三菱UFJフィナンシャル・グループの株価が堅調です。世界的に金利が高止まりするなか、国内でも利上げの機運が高まっており、収益拡大の思惑が向けられています。株価は3年間で3.3倍、1年間では25.7%上昇しました。PBR(株価純資産倍率)は国内の低金利政策を背景に1倍割れが常態化していましたが、足元では1.52倍まで改善しています(2026年3月25日終値)。
三菱UFJフィナンシャル・グループの株価(日足、1年)1/5
出所:著者作成
株価は上昇していますが、実際に収益は拡大しているのでしょうか。同業では、金利上昇で巨額の損失を計上する例も見られます。
三菱UFJフィナンシャル・グループの業績から、金利と銀行株の関係を探ってみましょう。
1. 「金利のある世界」で業績拡大、資金利益4割増
まずは前提となる金利の状況を振り返ります。
日本は2013年から大規模な金融緩和に踏み切り、2016年にはマイナス金利を導入するなど、金利を低く誘導してきました。優良企業向け貸出金利の指標となる長期プライムレートは、一時は1%を割り込む水準まで沈みます。
しかし、コロナ後は世界的にインフレが起こり、主要国の多くが金利を引き上げました。日本は低金利政策を継続したものの、国内金利も上昇します。
そして、2024年にマイナス金利を解除し利上げに転じると、国内金利の上昇は加速しました。長期プライムレートは2025年に約16年ぶりとなる2%台を突破し、足元では2%台後半まで上昇しています。
金利の反発に沿うように、三菱UFJフィナンシャル・グループの業績も拡大します。金融機関の本来の収益を示す業務粗利益は、2025年3月期までの3年間で21.6%増加しました(信託勘定償却前)。うち貸し出しや有価証券などの運用益である資金利益は同40.8%増となっており、金利の上昇が収益につながっています。
2. 農中金は赤字1.8兆円 利上げ初期に襲う「利ザヤ縮小」と「債券の損失」
金利の上昇は一般に金融機関に追い風で、三菱UFJフィナンシャル・グループも実際に業績が改善しています。ただし、金利が上がると反対に業績が悪化する場合もあるため注意が必要です。金利上昇の初期では「利ザヤ」の縮小と運用債券の損失が懸念されます。
利ザヤとは調達金利と運用利回りの差です。銀行は預金や金融市場などから短期で資金を調達し、中長期の貸し出しや債券などで運用します。金利は期間が短いほど低く、長いほど高くなるため、通常は調達金利と運用利回りには差が生まれます。これがいわゆる利ザヤで、銀行の中核的な収益源です。
この利ザヤですが、金利上昇の初期段階では一般に縮小します。運用より調達の方が期間が短いため、金利は調達側が先行して上昇するためです。貸し出しの切り替えは一定の時間を要するため、運用利回りはすぐには上昇せず、結果として利ザヤは縮小します。
さらに、債券では切り替えに伴う損失が生じやすくなります。金利が上昇すると、債券の評価額は下落するためです。銀行は利ザヤ確保のため債券も切り替えを進めますが、保有債券が値下がりするなかでの売買となり、損失が発生しやすくなります。
債券の損失は三菱UFJフィナンシャル・グループでも発生しています。業務粗利益のうち国債等債券関係損益は2022年3月期から赤字で、損失幅は2025年3月期に9914億円まで拡大しました。業務粗利益から営業費を除いた業務純益は、2025年3月期に前期比13.7%減で着地しています(一般貸倒引当金繰入前・信託勘定償却前)。
金利の上昇は中長期的に金融機関の収益を拡大させますが、初期は負荷がかかります。国内外の金融機関で巨額の損失や経営破綻が発生したのは、この影響が一因です。特に農林中央金庫が2025年3月期に計上した1.8兆円の純損失は話題を集めました。
もっとも、三菱UFJフィナンシャル・グループはおおむね順調に対応しており、保有債券の評価損失は縮小しています。評価損失は主に外国債券で発生していましたが、ヘッジ後で2023年9月末の-8000億円から2025年9月末にゼロとなりました。貸し出しの利ザヤは海外がやや停滞感がある一方で、国内は上昇しており、切り替えが進んでいる様子がうかがえます。
3. 純利益2.1兆円へ イラン紛争による利上げ鈍化に警戒
最後に今期(2026年3月期)の業績を確認しましょう。成長は続いており、第3四半期の累計で業務粗利益は前年同期比8.4%増、業務純益は同11.2%増となりました。顧客部門が好調だったことに加え、前期に実施した債券の入れ替えで資金利益が大きく改善しました。
※業務粗利益は信託勘定償却前、業務純益は一般貸倒引当金繰入前・信託勘定償却前
一方、経常利益は同3.6%増、純利益は同3.7%増と、業務粗利益や業務純益と比べると低い成長率にとどまっています。持分法適用会社の米モルガン・スタンレーは好調だった一方、株式売却損益の悪化が重荷でした。
なお、通期の見通しは据え置かれています。通期予想は中間決算で上方修正され、従来の2兆円から2兆1000億円へ引き上げられました。予想どおりなら前期比12.7%増となる高い成長が続く計算ですが、第3四半期までの進捗率は86.4%に達しており、達成の確度は高いと考えられます。
株価は国内の金利の行方が焦点となるでしょう。国内は利上げフェーズにありますが、中東情勢の悪化を受け不透明感が増しています。利上げが想定より緩やかなら、収益拡大の思惑がはく落し、銀行株には逆風となるでしょう。投資の際は注意したいところです。
参考資料
- 日本銀行「「量的・質的金融緩和」の導入について」
- 日本銀行「「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入」
- 日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」
- 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「平成29年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「2019年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「2021年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 農林中央金庫「2024年度決算概要説明資料」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年度中間期決算投資家説明会」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「2026年3月期 第3四半期決算短信 〔日本基準〕(連結)」
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年度第3四半期決算ハイライト」
若山 卓也