2. 【ジャパンディスプレイ】厳しい現実を突きつける最新の決算数字
会社の成り立ちを確認した上で、泉田氏は実際の企業の健康状態を測るために、ジャパンディスプレイの最新の決算書(2026年3月期 第3四半期累計)を読み解いていきます。
ファンダメンタルズ(企業の基礎的な経済状態)を確認すると、非常に厳しい数字が並んでいることが分かります。
まず、本業の規模を示す「売上高」は972億7600万円(約973億円)となっていますが、これは前年同期の1434億8500万円から約32.2%もの大幅な減少(減収)です。
利益面も深刻です。本業の儲けを示す「営業利益」はマイナス186億8100万円(約187億円の営業損失)、最終的な手元に残る「純利益」もマイナス144億6000万円(約145億円の最終損失)となっています。
前期と比較すると赤字幅自体は縮小しているものの、依然として巨額の損失を出し続けている状態です。企業として自力で利益を生み出し、成長していくサイクルには程遠いことが、この数字から読み取れます。
【動画で解説】巨額赤字のジャパンディスプレイ。債務超過でも「倒産しない」延命のカラクリ
3. 「純資産マイナス」債務超過の仕組みとは
決算の数字の中でも、泉田氏が特に注目して視聴者に伝えたのが「財政状態」の悪化です。貸借対照表(バランスシート)を確認すると、ジャパンディスプレイの「純資産」はマイナス60億円となっています。
純資産がマイナスになる状態を「債務超過」と呼びます。インタビュワーから「純資産がマイナスとはどういうことか」と尋ねられると、泉田氏は次のように分かりやすく解説しました。
「どんどんどんどんお金が出てって、株主資本よりも損失の方が大きくなっちゃったっていう状態だね」
会社を設立する際や増資をする際に集めたお金(資本金など)に対し、毎年の赤字が積み重なっていくと、その損失が資本を食いつぶしていきます。
ジャパンディスプレイの場合、資本金と資本剰余金の合計が約1400億円あるのに対し、過去から積み上がった累積の赤字(利益剰余金のマイナス)が約1590億円にまで膨れ上がっています。
つまり、過去の赤字の合計額が、会社が持っている元手を完全に上回ってしまったため、純資産全体がマイナスに沈んでしまったのです。
これを聞くと、「会社にお金が全くなくなり、倒産してしまうのではないか」という疑問が湧きます。しかし、泉田氏は債務超過と会社の存続について、重要な視点を提供しています。
「お金がないというよりは、株主資本と過去の赤字の累計を比べたときに過去の赤字の額が大きいってだけで、会社としてはまだ存在してますよね。もうこれはお金が回ってるから存在してるんです」
会計上の純資産がマイナスであることと、今日明日の支払いに困る(手元に現金がない)ことはイコールではありません。
何らかの形でお金(キャッシュ)を調達し、支払いを済ませることができている限り、会社は存続することができるのです。
【動画で解説】巨額赤字のジャパンディスプレイ。債務超過でも「倒産しない」延命のカラクリ
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日