YouTubeチャンネル「イズミダイズム」では、元機関投資家の泉田良輔氏が、さまざまな企業の決算やビジネスモデルを独自の視点で読み解いています。

今回の動画で取り上げられたのは、日本を代表するエンターテインメント企業である「バンダイナムコホールディングス」です。

世界中で愛されるキャラクタービジネスと、最先端のゲーム事業を手掛ける同社ですが、その圧倒的な強さの裏側にはどのような戦略が隠されているのでしょうか。泉田氏の解説をもとに、投資初心者にもわかりやすく紐解いていきます。

ココがポイント
  • バンダイ(ホビー)とナムコ(ゲーム)の強みが融合し、売上高1兆円超の巨大企業へ成長
  • 「ガンダム」「ドラゴンボール」「ワンピース」の3本柱が長期的な収益基盤を形成
  • 世代を超えて愛される「親から子へ」の巧みなIPマネジメント戦略
  • 豊富な手元資金を持ちながらも、投資運用ではなく「実業」でしっかり稼ぐ健全な財務体質
  • 投資のヒントは「子供や孫の間で何が流行っているか」という消費者目線にある

1. 売上高1兆円超!バンダイナムコを牽引する主力事業とは

バンダイナムコホールディングスといえば、おもちゃメーカーの「バンダイ」と、ゲームソフトメーカーの「ナムコ」が経営統合して誕生した企業です。

インタビュワーから現在の業績について尋ねられると、泉田氏は2026年3月期の第3四半期累計決算の数字を引き合いに出し、同社がすでに売上高1兆22億円(対前年同期比4.9%増)を叩き出す巨大企業であることを解説しました。

セグメント別売上高(2026年3月期 第3四半期累計)1/5

セグメント別売上高(2026年3月期 第3四半期累計)

出所:イズミダイズム

では、この1兆円を超える売上の内訳はどうなっているのでしょうか。

泉田氏が決算資料のセグメント(事業部門)別売上構成を読み解くと、最も大きな割合を占めているのが「トイホビー事業」で、約5036億円を売り上げています。

次いでゲームなどを含む「デジタル事業」が約3588億円、ゲームセンターなどの「アミューズメント事業」が約1117億円と続きます。

この構成について、泉田氏は旧バンダイが得意としていたホビー領域と、旧ナムコが得意としていたゲーム領域が、互いに食い合うことなく見事に共存している点を評価しています。

「それぞれの事業があんまり重複していなかったということなんだろうね。」

つまり、キャラクタービジネスに強いバンダイと、デジタル技術に強いナムコが合わさったことで、非常にバランスの取れた強固な事業ポートフォリオ(組み合わせ)が完成しているということです。

1.1 景気に左右されない「趣味需要」の強さ

トイホビー事業の好調を支える要因の一つが、「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)」の圧倒的な人気です。

「コロナ禍の巣ごもり需要をきっかけにガンプラ作りを再開した大人が多く、今でも品薄状態が続いている」という周囲の状況が紹介されると、泉田氏はこの現象を「趣味の消費」という観点から分析しました。

一般的に、企業の業績は世の中の景気に左右されやすいものですが、プラモデルのような趣味の領域は少し毛色が異なります。泉田氏は次のように指摘します。

「基本的に関係ないよね。だって景気悪くたってプラモデル作りたいと思うし、景気良かったら仕事で時間ないかもしれないけど、息抜きでプラモデル作りたいと思うかもしれないし。」

景気が悪くても「自分の好きなことにはお金と時間を使いたい」という推し活的な需要は底堅く、逆に景気が過熱したからといってプラモデルを急に何十個も買うわけではありません。

このように、外部環境の変化に強い安定した需要を持っていることが、バンダイナムコにとって大きな強みとなっています。

【動画で解説】なぜバンダイナムコは売上1兆円超の巨大企業になれたのか?

2. 【バンダイナムコ】なぜ強い?何十年も愛される「強力IP」の秘密

バンダイナムコの業績を語る上で欠かせないのが、「IP(Intellectual Property=知的財産)」の存在です。IPとは、アニメや漫画のキャラクターなどの権利を指します。

主要IP別売上高(通期見込)2/5

主要IP別売上高(通期見込)

出所:イズミダイズム

決算資料の「IP別売上高」を見ると、バンダイナムコの収益を牽引している「3本柱」が明確に浮かび上がります。

通期の売上見込みでトップに立つのは「機動戦士ガンダム」の2400億円。それに次いで「ドラゴンボール」と「ONE PIECE(ワンピース)」がそれぞれ1400億円と、突出した規模を誇っています。

驚くべきは、これらのIPが数十年前に誕生したものであるという事実です。泉田氏は、長寿IPが今なお莫大な売上を生み出し続けている状況について、次のように分析しています。

「キャラクターIPが何十年も経っても、逆に増えているんだろうけど、売上としてしっかりあって、いろんな人に根付いているというか、好まれている。」

2.1  「親から子へ」受け継がれる巧みな戦略

なぜ、これほど長く人気を保つことができるのでしょうか。

インタビュワーが「ドラゴンボールは初期のシリーズだけでなく、近年でも『ドラゴンボール超』や『ドラゴンボールDAIMA』といった新シリーズが展開されている」と補足すると、泉田氏はそこにバンダイナムコの巧みなビジネス戦略を見出しました。

