2. 農中金は赤字1.8兆円 利上げ初期に襲う「利ザヤ縮小」と「債券の損失」

金利の上昇は一般に金融機関に追い風で、三菱UFJフィナンシャル・グループも実際に業績が改善しています。ただし、金利が上がると反対に業績が悪化する場合もあるため注意が必要です。金利上昇の初期では「利ザヤ」の縮小と運用債券の損失が懸念されます。

利ザヤとは調達金利と運用利回りの差です。銀行は預金や金融市場などから短期で資金を調達し、中長期の貸し出しや債券などで運用します。金利は期間が短いほど低く、長いほど高くなるため、通常は調達金利と運用利回りには差が生まれます。これがいわゆる利ザヤで、銀行の中核的な収益源です。

この利ザヤですが、金利上昇の初期段階では一般に縮小します。運用より調達の方が期間が短いため、金利は調達側が先行して上昇するためです。貸し出しの切り替えは一定の時間を要するため、運用利回りはすぐには上昇せず、結果として利ザヤは縮小します。

さらに、債券では切り替えに伴う損失が生じやすくなります。金利が上昇すると、債券の評価額は下落するためです。銀行は利ザヤ確保のため債券も切り替えを進めますが、保有債券が値下がりするなかでの売買となり、損失が発生しやすくなります。

債券の損失は三菱UFJフィナンシャル・グループでも発生しています。業務粗利益のうち国債等債券関係損益は2022年3月期から赤字で、損失幅は2025年3月期に9914億円まで拡大しました。業務粗利益から営業費を除いた業務純益は、2025年3月期に前期比13.7%減で着地しています(一般貸倒引当金繰入前・信託勘定償却前)。

三菱UFJフィナンシャル・グループの国債等債券関係損益(2016年3月期~2025年3月期)4/5

三菱UFJフィナンシャル・グループの国債等債券関係損益(2016年3月期~2025年3月期)

出所:株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「決算短信」より著者作成

金利の上昇は中長期的に金融機関の収益を拡大させますが、初期は負荷がかかります。国内外の金融機関で巨額の損失や経営破綻が発生したのは、この影響が一因です。特に農林中央金庫が2025年3月期に計上した1.8兆円の純損失は話題を集めました。

もっとも、三菱UFJフィナンシャル・グループはおおむね順調に対応しており、保有債券の評価損失は縮小しています。評価損失は主に外国債券で発生していましたが、ヘッジ後で2023年9月末の-8000億円から2025年9月末にゼロとなりました。貸し出しの利ザヤは海外がやや停滞感がある一方で、国内は上昇しており、切り替えが進んでいる様子がうかがえます。