2. 第1四半期は絶好調、しかし通期予想は「大幅減益」の謎
続いて、直近発表された2026年9月期の第1四半期決算の数値を読み解いていきましょう。
同社の実績を見ると、売上高は前年同期比14.0%増の2323億円。そして本業の儲けを示す営業利益は、同181.8%増の233億円と、前年の約2.8倍に急拡大しています。
利益率の高い事業が伸びたことなどで、非常に好調なスタートを切ったことがわかります。
しかし、ここで一つの大きな「謎」が浮かび上がります。会社が発表している通期(1年間)の業績予想が、非常に弱気なのです。
会社が掲げる通期の売上高予想は8800億円で、前年比わずか0.7%増の横ばいとなりました。さらに営業利益の予想は500億円〜600億円と、前年比で16.3%〜30.3%もの「大幅減益」を見込んでいます。
第1四半期の3ヶ月間で233億円も稼いでいるにもかかわらず、1年間の着地点を500億円〜600億円に据え置いていることがわかります。
「第1クォーターで半分近く稼いでいるのにおかしい」と思う方も多いのではないでしょうか。泉田氏もこの不自然な数字のギャップに注目しました。
3. アナリストとの「大幅乖離」と社長交代の裏事情
会社が発表する業績予想が保守的(弱気)な場合、プロの投資家たちは「IFISコンセンサス」を確認します。コンセンサスとは、複数の証券アナリストたちが独自に分析・予測した業績の平均値のことです。
今回、アナリストたちによる営業利益のコンセンサス予想は「781億円」でした。会社の予想に対して、約1.5倍もの大きな乖離(ズレ)が生じているのです。
さらにアナリストたちは、好調な第1四半期決算を受けて、この予想数値を上方修正(引き上げ)してきているといいます。
なぜ、会社はこれほどまでに控えめな予想を出しているのでしょうか。泉田氏は、その背景に「社長交代」という大きな経営イベントが関係しているのではないかと推測します。
サイバーエージェントは長年、創業者の藤田晋氏がトップを務めてきましたが、今回初めて新社長へのバトンタッチが行われました。
「初めて、創業者じゃない人に社長のバトンを渡すとなった時に、最初から会社の計画をすごくストレッチして渡して、その人が数字できなかった時ってやっぱりいろんなところに傷がつく。やっぱ創業者の社長じゃないからなどと言われるじゃない。」
マクロ経済の環境や、後述するAIの台頭など、経営環境には不透明な要素が多くあります。
そうした中で、新社長が就任早々に「目標未達」というレッテルを貼られないよう、あえて達成しやすいハードルを設定したのではないかという分析です。
【動画で解説】サイバーエージェントの株価が乱高下、なぜ?
では、私たち投資家はこの状況をどう捉えればよいのでしょうか。泉田氏は、現在の株価はすでに「アナリストのコンセンサス(781億円)」を前提に形成されている可能性が高いと指摘します。
「会社の予想とコンセンサスがあまりにもずれているので、株価としてはコンセンサスを織り込んでると考える方がいいかなと思います。」
つまり、仮に今後の業績が失速し、会社予想(500億円)に近い数字で着地してしまった場合、市場の期待を裏切ることになり、株価が大きく下落するリスクがある点には注意が必要です。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日