一段と暖かさが増し、春の訪れを感じる季節となりました。4月は新年度の始まりであり、年金額の改定や家計の見直しを意識する方も多い時期です。年金支給日を迎えると、「自分の受給額は平均と比べて多いのか少ないのか」と気になる方も少なくありません。

2026年度の年金額改定により、4月分(6月振込分)から公的年金が引き上げられます。

標準的な夫婦世帯のモデル年金額も増額となりますが、実際の受給額は働き方や加入期間によって大きく異なり、高額な年金を受け取れる人は限られるのが実情です。

また、老後も働き続ける人にとっては、年金額そのものだけでなく、給与収入との関係で年金が調整される仕組みにも目を向ける必要があります。

2026年度は在職老齢年金制度の見直しも予定されており、働き方への影響も注目されています。

本記事では、2026年度の年金額改定の内容を整理したうえで、標準的な夫婦世帯のモデル年金額や高額受給者の実態、あわせて在職老齢年金制度の見直しポイントについて分かりやすく確認していきます。

1. 【2026年4月分から増額】標準的な夫婦世帯のモデル年金額は4495円アップ

2026年1月23日、厚生労働省は2026年度の年金額改定を公表しました。国民年金は前年度比1.9%、厚生年金は同2.0%の増額となっています。

今回の改定を受け、標準的な夫婦世帯が受け取る年金額がどの程度になるのか、最新の水準を確認していきましょう。

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額・1人分)):7万608円(+1300円)
  • 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

上記のとおり、夫婦2人分の標準的な年金額は23万7279円となっており、前年度比で4495円増加する見込みです。

公的年金の支給は2ヵ月に1回となるので、1回あたりの支給額は47万4558円となります。

2. 国民年金+厚生年金「月30万円以上」もらっている人はどのくらいいる?

夫婦2人分の標準的な年金額は月額23万7279円となりますが、実際には1人で月30万円以上を受け取る人もいます。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金を月30万円以上受け取っている人の割合を見てみましょう。

2.1 【厚生年金の平均月額と受給額ごとの受給権者数】

【平均月額】

  • 全体 15万289円
  • 男性 16万9967円
  • 女性 11万1413円

※国民年金部分を含む

【受給額ごとの受給権者数】

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金受給者のうち、月額30万円以上を受け取っている人は全体の約0.12%にとどまっており、高額な年金を受給している人はごく少数です。

公的年金は老後の収入の柱となる一方で、その収入だけでゆとりある生活を送れる人は限られています。

多くの世帯にとって、年金は生活を支える大切な基盤ではあるものの、日々の支出をすべてまかなえる水準に達しないケースも少なくありません。

こうした現実を踏まえると、まずは自分が将来どの程度の年金を受け取れるのかを正確に把握しておくことが大切です。

確認する際は、額面ベースの年金額だけでなく、税金や社会保険料が差し引かれた後の手取り額まで見ておきましょう。

実際に使える金額を把握することで、老後の家計をより現実的に見通しやすくなります。

3. 年金額が多く、給与収入もある人は減額の対象となることも

もっとも、老後も働き続ける人のなかには、年金に加えて一定の給与収入を得ているケースもあります。こうした場合に関わってくるのが「在職老齢年金制度」です。

在職老齢年金制度では、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く人について、給与や賞与と年金額の合計が基準を超えると、年金の一部または全部が支給停止となります。

つまり、年金額が比較的多く、さらに給与収入もある人ほど、これまで年金の減額対象になりやすい仕組みでした。

2026年度からは、この基準額が見直される予定となっています。

在職老齢年金制度の見直しについて3/3

在職老齢年金制度の見直しについて

出所:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

在職老齢年金には、「支給停止調整額」と呼ばれる基準があります。この基準額は近年、段階的に引き上げられてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:65万円 

2026年4月以降は、給与と年金の合計が月65万円までであれば、老齢厚生年金は全額支給されます。2025年度の51万円と比べると引き上げ幅は大きく、年金の減額対象となる人は大幅に減る見込みです。

これまで60歳代では、「働くと年金が減る」という意識から、勤務日数や労働時間を調整するケースも少なくありませんでした。

今回の見直しによって、そうした働き方が変わる可能性があります。収入との兼ね合いを考えて就業を抑えていた人にとっては、今後の働き方を見直すきっかけになるでしょう。

再雇用制度を利用して働く60歳代の会社員にとっても、給与と年金をこれまで以上に両立しやすくなる場面が増えそうです。

4. 高額受給の現実と減額制度を踏まえた年金の考え方

2026年度は公的年金が引き上げられ、標準的な夫婦世帯のモデル年金額は月額23万7279円、2カ月に1回の支給額では47万4558円となる見込みです。

ただし、これはあくまで一定の条件を満たしたモデルケースであり、実際の受給額は加入期間や現役時代の収入によって大きく異なります。

実際には、厚生年金受給者のうち月30万円以上を受け取っている人はごく少数にとどまり、年金だけでゆとりある老後を送れる人は限られています。

老後の生活を考えるうえでは、額面だけでなく、税金や社会保険料が差し引かれた後の手取り額まで確認しておくことが大切です。

また、2026年度からは在職老齢年金の基準も見直され、給与と年金の合計が月65万円までは老齢厚生年金が全額支給される予定です。

働きながら年金を受け取る人にとっては、これまでより就業と年金を両立しやすくなる可能性があるため、自身の収入状況に照らして制度の影響を確認しておきましょう。

参考資料

加藤 聖人