3. 巧妙なコスト管理と従業員への還元
昨今の飲食業界において最大の課題となっているのが、食材の仕入れ価格や人件費の高騰です。しかし、丸千代山岡家はこの難しい局面も見事に乗り切っています。
3.1 価格改定と製造原価のコントロール
決算資料によると、同社の売上原価率(売上に対する原価の割合)は前期の29.6%から当期は30.5%と、0.9ポイントの上昇にとどまっています。他社が原価高騰に苦しむ中、なぜこれほど安定しているのでしょうか。
その理由の一つが、適切なタイミングでの価格改定です。
同社は当期、4月と10月の年2回にわたって価格改定を実施しました。原材料費の上昇分を、しっかりと商品価格に転嫁しているのです。
それでも客数が約16%も増えている事実は、同社の商品が「少し高くても食べたい」と思わせる強いブランド力を持っている証拠と言えます。
さらに泉田氏は、決算短信に記載されている「製造原価明細書(自社工場に関する費用内訳)」に注目します。これを見ると、スープや麺を作るための「材料費」は前期の約2496万4000円から当期は約4208万6000円へと、約69%も高騰しています。
しかし一方で、工場で働く人たちの「労務費」は約3104万4000円から約3456万5000円へ、その他の「経費」は約1008万1000円から約1512万4000円へと、材料費ほどの急激な上昇にはなっていません。
泉田氏はこの点について、次のように高く評価します。
「ここをしっかりコントロールしながら原価ができているというところを見ると、ちゃんと会社で管理できている証拠かなと思います」
避けられない材料費の高騰を受け入れつつも、その他の費用を徹底的に管理することで、全体の原価をコントロールする経営手腕が光っています。
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3.2 給与水準を引き上げつつ利益を確保
コスト管理の巧みさは、店舗の運営費用(販管費)にも表れています。
決算説明会資料によれば、売上高に対する販管費の比率は、前期に比べて1.1ポイント低下しました。先述の通り、水道光熱費(0.9ポイント低下)などの固定費が相対的に下がったことが大きな要因です。
一方で、従業員への「給与・雑給」の比率は0.3ポイント増加しています。これは、会社が利益をしっかりと従業員に還元し、人手不足の解消やモチベーションアップに努めていることを示しています。
インタビュワーがこの点に感心すると、泉田氏は次のように解説しました。
「給与・雑給は0.3ポイント増えているんだけど、それ以外のマイナスの部分の方が効果がでかいのよ。だから別に給与上げても全然いいって話よ」
つまり、固定費の比率が下がって浮いた利益の一部を従業員の給与アップに回しても、会社全体としては十分に利益が残るという、非常に健全なスパイラルが回っているのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日