それは「親から子へ、子から孫へ」とファン層を拡大していく戦略です。

かつて子ども時代にドラゴンボールに熱中した世代が親になり、新しいシリーズを通じて自分の子どもと一緒に再び作品を楽しむ。この循環を生み出すことで、IPの寿命は事実上無限に伸びていくのです。

トイホビー事業の動向3/5

トイホビー事業の動向

出所:イズミダイズム

さらに、バンダイナムコは既存のIPに頼るだけでなく、常に新しいブームを生み出す努力も怠っていません。

決算説明会資料には、現在子どもたちの間で大流行している「ボンボンドロップシール」や、誕生から30周年を迎えてなお新機種が展開されている「たまごっち」、さらには好調なトレーディングカードゲーム(TCG)事業などが紹介されています。

泉田氏は、こうした同社の商品展開力を高く評価しています。

「常にブームを作っているし、1回出したものもちゃんとプロパティマネジメントじゃないけど、IPマネジメントしているんだよね。」

【動画で解説】なぜバンダイナムコは売上1兆円超の巨大企業になれたのか?

2.2 デジタルと体験の好循環

さらに泉田氏が注目するのは、バンダイが持つキャラクターの力と、ナムコが持つテクノロジーの力が掛け合わさることで生まれる相乗効果です。

例えば、人気キャラクターのトレーディングカードをゲームセンターの筐体に読み込ませて遊ぶアーケードゲームなどは、まさに両者の強みが融合したプロダクトと言えます。

「IPと新しい技術を掛け合わせて、ちゃんとハードウェアとして遊べる体験を作っているっていうのが、この会社の付加価値じゃないかな。」

世の中のエンターテインメントがますますデジタル化していく中で、バンダイナムコはデジタルなゲームだけでなく、カードやプラモデルといった「手で触れる実体」を通じた体験を提供しています。

この「デジタル×体験」の好循環こそが、同社のブランド価値を押し上げている最大の要因なのです。

3. 実業で稼ぐ!コーエーテクモと異なる収益構造

動画の後半では、バンダイナムコの財務体質についても言及されました。

以前の動画で取り上げたゲーム会社「コーエーテクモホールディングス」は、本業でしっかり利益を出しつつ、さらに潤沢な資金を活用した『投資運用益』でも大きく稼ぐという特徴がありました。

インタビュワーから「バンダイナムコも同じように投資で稼いでいるのか?」という疑問が投げかけられると、泉田氏は決算短信の損益計算書を読み解きながら、両者の明確な違いを説明しました。

バンダイナムコも約5000億円という潤沢な現金や有価証券を持つ「キャッシュリッチ」な企業であり、実質的な無借金経営(ネットキャッシュ状態)を維持しています。

しかし、その利益の源泉はコーエーテクモとは全く異なります。

バンダイナムコHDの利益構成4/5

バンダイナムコHDの利益構成

出所:バンダイナムコホールディングス 決算短信を基にイズミダイズム作成

第3四半期累計の数字を見ると、本業の儲けを示す営業利益が約1573億円であるのに対し、投資有価証券の売却益はわずか11億円程度に過ぎません。

「投資有価証券の売却益はあるけども、インパクトとしてはすごく小さい。」

つまり、バンダイナムコは金融運用に頼るのではなく、あくまでエンターテインメントという「実業」でしっかりと稼ぎ出している、非常に健全なビジネスモデルを持った企業であると泉田氏は結論づけています。

【動画で解説】なぜバンダイナムコは売上1兆円超の巨大企業になれたのか?

4. まとめ:投資家が注目すべき今後のポイント

バンダイとナムコの強みを見事に融合させ、強力なIPと健全な財務体質で成長を続けるバンダイナムコホールディングス。

最後に、個人投資家が同社に注目する際に見るべきポイントについて、泉田氏は「最大の収益源であるトイホビー事業が今後も伸びていくか」が鍵になると語りました。

ガンダムやドラゴンボールといった既存のIPをテクノロジーと掛け合わせて新鮮さを保てるか、そして全く新しいIPやプロダクトを生み出せるかが、今後の成長を左右します。

そのためのヒントは、実は私たちの身近な日常に転がっていると泉田氏はアドバイスします。

「消費者目線ってやっぱり大事で、自分の子供や孫がこれ好きっていうのを日常会話の中から聞くじゃない。学校で何流行っているのって聞くのが一番早くて、それを元にどの企業がやっているのかなっていうパッケージの裏を見るとバンダイナムコか、みたいな。そこから会社調べに行くっていうのも全然遅くないんだよね。」

難しい経済指標を追うだけでなく、「今、世の中で何が流行っているのか」「消費者が何に熱狂しているのか」という生の声に耳を傾けること。

それこそが、バンダイナムコのようなエンターテインメント企業を分析する際の最大の醍醐味と言えるでしょう。

5. イズミダイズムとは

イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。

新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。

教科書的な知識だけでなく、プロの実体験に基づいた分析を通じて、ビジネスパーソンや個人投資家に役立てていただけるコンテンツをお届けしています。

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今5/5

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今

出所:Youtubeチャンネル「イズミダイズム」

参考資料

※リンクは記事作成時点のものです。