4月中旬となり春の温かな日差しと心地よい風を感じる季節となりました。老後資金に不安を抱える皆様のなかには、将来に備えて投資を始めようか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

2024年に新NISA制度が開始してから、生活の中で「投資」や「資産形成」という言葉が定着してきました。将来の不安に備えるため、これを機に投資を開始した人も多くいます。

NISA口座の「つみたて投資枠」を利用した買付額は、2025年だけを見ても約6兆2000億円を超える記録となっており、NISAを利用した積立投資への関心の高まりが見て取れます。

そこで今回は、NISAを使った積立投資先として代表的な有名な銘柄である「オルカン」と「S&P500」について、銘柄の特徴を比較した上で直近3年間の実績を比較していきます。リアルなシミュレーションと将来の展望を通じて考えてまいりますので、ぜひ今後の資産形成の参考にしてください。

1. NISAの代表銘柄の特徴

まずはじめに、NISA制度を始める人にとって一度は検討をしたことがあるであろう、有名な銘柄である「オルカン」と「S&P500」について、簡単に説明をします。

1.1 オール・カントリー(オルカン)

オルカンとは、全世界の株式にまとめて分散投資できる投資信託の代表格です。その名の通り、日本を含む先進国から新興国まで、世界中の約2500社の株式にこれ一本で幅広く分散投資ができるのが最大の特徴です。

全世界の株式市場の企業の規模に合わせて、各地域や企業への投資割合が自動的に調整される仕組みになっています。

現状では米国株式の割合が大きくなっていますが、将来もしアメリカ以外の国が急成長して世界経済を牽引していくことになったとしても、自動的にその国の株式比率が高まるため、投資している側が気をつけて投資先を変更する手間がかかりません。

1.2 S&P500

S&P500とは、米国の株式市場に上場している企業の中から、厳しい基準をクリアした代表的な大型株500社で構成される株価指数のことであり、その指数に連動する投資信託が総称して「S&P500」と呼ばれます。アメリカの経済を牽引する一流企業に集中して投資をすることができる銘柄であり、アメリカ経済の成長に合わせた高いリターンを狙うことができます。

2. 3年間のリアルなシミュレーション

ここからは、実際に過去3年間、月5万円の積立投資をしていた場合の運用実績をシミュレーションしていきます。今回のシミュレーションは、オルカンとS&P500の代表的な銘柄である「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を対象として、2023年1月から2025年12月までの3年間で、毎月初日に5万円の買付をした場合を想定して行います。

【eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)】

eMAXIS Slim 全世界株式「基準価額および純資産総額の推移」1/3

eMAXIS Slim 全世界株式「基準価額および純資産総額の推移」

出所:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を元に筆者作成

オルカンの3年間の実績では、3年間で約78万5500口数が資産として購入できています。そして、2026年1月時点における基準価額(1万口あたり)は3万3507円です。

そのため、資産としては約263万1974円(3万3507円×78.55)となります。

  • 元本:5万円×36ヶ月=180万円
  • 評価額:約263万1974円
  • 利益:約83万円

【eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)】

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)「基準価額および純資産総額の推移」2/3

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)「基準価額および純資産総額の推移」

出所:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を元に筆者作成

一方でS&P500の積立投資を行った場合はどうでしょうか。

3年間の実績では、5万円の積立で67万1100口数の資産が保有できている計算となります。そして、2026年1月時点での基準価額(1万口あたり)は3万9457円です。

そのため、3年の積立後の資産額としては264万7959円です。

  • 元本:5万円×36ヶ月=180万円
  • 評価額:約264万7959円
  • 利益:約84万円

シミュレーション結果としては、3年間での利益がオルカンが約83万円、S&P500が約84万円と、ほとんど変わらない結果となりました。S&P500の方が米国の巨大IT企業の成長に強く引っ張られた分、わずかに利益が上回りましたが、その差は約1万円程度であり、ほぼ誤差の範囲と言えるほどの互角の勝負でした。

3. 「オルカンvsS&P500」どちらを選ぶべきか

この3年間の運用では、オルカンもS&P500も利益としてはほとんど変わらない結果となりました。どちらを選んでいたとしても、現時点では大正解だったと言えます。それでは、ここから先を想定して購入先を考えるとすれば、どのような考え方をするべきでしょうか。

3.1 オルカンは幅広く安定的な投資

オルカンは全世界の株式に一括で分散投資ができる投資信託です。米国銘柄が多いとはいえ、ある程度先進国やその他諸国の銘柄も含まれており、地域的なリスクを減らしながら安定的な投資を行うことができます。

「米国だけに集中したくない」「将来どの国が伸びるか分からないから幅広い国を網羅したい」という人に適しています。

3.2 米国の成長を期待するのであればS&P500

S&P500は米国の主力銘柄に分散投資ができる投資信託です。そのため、今まで通り経済の中心を米国が引っ張っていくという想定をするのであれば、米国の成長を期待してS&P500に投資をすることが良いでしょう。

4. 20年後シミュレーション

最後に、今回の結果を踏まえて「積立投資を20年間続けた場合」を考えてみましょう。今回のシミュレーションで見た期間では、オルカンもS&P500も3年間で80万円以上の利益が出ており、単純に年利換算をすると20%を超える高水準です。

ただし、これはここ数年の急激なインフレや円安といった特殊な要因が原因である部分も大きく、同じ状況が今後20年間ずっと続くと考えるのは現実的ではありません。長期の資産計画としてシミュレーションするなら、オルカン・S&P500のどちらを選ぶ場合でも、年利は保守的に5%程度で見積もっておく方が安心です。

仮に月5万円の積立を20年間継続できた場合、元本は「5万円×12ヶ月×20年=1200万円」です。これを年利5%で堅実に運用できたとすると、複利の効果によって、20年後の資産額は 約2029万円 まで増える計算になり、20年間で829万円の利益が生じます。

20年後の積立結果3/3

20年後の積立結果

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」

20年間、淡々と積み立てを続けることで、老後資金としても十分に頼れる資産形成につながる希望があることがわかります。

5. おわりに

今回は直近の3年間を例に挙げ、NISAの積立投資先として代表的な「オルカン」と「S&P500」のパフォーマンスを比較していきました。

両者の間に多少の違いはありますが、この3年間だけを見た場合の利益の差はわずかなものにとどまっています。そのため、これから投資を始める際の選び方としては、「世界経済全体の成長を見据えるのであればオルカン」「アメリカのさらなる経済成長に期待するのであればS&P500」といった視点で検討をするのが良いのではないでしょうか。

どちらを選択した場合でも、重要となるのは「短期的な値動きに惑わされて頻繁に投資先を変更することなく、長期的な視点で落ち着いて積立を継続していくこと」です。

豊かで安心できる将来に向けて、ぜひこの機会に投資への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考資料

斎藤 彩菜