退職金や雇用保険の基本手当を受け取りながら、次の仕事を探そうと考えている人もいるのではないでしょうか。比較的よく知られている基本手当の受給は、多くの人が忘れずに申請を済ませられるものです。
一方、世の中にある給付金のなかには、存在があまり知られておらず、見落とされがちなものもあります。しかし、利用できればいざというときに役立つものばかりです。
この記事では、働く世代がつい見落としがちな給付金を4つ紹介します。
1. 見落としがちな給付金①:雇用保険の「傷病手当」
雇用保険の「傷病手当」とは、退職してハローワークで基本手当の受給手続きをした後に、15日以上病気やケガで求職活動ができなくなった際に支給される給付金です。失業と病気・ケガによる収入の減少を補填する役割を担います。詳細は以下のとおりです。
支給額
- (離職前6ヵ月の給与の総支給額の合計÷180)×給付率(50〜80%)
※60〜64歳は45〜80%
※賞与は計算に含みません。基本手当と同額
支給要件
- 離職後、公共職業安定所に来所し、求職の申込みをした後に、15日以上疾病や負傷により職業に就くことができない場合
基本手当と同じ金額が支給されるため、退職し新たな職場を探している際に体調を崩したりケガをしたりしても、最低限の生活が保障されるようになっています。病気やケガが長引く場合は、本来の受給期間(1年)に加えて最大3年間、合計で最大4年間まで受給期間を延長することも可能です。
傷病手当を受給する際は、申請手続きに加え、回復後最初の認定日までに、ハローワークで傷病認定を受ける必要があります。代理人申請も可能なため、回復後も動くのが難しい場合は代理人に申請手続きをしてもらいましょう。
なお、被用者保険の加入者が病気やケガで会社を休んだ場合には「傷病手当金」という給付金が受け取れます。こちらは傷病手当とは別物で、休業前の給与日額の約3分の2が受け取れるものです。
2. 見落としがちな給付金②:介護休業給付金
働き盛りの年齢になってくると、親の介護に関する問題が出てきます。人によっては、頻繁に仕事を休んで親の介護にあたる人もいるでしょう。介護のために仕事を休んだ際は、賃金の一部が補填される「介護休業給付金」を活用したいものです。
介護休業給付金の詳細は、以下のとおりです。
支給額
- 休業開始時の賃金日額×支給日数×67%
支給対象
- 以下の介護休業を取得した人に対し、同じ家族について93日を限度に3回まで支給。
1.負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある家族を、介護するための休業であること。
2.被保険者が、その期間の初日及び末日とする日を明らかにして事業主に申し出を行い、これによって被保険者が実際に取得した休業であること。
支給要件
- 介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12ヵ月あること(本人の疾病等がある場合は期間が緩和)
※有期雇用労働者のみ、上記に加えて「介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヵ月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでないこと」が必要。
介護休業を取得した人に対し、給与の約3分の2が支給されます。最大3回までの分割支給が受けられ、同じ家族について4回以上の支給を受けることはできません。
申請時には、以下の書類が必要です。申請フェーズによって必要な書類が異なるため、適切なものを用意してください。
【受給資格確認に必要な書類】
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 賃金台帳、出勤簿又はタイムカード(1.に記載した賃金の額及び賃金の支払い状況を証明することができる書類)
【支給申請に必要な書類】
- 介護休業給付金支給申請書
※個人番号欄にマイナンバー(個人番号)を記載。 - 被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
- 住民票記載事項証明書等(介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類)
- 出勤簿、タイムカード等(介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類)
- 賃金台帳等(1.の申請書に記載した支給対象期間中に支払われた賃金の額及び賃金の支払い状況、休業日数及び就労日数を確認できる書類)
※上記の他、対象介護休業期間中に対象家族が死亡した場合には、必要に応じて戸籍抄本、死亡診断書、医師の診断書などを添付
介護による離職を検討する前に、まずは給付金の活用について考えてみるとよいでしょう。
3. 見落としがちな給付金③:未払賃金立替払制度
物価高は、企業の業績にも影響を与えます。人によっては、勤めている会社が倒産し、突然収入が途絶えてしまう可能性もあるでしょう。こうした状況で利用できるのが「未払賃金立替払制度」です。制度の詳細は、以下のとおりです。
対象賃金
- 退職日の6ヵ月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金(定期給与および退職金)
※賞与は含まない
※総額2万円未満の場合は対象外
立替払の金額
- 未払賃金の8割
・45歳以上:上限296万円
・30歳〜45歳未満:上限176万円
・30歳未満:上限88万円
要件
- 事業主に係る要件
・労災保険の適用事業の事業主、かつ1年以上事業を実施
・倒産したこと - 労働者に係る要件
・破産手続開始等の申立て(事実上の倒産の認定申請)の6ヵ月前の日から2年間に退職
・未払賃金額等について、法律上の倒産の場合には、破産管財人等が証明(事実上の倒産の場合には、労働基準監督署長が確認)
・破産手続開始の決定等(事実上の倒産の認定)の日の翌日から2年以内に立替払請求
退職6ヵ月前から立替払の請求日前日までに支払われるはずだった賃金の80%を、国が立て替えて支払ってくれます。労働者が立替払をしてもらうには、破産手続開始等の申立て(または事実上の倒産認定の申請)の6ヵ月前から2年以内に退職、破産日翌日から2年以内に請求などの要件があります。また、事業主にも労災保険の加入や1年以上の事業継続といった要件が求められます。
制度を利用したい際は、管轄の労働基準監督署に相談しましょう。
4. 見落としがちな給付金④:専門実践教育訓練給付金
転職やキャリアアップを見据えて、専門性の高い知識を身につけたいと考えている人は、専門実践教育訓練給付金の活用を検討してみましょう。教育訓練給付金のなかでも支給額や支給割合が高いため、高度な知識を少ない負担で身につけられます。詳細は以下のとおりです。
- 教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が受講中6ヵ月ごとに支給される。
- 資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、教育訓練経費の70%(年間上限56万円)が支給される。
- 上記の支給の要件を満たしたうえで、訓練修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合は、教育訓練経費の80%(年間上限64万円)が支給される。
基本的には経費の50%、最大で80%が支給されます。保育士や看護師といった職種のほか、法科大学院、MBAなどの学位取得などで活用できる給付金です。
給付を受けるには、ハローワークで受給資格の確認後、申請手続きをします。
- 初めて受講する場合: 雇用保険の加入期間が通算2年以上あること。
- 2回目以降の場合: 前回の受講から雇用保険の加入期間が3年以上あること。
- 離職者の場合: 離職から1年以内に受講を開始すること。
「同一の会社に3年以上」いる必要はなく、転職していても通算の加入期間でカウントされます。大きな自己投資をする前に、必ずチェックしたい制度です。
5. まとめ
つい見落としがちな給付金でも、制度について知っておけば活用できる機会を見出せます。働く世代でも医療や雇用といったシーンで活用できる給付金が複数存在するため、もし利用できる可能性があるなら、前向きに活用を検討してみてください。
参考資料
石上 ユウキ