2. 逆張りの「24時間営業」が生み出す競合優位性
丸千代山岡家のもう一つの大きな特徴が、ロードサイド(幹線道路沿い)を中心とした「24時間営業」です。実はこの戦略が、現在の業績好調に大きく寄与しています。
2.1 コロナ後の深夜営業減少をチャンスに
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの飲食店が営業時間を短縮し、深夜営業を取りやめました。
コロナ禍が明けた現在でも、人手不足などの影響から、夜遅くまで営業している店舗は以前に比べて激減しています。
消費者の立場からすれば、夜中にお腹が空いても、開いているお店の選択肢が少ない状況です。そんな中、丸千代山岡家は年中無休・24時間営業というスタイルを崩さずに継続しています。
泉田氏は、この周囲とは異なる「逆張り」の戦略が、同社の大きな武器になっていると指摘します。
「あえて24時間という、みんなと逆の戦略を取ることによってお客さんを引きつけて、さらにしっかりそれをマネジメントして成長している会社かなと思いましたね」
他店が閉まっている深夜帯に、確実に温かいラーメンが食べられる場所として、消費者の強い支持を集めているのです。
2.2 固定費レバレッジで利益率を向上
24時間営業は集客面だけでなく、企業の利益構造にも大きなメリットをもたらしています。ここで泉田氏が解説するのが「固定費」の考え方です。
店舗を運営するための費用には、売上に応じて変動する「変動費(材料費など)」と、売上に関わらず一定の金額がかかる「固定費(家賃や基本の光熱費など)」があります。
丸千代山岡家のように24時間常に店舗を稼働させている場合、水道光熱費や地代家賃、店舗の減価償却費といった費用は、客数がいくら増えてもそれほど大きく変わりません。つまり、固定費としての性質が強くなります。
決算説明会資料を見ると、売上高に対する水道光熱費の比率は前期に比べて0.9ポイント低下しています。
これは電気代そのものが安くなったわけではなく、「費用は変わらないのに売上が大きく増えたため、相対的に費用の割合が小さくなった」ことを意味します。これを経済用語で「固定費レバレッジが効く」と言います。
【動画で解説】山岡家、逆張りの「24時間営業」が生み出す競合優位性
「固定費なんで、売上が増えたら残った分は全部利益だからさ」
泉田氏がこう語るように、24時間営業という高い固定費を抱えるモデルであっても、高い客数(高回転)を維持できれば、売上が増えた分だけ利益が雪だるま式に増えていくという強力な収益構造ができあがっているのです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日