※リンクは記事作成時点のものです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日