2026年3月も残すところ数日となりました。新年度の4月からは、働くシニア世代にとって長年の課題だった「年金カット」のルールが大きく変わります。
これまでは「稼ぎすぎると年金が減る」ことを理由に就業調整をしていた方も多いはずです。しかし、厚生労働省「令和7年年金制度改正法」(2026年4月施行)により、そのボーダーラインが大幅に引き上げられます。
自身の年金を守りながら賢く働くために、最新の改正ポイントを整理しましょう。
1. 在職老齢年金とは?カットされる仕組みの基本
在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら働くシニア世代(主に65歳以上)の方が、受け取る「老齢厚生年金」と「給与(月収+賞与の1/12)」の合計額が一定基準を超えた場合に、年金の一部または全額が支給停止(カット)される仕組みです。
ここで重要なのは、カットの対象は「老齢厚生年金」のみである点です。1階部分の「老齢基礎年金」は、いくら稼いでも全額支給されます。
2. 2026年4月からの変更点をチェック!基準額が「51万円」→「65万円」へ
今回の改正の目玉は、支給停止が始まる合計額の基準(支給停止基準額)の引き上げです。
厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」によると、2026年4月からの基準額は以下の通りとなります。

出所:厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」
- 2025年度まで:51万円(月額)
- 2026年度から:65万円(月額)
実に14万円もの引き上げです。これにより、これまで「年金がカットされるから」と月収を抑えていたシニア層も、より高い収入を得ながら年金を全額受け取れる可能性が広がります。
3. 年収800万円でもカットなし?シミュレーション
基準額が65万円になったことで、具体的にどのような変化が起きるのでしょうか。
例えば、老齢厚生年金を月額15万円受給している方が、現役並みの給与(月額50万円)で働くケースを想定します。
- 合計額:15万円(年金) + 50万円(給与) = 65万円
2025年度までは51万円を超えた分の半分(65万円 - 51万円 = 14万円の半分、つまり7万円)がカットされていましたが、2026年4月からは合計65万円までであれば、年金は1円もカットされず全額支給されます。
年収に換算すると、ボーナスを含めた給与年収が600万円、年金と合わせた総収入で800万円近い金額を得ながら、年金も満額受け取れるシニアが増えることになります。
4. まとめ:制度を正しく理解し「生涯現役」をデザインしよう
2026年4月からの在職老齢年金の緩和は、働く意欲のあるシニアにとって強力な追い風です。
ただし、年金が満額受け取れるようになって「額面」の総収入が増える一方で、それに伴い税金や健康保険料の負担がどう変化するかをトータルで把握することが重要です。
「働き損」を恐れる時代から、制度を理解して「手取りを最大化」する時代へと変化してきています。新年度を迎えるこの機会に、ご自身の年金見込み額と働き方のバランスを再検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
中本 智恵